医療費の支払い制度2001・07・03
本田整形外科クリニック 本田忠
医療は社会共通資本として、公平性と効率化が要求される。医療の効率とは、
医療の質/コストのことであるから、コストだけではなく医療の質を適正に評
価し、これを改善することが重要である(井上)。また労働集約産業であり、
医療の質の維持と向上には、必要な部分には必要な人員と機材が配置されなれ
なければいけません。医療行為の原価をきちんと把握し、その行為に対する、
正統な報酬が得られなければ、必要な部分に必要な人員と設備が配置されない
ことになり、医療事故の多発や、医療の質の低下が起こります。
出来高と定額払い
1)出来高制
医療は医師も患者も最高の品質を要求する財なので、医療効果を最大限にあ
げようとするインセンティブが働く。その場合は当然かかった費用は、ペイし
ないと経営は立ち行かない。同時に、利益を最大限にあげるために過剰診療に
なりやすいともいえる。性善説になりたつ制度である。医師の職業倫理が問われる制度である。
2)定額制
支払いに一定の限度額をもうけることで、主に医療費の制限を目的とする制
度である。医師は、最小限の投資で最大限の効果を出すことを期待される。欠
点としては医師と患者の情報非対称の存在下で、必要な医療も与えない過少診療になりやすい。性悪説になりたつ制度とも言える。DRG/PPSでその欠点が明白に出た。
3)標準化と医師の裁量権
医療の合理化と質の向上もはかることも大切ですが、医療は、優れて、個別的なものであり、疾病によりある程度、治療を類型化しても、平均が押さえら
れるのは、7割程度に過ぎません。後の3割は類型からは外れるものではないでしょうか。このような性格を持った財の場合、治療のガイドラインを作って
も、カバーしきれない事例が多発します。
現在の診療報酬は、診療行為にかかる、経費として、直接経費(主に人件費と特定医療材料など)と間接経費(直接経費以外のもの、建物維持管理費、租税公課、支払利息など)に分けられますが、現在のところ、直接経費のみで、診療報酬の算出が行われている。その結果、間接経費部分が、十分に反映されていないきらいがある。これでは拡大再生産は難しい。また医療における多様性に対するにはやはり、現場の医師の裁量権を確保して、かつ医療行為
の原価をきちんと把握して、それに対するお金がきちんと出ればよい。
原価をより反映した、出来高制を最大限残すべきと考えます。また医療機関の機能分化に伴い、病院と診療所の診療報酬体系の分化も必要かもしれません。
医療の現状
参考文献
1)医療の効率化
第3回日本医療情報学会シンポジウム特別講演
「日本の医療改革と医療情報学」 国立大阪病院 井上通敏
2)支払い制度の議論
医療保険福祉審議会第3回制度企画部会議事要旨
(糸氏委員)
○
医療費が厳しい中で出来高払い制が袋叩きにあっているが、過剰反応ではな
いか。医療の現場で一番大事なことは、国民が適切な医療を受けられ、少しで
も早く疾病を治し立ち直ることである。出来高払いではすべての医師が贅沢の
限りを尽くすと考える性悪説に立てば、医療行為はできない。しかし、出来高
払いがそういうことを誘発しやすい制度であるという指摘はもっともである。
○
症状の安定期には積極的に定額払い制を導入してよいと思う。しかし、急性
期については、合併症があったり、安定と不安定を繰り返したりするので、急
性期に定額払い制を導入すれば、医療担当者の選択の幅が狭められる。急性期
には、医師がベストと思える医療を選択できる幅を残すため、できるだけ出来
高払いを残しておいた法がよい。
○
急性期医療に定額払い制を導入することもできないことはないが、5年以上
の綿密な下準備が必要である。
(南委員)
○アメリカのPPS/DRGは、よい医療を国民が安心して受けられる制度にな
ったかというと必ずしもそうでない側面がある。アメリカの失敗を繰り返さな
いために、DRG的な発想を日本に導入する場合には、十分検討する必要があ
る。今の段階で急性期医療に定額払い制を促進するのは難しい。
○
慢性期医療についても、医療依存度が高く容態が不安定で長期にわたって入
院している場合には、一律に定額払いとすることには慎重であるべきである。
(井形委員)
○
経済的な問題という背景を考えれば、急性期医療は出来高払い、慢性期医療
は定額払いという整理はある程度合理的である。
○
ただし、患者はたとえ金がかかっても最高の医療を求めるものであり、急性
期は容態が刻々と変化するため、急性期医療の場合は医療計画を立てる際にベス
トの計画を立てることを認めないと現場は萎縮する。
○
まず慢性期医療に定額払い制を導入して、その評価を見た上で急性期医療に
定額払い制を導入するかを議論すべきであり、最初から急性期医療に定額払い制
を導入することには反対である。
(塩野谷委員)
○
診療報酬点数で診療所の方が病院より高く設定されているものが多いが、こ
のような価格のつけ方は、どのような価格機能を予想しているのか。
(事務局今田保険局医療課長)
○
現在の診療報酬点数には、個々の技術について難易度などを勘案しながら配
分している部分と、ホスピタルフィーのように特定されない部分について医療
原資を配分している部分がある。したがって、大病院については外来の機能よ
りも入院の高度な機能に係る点数で評価し、診療所についてはプライマリケア
機能として療養の指導等の評価に重点をおくことによって、一定のバランスを
とっているという経緯だと思われる。
(塩野谷委員)
○ そうだとすると、患者を大病院と診療所に振り分ける機能はないのではな
いか。
(事務局 中村保険局企画課長)
○ その点については、常に矛盾に悩んでいるところである。診療所について
プライマリケアを重視した機能を持ってもらうため、その外来の診療報酬を
病院より高く設定すると、一方で患者にしてみれば、定率負担の下では病院
よりも診療所での負担が重くなるという結果になる。
○ なお、一日当たり又は一件当たりの総点数については、診療報酬点数の差
ではカバーできないほど、病院の外来医療費が高くなっているという問題もあ
る。
○
医療機関の機能の特化を診療報酬だけで行えるわけではなく、医療提供体制
の問題や、患者負担による経済的な誘導についても議論になっているところであ
る。
(塩野谷委員)
○
診療報酬において技術評価をしようとしている以上、病院より診療所の方が
診療報酬上の点数が高いということは、診療所の方が技術水準が高いというこ
とを意味することになるのではないか。
(事務局 今田保険局医療課長)
○
診療報酬では、医療機関の様々な運営上の費用が特化されていない部分があ
るため、一定の配分機能を持たせて点数を設定している。その際、担っていた
だきたい機能に対するインセンティブが働くような設定の仕方をしているので
あり、病院の技術と診療所の技術では異なるという前提ではない。
(糸氏委員)
○
医療の世界では、何が過剰かを誰がどのような基準で判定するかが難しい。
現行の療養担当規則や診療報酬点数表の5千にも及ぶ規制の中で、現場の医師
はいかに患者にとってベストの治療を保険の中で行うかに苦心している。保険
診療以外のことをすれば、療養担当規則違反ということで、すべてが保険給付
外となるだけでなく保険医や保険医療機関の指定も取り消されてしまう。療養
担当規則は医師だけでなく、患者も縛っている。
○ 現場の医師が必要があると思ってしたことでも、患者を診ていない第三者
から見ると過剰診療・過剰請求という判定になってしまうが、一見過剰なよ
うに見えても結果的に予防につながっていることもある。
○ 現場の医師が納得できるように、過剰診療かそうでないかの判断基準を作
成する機関を作ってもらいたい。