医療の無駄とはなに?2001/10/05

本田忠


「わが国の医療及び医療制度は、国民の健康増進と生命を守ることを通じて、全ての国民に公平で平等な生活を保障し「安心できる」社会を作ることを目標とするものである。(国民皆保険体制とフリーアクセス)」日医より

日本の医療が安価で優れている理由
【誤解】日本の医療に競争はない、平等は無駄遣いを生む
 経済財政諮問会議が「平等主義的な今の医療制度が医療費の無駄を生んでいるという認識から、競争原理を導入するなどして医療の効率化をはかることを提案している」とありますが、これは、間違いです。

「公平性」
日本においては、どの医療機関でも診療報酬は同じであるという国家統制による「平等主義」が、自由競争による医療費の高騰を抑えました。「貧しい医療」

「市場原理による価格の高騰」
 また、自由競争により医療費が安くなるというのも、大いなる誤解です。豊かな国では、命や健康に関わる問題には、お金を惜しまない人が多いものです。不当に高額の怪しげな療法ですら、ひっかかって、大金を失う人のニュースをしばしば目にします。まして、正当な医療となれば、高額であっても、いや、高額だからこそ、多くの患者が集中することでしょう。

「患者残酷物語の出現」
 また、医療費を制限した中で、自由競争を行えば、医療の質が落ちることは、アメリカの現状が立証しています。

「フリーアクセスという自由競争」
その一方、平等主義によって生じやすい医療の質の低下は、誰もが日本中のどの医療機関にかかれるという「フリーアクセス」という制度で、日本中の医療機関同志を競争させることで、防いできたのです。それが現在の質を維持して、各指標が世界一になっている原因なのでしょう。

以上長島公之先生のご意見(一部改変)


 いわば皆保険制度と、平等主義とフリーアクセスが、かろうじて医療費の増加をおさえて医療制度の質を保ってきた
「医療の無駄」という実態のあいまいな論に振り回されすぎているのではないか。財務省の意見は、財源からしか考えていないといわざるを得ない。
 まずは「医療の無駄」という、一見インパクトのある、しかし非常に抽象的な言葉の、内容を吟味にすべきで、それから、この大原則をいじるべきではないか。


 現在の論議において、たとえば、205点ルールは、厚労省の訂正記事が出たにもかかわらず、相変わらず廃止の方向で動いている。一部の悪徳医師の問題で、全体のバランスを欠いた、政策が出ることは驚くべきことです。いかに根拠のない単なる「印象」で、「重要な政策」が決定されていくのか背筋が寒くなる思いです。
 論議もきわめて乱暴で、総枠抑制論などという、中身も減ったくれも無く、ただ押さえろという案がある程度市民権を得る世界なんですね。世の中というのは。恐ろしいところです。かつ、じつに大雑把なところであるとも感じます。

財務省のリストラ論議はたとえば
1)医療費の高騰特に老人医療費の伸びが年8%もある
2)これでは保険は維持できない。
3)よって医療費を抑制しよう
というまことに明快な3段論法ですね。1と2の間がすっぽり抜けている。
また初めから抑制で決まっている。財政からしか考えていない。いわく総枠抑制、いたみ分け、まことに乱暴な論が横行している。
肝腎の医療の中身はじゃどうなるの?

1)医療費の高騰特に老人医療費の伸びが年8%もある
2)老人医療費の伸びの原因は、○と×が原因である。
3)では×を合理化して医療制度をこうしましょう。医療の質をどう保つのかを第一義にして、そのための財源確保は?
という論理になるべきでしょうか。
まずは老人医療費の伸びの原因は、○と×が原因であるあたりを追求すべきでしょうね。医療費の無駄という抽象的な言葉で、あとは抑制の大合唱はたまらん。3者一両損ですか。時代劇じゃあるまいし。まずは理念を示すべきでしょうね。3者とも損なら納得するなど言う論がどこから出てくるのか?
少しは理念というものを出しましょう。

 一般の商行為は、物とサービスを売るわけで、原価にマージンをつけた値段で消費者に売っている。いわばきっちりした出来高である。医療だけ、何で異るんでしょうかねえ?
 いわく定額制とか、総枠制とか、標準化とかいう、かしましい論を振り回す前にやるべきことがある。急性期は出来高で慢性期は定額? その根拠は?
定額制なんて単なる平準化でしかない。それこそ無駄の最大の温床でしょう。

  医療費の無駄とか、抽象的で、わけのわからない泥沼を問うより、きっちり医療行為のコスト計算すべきでしょう。リストラはコスト分析からはじめるのが常道。点数表で医療費は決まるわけだから、点数表の中身の妥当性を問うべき。
先ずはすべて原価にのっとった出来高点数表を作り、その後に医療行為分析しないとなにもできない
。無駄なんて今のレセプトからわかるわけがない。でないものから議論してもまとまらない。DRGの日本における試行などは失礼ながら茶番にしか見えない。

日経で医療再生第2部が、2001/10/05からはじまりましたが、点数表に切り込んだ。やっとまともな意見がマスコミさんから出てきた。少し期待します。第一部は退屈だった。原価とは何かあたりまで踏み込んで欲しい。
すべて出来高にしましょう

医療再生(日経新聞)