Q56.陸上競技で表面には見えない傷病で
注意を要するもの。
A:陸上競技では、走るという事が基本動作になりますので、ランニングを繰返すこ
とによって生ずる障害について述べます。また一次的に大きな力が加わり生ずる傷害
と区別します。
ランニングによる障害の最も発生し易いのは膝関節で次いで下腿後面・足関節・腰
・アキレス腱です。
膝関節部痛でも診断の困難なものも多いのですが、膝関節炎が膝関節の外側に痛み
の表れる腸脛靭帯炎−膝の曲げ伸ばしの繰返しによって生ずる−があります。
膝蓋骨は膝関節を上からおさえつける働きもしますのでランニングにより膝蓋靭帯
には強い牽引力が加わり膝蓋靭帯炎をおこす事があります。
下腿前面から側面では、脛骨中央部に付着している筋の牽引と摩擦力によるシンス
プリントといわれる障害が発生し、この力が脛骨に及ぶと疲労性骨膜炎を生じ、外力
が更に強く働いて骨折をおこす疲労性骨折があります。
下腿後面では、下腿三頭筋(ふくらはぎ)はアキレス腱となり足底に到って足底筋
膜と連続しています。このシステムに過大の外力が加わりますとふくらはぎの肉離れ
やアキレス腱炎・足底筋膜炎を発生します。
足の変形−偏平足や凹足があると運動の際に生ずる足関節の回外(外まわし)運動
・回内(内まわし)や下腿の捻り、膝の内反(内側への反し)外反(外側への反し)
運動に余分な力が加わり、先にのべたシステムや足底のアーチに無理な力が加わり易
いのです。
短距離・長距離ランナーの違いがありますが、ランニングで着地の際に踵には体重
の約三倍の力が加わるといわれております。着地の際の外力を緩衝するためには大腿
四頭筋や大腿二頭筋・前脛骨筋・下腿三頭筋・足底骨のアーチが有効に働きますので
、これらの筋力アップが運動障害の予防になりまた運動前後のストレッチングが有効
です。
他に足部のスポーツ障害について母趾爪の血腫、外反母趾、種子骨の異常、中足骨
の疲労骨折、踵骨の疲労骨折他いろいろありますが、中足部の過剰骨や小学生高学年
に多い足背隆起の強いもの等では装具やパットの使用、靴の巾を広めにするとか靴紐
をやや緩めに心がけるだけで疼痛の改善につながるものもあります。
ストレッチングの他にテーピングも予防処置・アフターケア・リハビリテーション
にも有効で、その知識や正しい方法を知る必要があります。