自己負担増について2001/10/05

本田忠


自己負担増は慎重にすべき
自己負担増をすれば、受診抑制が起こる。受診抑制すれば患者さんは悪化してから、病医院を訪れることになる。医療の質が低下する。また貧しい方は医療を受けられなくなる。医療のフリーアクセスと会保険制度の崩壊となる。すでに国保は2割の不払いがある。


医療費抑制するなら「合理的な」抑制策が必要と思われます。
医療費の闇雲な抑制は医療の質の低下を招く。内容を全く吟味しない、経済性からだけ考える経済学者や財務省のいうような、単純な総枠抑制のような、はなはだ乱暴な論でよいのでしょうかねえ。あるいは、原価のうらづけのない急性期医療定額制とか、DRGとか、たい して抑制にもならない論ばかりあげてくる。

 在院日数短縮して、ベット数を削減しても、効率化はされるが、一つの病院の規模が数倍になり、 人件費も数倍になる。なんのことはない数件の病院が職員をひっくるめて ひとつになるだけの可能性が高い。これでは医療費の抑制は出来ない。効率化は以下の傾向が強まるだけである。
100床当たり医業費用と給与・材料費の年次推移
100床当たり医業収益と入院収入・外来収入の年次推移

予防医療に力を入れましょう
 たとえば、胃癌、大腸癌、肺癌と乳癌の4種の癌について、癌の1次予防の費用便益を算出。4種類の癌の高リスク者に対する1次予防には321億4000万円かかるが、労働生産額が547億4000万円増加するため、差し引き226億円の経済効果が生じる。

リストラは正確なコスト計算から行いましょう
 リストラはコスト分析からはじめるのが常道。医療のリストラを行うなら、医療原価を押さえないとどうしようもない。医療費の細かい分析を行うべきである
きっちり医療行為のコスト計算すべきでしょう。まずは、点数表で医療費はすべて決まるわけだから、点数表の中身の妥当性を問うべき。
先ずはすべて原価にのっとった出来高点数表を作り、その後に医療行為分析しないとなにもできない。無駄なんて今のレセプトからわかるわけがない。データがでないものから議論してもまとまらない。医療の無駄をチェックするならここからはじめるべき。
すべて出来高にしましょう

参考文献

医療再生


自己負担増と患者数の関係
高齢者医療サービス需要の価格弾力性分析の結果、自己負担価格と入院・外 来サービス需要の間には負の相関が存在していた。自己負担価格1%の上昇は、 入院サービスを0.3%、外来サービスを0.2%減少させる。

○在院日数短縮の病院機能へのインパクト
適正な医療の需要量に関する研究
病院は在院日数の短縮によって病床規模を拡大したのと 同じ経営努力が求めら れる。 例えば、200床の病院で現行25日の在院日数が5日短縮すると、 28床増 床したのと同じ影響を受ける。 全国では、現行の在院日数の1日短縮は1.3万 床の増加に相当する。 同じく5日短縮は7.2万床、7日短縮は10.8万床、 14日 短縮は28.1万床増床の勘定となる。
全国(一般病院)では、 現行(1997年)の在院日数が1日短縮すると仮想的に医 師1458人、 看護婦6051人が必要となる。
  在院日数の短縮化は、病床数のスリム化、 これに見合う(経営が成り立つ) 診療単価の引き上げ、 人員配置の改善をパッケージとして進め、 医療の原点 であるゆとりを取り戻すことがが重要である。

癌1次予防の経済効果は220億円超、マルコフモデルで試算
 胃癌、大腸癌、肺癌と乳癌の4種の癌について、発症リスクが高い人に対する1次予防策を講じると、癌の予防にかかる費用よりも労働生産額の増加分が上回ることがわかった。
 こうした仮定に基づいて、濃沼氏らは癌の1次予防の費用便益を算出。4種類の癌の高リスク者に対する1次予防には321億4000万円かかるが、労働生産額が547億4000万円増加するため、差し引き226億円の経済効果が生じることがわかったという。
 この研究結果が示唆するのは、予防の費用が年間10万円程度と比較的安価ならば、予防費用を上回る経済効果がみられるという点だ。濃沼氏らの試算では、わが国で1年間に費やされる癌の治療費は約2兆円であり、予防に投じられる1300億円を大きく上回っている。濃沼氏は「こうした、だれにでも分かるお金という尺度で“予防は治療に勝る”という自明の理を証明していくことも、予防研究の費用を確保する上で大切」と強調した。

ケアエコノミクス−−医療福祉の経済保障

「医療機関の意思決定行動と包括支払制度下での医療サービ ス水準:実験経済学的研究」
現在、厚生省は2000年度からの導入をめざして、診療報酬制度における包括支 払化の検討を始めている。しかし、包括支払制度は医療機関の治療努力とは無 関係に診療報酬を定額で支払う方式であるため、医療機関が利潤の最大化をめ ざして行動するならば、医療サービス水準の大幅な低下をもたらすのではない かと危惧されている。
このような危惧が現実のものとなるかどうかは、包括支払制度が実施されてい ない現段階では、実証データから判断することはできない。そこで本稿では、 実験経済学的手法を用いて、包括支払制度の導入が医療サービス水準に及ぼす 効果を検討した。すなわち、医療機関の役割を演じる被験者に、その利潤(定額 診療報酬−実際に要した治療費) に応じた貨幣報酬を支払い、さまざまな疾病 レベルをもつ患者被験者にどのような水準の医療サービスを供給するか意思決 定を行わせる実験を実施した。
実験の結果選択された医療サービス水準は、理論的に予想されるきわめて低い 医療サービス供給水準に比べ有意に高いものであった。 このような実験結果を 導いた最大の要因は、医療機関被験者が、低水準の医療サービス供給の結果患 者被験者の被る便益の低下に配慮したことにあると考えられる。実験から得ら れた医療サービス供給水準のデータを用いて医療機関被験者がどの程度患者被 験者の便益に配慮したかを推計してみると、大部分の医療機関被験者は自己の 利潤以上に患者被験者の便益に配慮して医療サービス水準を選択したことが示 された。
  以上のような実験結果を前提とすれば、包括支払制度の導入が医療サービス水 準の大幅な低下をもたらす可能性は低いと考えられる。しかしこの事は一方で は、包括支払制度の導入が医療費の抑制のための画期的な制度改革とはならな いことを示唆しているといえる。