点数制度の制度疲労(経済的インセンティブ手法の限界)2001/10/13

本田忠


現在の点数制度は制度疲労が目立つ。
 点数表で医療費は支払われるわけですから、厚生省としてはこの点数表を元にいままで医療費をコントロールしてきました。基本は、出来高制とはなっています。しかし様々な目的、たとえば、各科からの毎年のように出される要望、新規技術の導入、事務の簡便性を求めたり、医療費抑制などの目的で、経済的インセンティブをつけるために、そのときどきの事情で、205点ルールなどに代表される部分的包括化や、点数の重点配分がなされております。
 そのために全体としては非常に複雑な診療報酬体系となっております。今回の厚労省の案を見ても、この傾向はますます、はっきりしてきております。今回は医療費抑制が主な目的で、500円以下ははずすとか理解に苦しむ包括化や、総枠抑制とか打ち出しております。
 まさしく古の繁文儀礼を絵に書いたような点数表です。解説書がないと専門の事務でも理解に苦しむものになっている。患者さんが医療機関から明細表をもらってもよくわからない。点数相互の整合性も取れなくなりつつある。 最大の問題は、点数表が原価を反映せず、医療行為の難易度やコストと、かなりかけ離れた点数になってきている。また各科間の格差も目立ってきている。

医療の無駄を省くには包括化では無理である
 一方、現在の改正では医療の標準化を目指して、DRGなどを元にした包括化点数を大幅に導入しようとしております。医療が無駄なく効率よく提供されるためには、個々の患者さんの病態に応じてきめ細かな医療を行い、同時に診療内容を第三者がチェックできるようにしなければいけません。
 現在は不充分な出来高払いではありますが、一応「過剰」と判断された場合の支払いはレセプトの審査で拒否されますが、包括料金になればレセプトには病名しか記載されません。そのためカルテと照合しない限り、レセプトでは医療行為の適切性をまったく判断できないことになります。
急性期、慢性期を問わず、点数表は単純な医療行為とマージンを入れた点数を基本とした出来高とすべきではないでしょうか。できるだけコストにみあった点数配分にする。
 従来の厚労省の、点数表のみ操作することによって、医療の方向性を決めるという手法は限界があると感じます。

価格コントロール
 一方出来高の欠点としては、「医療が過剰になりやすい」ということですが診療報酬制度によらない価格コントロールは
1)原価を反映したシンプルな出来高制の点数制度を作る
2)EBMガイドラインにのっとった医療をする。
3)EBMより外れる診療は基金の(保険者でなく)審査委員会による正確な分析と監査と審査で調整する。
DRGを元にした包括化の方向では、無駄も省けないし、診療行為の価格の妥当性チェックも出来ない。レセプトに診療行為が反映しないと分析できない。

点数表の金額設定
 一般の公共料金は「総括原価方式」によって設定されております。総括原価方式では、適正な事業計画に基づいて発生すると予想される人件費、管理費、減価償却費(用語解説参照)、諸税等の事業費用に、その間必要な事業報酬を加えた額を総括原価とし、これと料金収入とが等しくなるようにするものです。
 一方現在の医療費は、医療機関の拡大再生産費用の入っていない点数配分となっています。
日本の適正な医療費の計算。料金設定はきちんと拡大再生産費用を考慮すべきと考えます。そうでないと医療の質の低下が起こる。

コストに見合った原価を反映した合理的な点数配分を。
 医療の安定成長のためには、医療費抑制のみに目を奪われた、導入理由も不明確で、不合理かつ効果も不十分な、総枠抑制や、部分包括化やDRGなどの、姑息な対応に終始せず、無駄を除き、医療の効率化のために、きちんと合理的な点数表をまず作り、長期目標に沿った、漸進的な行動計画の提示が必要ではないでしょうか。そうでないと、医療の質の向上と透明化もはかれない。かつ医療費の抑制も出来ないという最悪のシナリオになると感じます。
点数表のみで経済的インセンティブをつけて、診療報酬をコントロールする手法は不合理も目立ちます。そろそろ限界ではないのか。

参考文献
○政府の関与
行政関与の在り方に関する考え方
○公共料金の設定の考え方
医薬品に関する行政評価・監視結果に基づく勧告
公共料金の窓総括原価方式の長所と短所
○インセンテイブの考え方
組織の経済MORALHAZARDANDPERFORMANCEINCENTIVES
○公共料金の設定方法
地方公共料金のあり方に関する調査
首都圏大手私鉄の運賃規制に関する事例研究
信書独占下の効率的な郵便料金
英国における上下水道規制
JapanPowerNews:料金制度