日本におけるDRG/PPSの導入実験2001/07/04

本田整形外科クリニック 本田忠


はじめに
日本においても実験が開始されたが,はかばかしい結果は出ていない。

調査の概要

DRG/PPSへの思い
急性期入院医療への定額制導入の参考資料(NursingOutlookNo37より抜粋)
現在日本型包括式の試行調査は国立、社会保険の10の病院でされている。 国立仙台病院、国立埼玉病院、国立千葉病院、国立豊橋病院、国立神戸病院、 国立南和歌山病院、国立岡山病院、国立病院九州医療センター、岐阜社会保険 病院、健康保険諫早病院
<試行調査の目的>
@診療内容の効率化に有効か?A病院経営の合理化に役立つか? B医療の質への影響はどの程度か?C事務の簡素、合理化からどのように評価 できるか?
<対象疾病分類>183の診断群
<疾病事の診療報酬点数>
全ての診断群の平均額を38803点とする。それに各疾患の相対係数(例 えば急性虫垂炎合併症なし、手術ありでは相対係数0.6436)を乗じる。
<伏せて行う調査>
患者の満足度、診療内容の変化(過小診療発生の監視)、患者の重傷度の変化


DRGとPPSについて
1998/11より試行をやっている実務者としての想い
3)診療報酬の額:
診断群分類に応じた定額包括部分(いわゆるPPSに該当する)、技術料等の 出来高部分の合算。つまり、完全に定額報酬というわけではない。1000点 以上の処置手術麻酔等は出来高部分として認められている。また、定額包括部 分にしても、看護料加算、地域加算、管理料等の調整部分もある。数式にする と、定額報酬=基礎点数×相対係数+調整点数ということになる。この相対係 数がいわゆるDRG/PPSに該当することになる。また、DRG分類に該当 しても、特定入院期間を越えた場合はその期間に関しては出来高で請求するこ ともある。
以上の3点で概要は理解されると思う。
では、DRGとはなんであるか?、一言で言うと、病院評価ツールである。前 述のDRG/PPSにおける診療報酬請求でもカンの良い方は気づいたかもし れないが、現在の出来高支払いの平均値(最低方法の詳細は今回省略)であり、 極端な話、全く患者像の変化がなければ、つまり、同じ収入があることを意味 する。したがって、今回の試行については、収入の変化はないことになる。も ちろん、試行病院間で多少の差異はあるにしても。冒頭で述べた国立医療機関 等の試行であるが、それにあたっての診療情報管理士が関与する局面は大きく わけて以下の3点に集約されると考える。
1)基礎調査に伴うデータベース作成(併せてデータ精度の保証)
2)DRG/PPS実施に伴うデータベースの作成と実際のデータ精度の保証
3)作成されたデータベースに基づくシミュレーション(事後)
である。
一般医療機関では上記1はほとんど経験することはないかもしれないが、今後 (一般的になれば?)は、2,3が非常に重要である。今までは国立病院など のチェーン病院でなければ複数病院での比較はたとえそれなりの情報化がなさ れていたとしても非常に困難であったが、DRGの導入は診療報酬制度意外の 直接関係しない分野でさえ標準化を促進し、比較等も比較的容易になると推測 される。DRGの導入によって促進されるデータベース構築をインフラとした クリティカルパスの導入や記録方法そのものの議論も白熱したものとなろう。 例えば、議論が進んでいる電子カルテにしても(特ににどのような部分を電子 化するか等)影響を及ぼすであろう。そもそも、事業体として病院を位置付け ると、構築しておくべきデータベースということでも、DRG/PPSに対す る配慮は絶対に必要とされる。で、次に来るものは、何度もいうようであるが データ精度の保証が必要である。DRG(PPSでなくても)に必要とされる、 例えば診断名というものは現在の「保険病名」からの脱却も目的とされている ことを忘れてはならない。診断名の他にも、付随する各データについても、よ り詳細な精度の高いものが要求される。また、必ずしもDRGに求められなく ても各種分析という意味でのデータベースも必要となってくるであろう。

結果

急性期入院医療定額払い方式試行の分析
定額払いにしても在院日数の短縮見られず
厚生省は26日の中医協総会(写真)に「急性期入院医療の定額払い方式の試行後1年間に 係る関係調査結果」を報告した。国立病院8施設、社会保険病院2施設で定額払い方式 を試行したところ、平均在院日数は施行前の20.2日に対し、施行後は20.1日とわずか に短縮。またデータ抽出時に偏りのあった2病院(国立豊橋、国立神戸)を除く8病院で も、施行前の20・8日に対し、施行後は20.2日だった。ただ、分析を行った松田朗・ 試行調査検討委員長は、試行病院以外の国立病院でも平均在院日数の短縮がみられる ことから、「特異的な変化とは考えられない」と報告。さらに、その後の議論でも診 療側が「在院日数の短縮は極めて不適当」と指摘したほか、支払い側も「これらデー タではなんら断定的なことはいえない」との見解を示すなど、試行調査の難しさを浮 き彫りにした。
調査は、厚生省「急性期入院医療の定額払い方式の試行調査検討委員会」(松田委員長) が行ったもの。同委員会では、急性期入院定額払い方式の試行前(1996年4〜12月)と 試行後1998年11〜99年10月)で得られたデータを比較、分析した。対象患者は、対象 10施設の全入院患者の28%にとどまっている。
調査結果によると、平均在院日数の総数は試行前20.2日に対し、試行後20.1日とわず かに短縮。また、診療録サマリ一が整理されているデータだけに限定した国立豊橋病 院と、在院日数が40日以上の患者を調査客体から除外していた国立神戸病院を除き、 全数調査を行うことができた8病院に限定して平均在院日数を比較すると、試行前の 20.8日が試行後は20.2日となり、統計学的には有意な変化が認められた。
ただ当該8病院と他の国立病院の平均在院日数の比較からは、いずれも在院日数の短縮 が確認されており、検討会報告では「試行病院における特異的な変化とは考えられず、 定額払い導入により明らかな影響は認められない」と分析。この要因については、97、 98年の2度の診療報酬改定を挟んでおり、「入院料にかかる平均在院日数要件の変更 などが与える影響も含まれている」と考察した。検討会報告では、その他のファクター についても評価・分析を加えているが、いずれも評価項目で明解な結論を得られなかっ た。
診療群別在院日数の変化をみると、白内障(手術あり)は、試行前9.4日が試行後7.O日 に短縮する一方で、肺炎は12.4日が14.O日に伸びていた。「いずれも統計学的有意 差が確認されており、検討会の報告は「定額払いの導入による影響を評価することは 困難」とした。
術前・術後の在院日数の比較では、「調査した手術ありの診断群についての術前と術 後の双方の在院日数の短縮は認めるが、術前・術後の日数の比が試行前後で大きな変 化はなく、術前・術後のいずれかに偏った平均在院日数の短縮は認められない」と分 析した。
そのほか、病床利用率、入院比率、診療情報提供の算定、入院診療計画加算の算定、 検査、処置、投薬・注射の各点数、入院経路、退院先などの各評価項目についても、 定額払いによる影響を評価することは困難との見解を示した。
これに対し診療側の菅谷忍委員(日本医師会常任理事)は、「このようなデータで平均 在院日数の短縮が認められたなどとはとうていいえない」と反発。術前・術後の在院 日数については、「手術ありの診療群は全部で77あるのに、今回調査したのはわずか 7つにすぎない。1割に満たない対象を調査しただけで、在院日数の短縮を認めたとす るのは極めて不適当だ」とし、同報告の撤回を要求した。
DRG/PPS試行の影響を検証
調査内容・手法の見直しを提言多くの項目で「評価は困難」と指摘試行調査検討委
「試行後一年間に係る関係調査結果についての検討報告」をまとめ、 多くの項目が「評価することは困難」であった


13.日医が「定額払い試行報告」のまとめ方に強い不満を表明
日本医師会は、26日に中医協に提出された「急性期入院医療の定額払い方式の 試行」の報告書に対する検証結果をまとめ、報告書のまとめ方に強い不満を示し た。
報告書で平均在院日数について、結果的には「定額払い導入による明らかな影 響は認められない」としているものの、その途中で「試行病院全体及び病院別と もに平均在院日数の短縮が認められた」という記述がある。
それに対し日医は、「試行後3カ月でみると23・3日と(試行前より)3・ 1日長くなっている。つまり試行期間のうち、どの一定期間をとるかによって数 値が大きく変化する」とし、「このようなデータで『平均在院日数の短縮が認め られた』などとは到底いえない」と指摘した。
これらの問題点を挙げ、中医協で菅谷忍委員(日医常任理事)ら日医の委員は 「報告書は受け取れない」などと強く反発した。
日医側では、入院中死亡率が試行前より0・3ポイント増の2・0%になった ことも問題視している。その点、報告書では「定額払い導入による影響を評価す ることは困難」との見解を示している。2000年7月28日(金)18時25分

その他

DRG/PPSの採用とTQM・EBM
「DRG-PPS」時代の医療倫理副院長坂本茂1999/07/03
「DRG-PPS」ではある疾患に対する保険支払が一定になるため、行われる検査や 投薬、処置が多くなると保険支払より費用の方が多くなり経営的にはまずい状 態になります。このため、「コスト意識」が診断や治療の方針決定時に常に要 求されることになります。もともと、いまの出来高払いでは不必要な診療行為 が行われているとの判断がなければ、この方法で医療費の抑制をはかることに は根拠がないことになります。診療側では、不必要な診療行為を行わないこと や安い診療材料を使うことでコストを低減させなければなりません。問題は不 必要な診療行為とはどんなものかということです。
ある医療行為が不必要かどうかの判断には医学的判断と患者と家族の気持ちを 汲み取った医療的判断のいずれもが必要とされます。この判断に一定の基準を 決めようというのがいわゆる「医療の打ち切り基準」といわれるものです。医 療のコストを抑えることは国全体としても必要なことですし、特に「DRG-PPS」 の時代では個々の病院の経営の主要な部分になってきます。治療方針を決定する医師は「コスト」の重圧の中で人間的である医療を追求するtoughな倫理感を持たねばなりません。
二木立氏が日本の医療提供システムに注意喚起
もし国民皆保険制度がない唯一の先進国であるアメリカの医療システムを国際 標準と見なして、医療にも全面的に市場原理を導入しようとすれば2つの改革 が必要になる。すなわち国民皆保険制度の解体と、営利企業による病院経営の 自由化である。
しかも、病院経営への営利企業参入による医療の「効率化」は、アメリカに おける膨大な実証研究で完全に否定されている。我が国でも営利企業が開設し ている病院の大半が赤字に悩んでおり、将来、仮に営利企業による病院経営が 認められたとしても企業立病院が急増するとは考えられない。ちなみに90年代 前半に、イギリス、オランダ、カナダなどで、保守的政権により、市場原理を 導入する医療改革が試みられたが、所期の目的を達成できずに見直しが行われ ている


今後

定額制が診療報酬業務に与える影響に関する調査研究2
慶應義塾大学助教授印南一路
PPS伴わぬ形でDRG試行調査に民間病院―中医協小委が追加決める―
中医協診療報酬基本問題小委員会(工藤敦夫小委員長)は11月8日、「急性期 入院医療の定額払い方式の試行」について、診断群分類を活用して平均在院日 数や患者満足度などの診療内容を分析する観点から、定額払いを伴わない形で 民間病院と大学病院を加える方針を決定した。また、国立病院等10施設におけ る定額払い方式の試行は診断群分類および調査事項を見直したうえで継続する ほか、診療報酬改定の影響などを排除する目的で、試行病院と同様の機能を有 する国立病院(5病院程度)についても定額払いを伴わない形で診療内容の調 査対象に加えた。新たに調査対象となる民間病院、大学病院は、手上げ方式で 希望を募るとし、試行調査検討委員会で具体的な選定作業を進め、2001年2月 を目途に中医協に報告、年度内に調査を開始する。
新しい医療構造改革の中での卒後臨床教育について