本田整形外科クリニック、本田忠。ver2000/11/18
2)一地域一患者一カルテ
病医院にすべて電子カルテが普及し、院内で発生するあらゆる医療情報をデジタル化して、院内に蓄積し、いつでも使えるようにするのは大切なことである。アナログ情報のデジタル化にあたっては、誰が入力するか?、入力が常に問題となる。2度手間を避けないと、合理化とはならない。ネットワークは自律的に医療情報の合理化を要求する。それが確保されれば究極の病診連携となる。
ただ現在の地域のネットワークの低速系サービスでは、地域内のデータを一極集中するのは現実的ではない。電子カルテは院内ではスピードが要求される。現在の低速の回線では実用に耐えない。あくまで院内に蓄積するのが前提である。
個人情報保護
介護保険では顧客情報である患者名簿が最も貴重な財産であり、名簿と患者情報はオープンにはできません。データをネット上でプールした場合でもデータは、患者の同意を得た関係者以外は見れないことが前提となります。また患者情報のネットワーク化に伴いセキュリテイの問題は発生しますが、それは主に運用上の問題です。その分は十分保護措置をとればよい。もとより万全ではありませんが、それは従来のアナログ情報でも同様であり、悪いことをする人がいる、内部で漏らす人がいる。それは犯罪です。しかるべく処置をとればよいということです。現時点では国から整備されるICカード利用を前提とするのが妥当です。データは、医師、看護婦、保健婦、養護教諭、消防署職員、市役所窓口職員などの限られた人に、アクセスできる範囲をあらかじめ設定したアクセスカードを交付し、このカードと電子保険証との相互確認を行う。さらに、本人の顔写真が印刷されれば万全である。また「なりすまし」を防ぐには、カードのみではなく、電子マネーなどで使われている、電子認証も応用されます。 情報公開法 情報公開法が2001年4月1日より実施されます。たとえば医療・福祉関係では介護認定の決定過程・認定の公正性等、会議そのものが要求があれば開示されます。一方個人情報は不開示情報として、厳しく制限されます。さらに、守秘義務違反には罰則を課されます。
ただし第9条(処理情報の利用及び提供の制限)では例外としては以下の場合が挙げられます。
一 処理情報の本人の同意があるとき、又は処理情報の本人に提供するとき。
二 保有機関が法律の定める所掌事務の遂行に必要な限度で処理情報を内部で利用する場合であつて、当該処理情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために処理情報を提供するとき、処理情報の本人以外の者に提供することが明らかに処理情報の本人の利益になるときその他処理情報を提供することについて特別の理由のあるとき。
3−2)医師の守秘義務
患者情報は医師に対しては医師法により守秘義務が課せられています。
以上により、個人情報をネットで共有のために利用するときは、患者さんの同意を得る必要があるか、もしくは、ニの項目の「相当な理由」に当てはまるかの判断でありますが、患者の同意をとるのが無難と思われます。
今、個人情報保護基本法の制定に向けて、内閣の個人情報保護法 制化専門委員会が「個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整 理)」を示し、関係する団体からのヒアリングが精力的に行われて いる。去る七月十四日、日医としての意見を述べてきたので、その ポイントを記す。 まず、第一のポイントは利用目的による制限、第三者への提供につ いてである。患者の診療情報は、原則として当該患者の診療目的で 取得・便用されている。しかし、これを医学研究、疫学調査に利・ 活用することは医学・医療の発展、公衆衛生の確保等公共の福祉の ために必要不可欠であるので、このような公益目的に利用する場合 には、患者本人の利益を不当に侵害するおそれのないかぎり、患者 に具体的な利用目的の通知は不要とするよう述べた。ただ、個人の 遺伝子情報に関しては、今後、さらに慎重な検討が必要であるとし た。 第二のポイントは、個人情報の開示、訂正についてである。大綱案 では、内容の正確性、透明性の確保の必要性から示されているが、 医療における個人情報を記載した診療記録等には、患者個人の氏名、 生年月日、客観的な検査データ、診断、治療内容のみならず、診療 従事者の主観的評価、感想、思考過程などを記載した部分があり、 これについては、内容の正確性の確保の措置は該当しない。 すなわち、診療記録等における診断の内容など医学的判断に属する 事項については、すぐれて医師個人の専門的業務にかかわることで あるので、患者の請求によって訂正すべきものとは思われず、その 他、法律で作成・保存を義務づけられている診療記録の証拠文書と しての位置づけからしても、訂正については慎重に対処すべきであ り、訂正請求権を認めることは妥当ではない。 平成十二年一月一日より日医が実施している診療情報の提供に関す る指針では、医学的な見地から、一定の場合に開示を拒否しうる規 定を設けている。すなわち、開示することによって患者本人の心身 の状況に著しい悪影響を及ぼしうる場合、開示することによって他 の第三者に不利益が及ぶ場合などであり、他の分野の個人情報の扱 いとは異なることが多い。しかし、最近の医療をとりまく社会情勢 が厳しくなってきていることは、われわれも認識する必要がある。 日医としては、診療情報の開示は患者との信頼関係を築くためにも 積極的に推進していく方針であり、会員のカルテの書き方に対する 意識の変革が必要であろう。