専門医制度と報酬:成果主義批判

2008/10/24 By T.honda


 勤務医の労働満足度をあげるために専門医制度やら職能給で差を付けるべきというご意見があります。
良く聞くご意見

1)教授の給料と研修医の給料がそう違わないのはおかしい。差を付けるべき
2)高度な医療を扱う、専門医はより高く、軽医療医は総合医導入によりより安くするべき。

 以上の意見は医師の報酬の差別化という観点からは、結局同じことを言っていることになります。勤務医の労働満足度を高めるにはいろんな工夫が考えられます。いずれにしろ、あくまで診療報酬に直結する「制度化」ではなく、「自由診療」や「院内の給与体系」として考えて行くべきものと思われます。現在、国による、総合医(開業医)と専門医(勤務医)という、医師の管理強化を目指した、警戒すべき「医師の階層化」の流れもあります。「医師免許は一つ」という大原則の確認も必要です。医師の裁量権の堅持を図る必要もあります。


比較的抵抗が少ないと思われる方法

自由診療の利用:予約診療の利用
1予約料の利用;職能給というより年功序列給の採用
 教授の給料と研修医の給料がそう違わないのはおかしい。差を付けるべき。現状では、再診予約料というものを、合法的に請求できる制度があります。混合診療でもありません。
 教授診察の予約料は ○○円
 助教授診察予約料は ○○円
 講師は       ○○円
 研修医は   予約料 無料
 勤務医の労働満足度を上げることになるように思います。研修医の給与を下げる話ではなく、より高い地位の人の給与を上げることを、発想した方がいいように思います。

病院内の経営努力による工夫:院内の給与体系の見直し
 病院は高給やボーナス売り物にすればよい。


問題あると思われる方法
 専門医制度などの制度化により診療報酬で差を付けることや、院内で成果主義で差別化をすることには反対します。

1)国による導入目的は合理化=経費削減=さらなる労働環境悪化
能力や実力がある人に給料を多くするのなら、能力のない人の給料は削っても構わないということになります。「能力給」は、合理化=全体では人件費を節約したいためにあるのです。底をきるためのものです。成果主義はそれが報酬としてもたらされなかった時に罰として機能する点、仕事そのものへの興味を失わせることになりかねない。
2)労働満足度と職能給の関連は薄い
アンケートでは賃金の上昇は満足度を高めるものの、「他の従業員と比べて」高いことの満足度上昇効果はとくに観測できなかった。

引用文献で以下のご意見もありました。
 プロ野球選手で出来高契約をしている人は、基本年俸だけで数千万円はもらっています。年俸 1200 万円 一軍の最低年俸 クラスでは出来高契約は一般的ではありません。つまり、成果主義はある程度の成果を見込める人に、さらに頑張ってもらうための制度なのです。決して、底上げするための方策ではありません。
引用終わり

結果として、全体=大部分の低下と、ごく少数のスター=名医しか生み出さない。

まとめ
1)職能給をあげれば反発によりかえって離職率が高くなる可能性が高い
2)負け組;ごく少数のスターと大部分の低賃銀を生み出す。開業医など負け組の最たるものとなる。
3)人件費の高騰となる。
  最も僻地では年収4000万でもきませんが。。
4)労働時間についての不満は賃金についての不満より離職につながりやすいとみられる。
5)現場の管理強化への反感
 様々な制度専門医制度、ガイドライン、内部評価によるしめつけは医療の官僚化=瑣末な事務仕事であり反感を招く


労働満足度に関する労働者アンケートでは以下の結果が出ています
労働満足度とは
能力発揮、達成感、成長感
 仕事の内容そのものが、働くことの満足度や就業継続意識に大きく関わっている
労働者は、能力発揮、達成感、成長感といった側面に強い関心がある。
賃金と労働時間
 賃金と労働時間では、満足度との関係のメカニズムに違いがある。
労働時間については、「労働時間増加→満足度低下」という経路のみが想定され、逆の経路は想定しにくい。労働時間についての不満は賃金についての不満より離職につながりやすい
成果主義との関係は不明瞭
賃金の上昇は満足度を高めるものの、「他の従業員と比べて」高いことの満足度上昇効果はとくに観測できなかった。
企業業績と満足度
第5 に、売上高が伸びた企業では、平均的に満足度が高く賃金も高い傾向があることである。
能力や実力がある人に給料を多くするのなら、能力のない人の給料は削っても構わないということになります。「能力給」は、社員全体では人件費を節約したいためにあるのです。

成果主義に関する論点整理
多くの企業で、勤続年数の長い者ほど格付けが高いという疑似年功的な運用がなされているのが職能資格制度の現実である。インセンティブの使用は、それが報酬としてもたらされなかった時に罰として機能する点、仕事そのものへの興味を失わせる
インセンティブの使用が労働者のモラルに及ぼす影響
 報酬が少なすぎると動機付けを失うこともあるが、報酬を増やせば増やすほど満足度が大きくなるとは限らない。低い評定結果を出されてしまった労働者の動機付けの面での問題点がでる。結果としての退職や、モラールダウンの発生、設定目標の低レベル化をまねく。
インセンティブを使用する欠点
 生産の意識的抑制、治具や備品の隠匿、生産の隠匿、記録の改竄、管理者への敵愾心、経営側の誠実と公平に対する冷笑的不信、組織の他の部局との協力の重要性に対する無関心

現場の管理強化への反感
参考文献のクリエータの方の以下のご意見でまったく同感です。医師も職人です。

 歩合制など成果主義というと聞こえはいいのですが、実際には頑張った人にたくさん給与を出すのはなかなか難しいものです。人間、絶対に情実が入ります。成果は高いけど人間的に冷たい人と、成果は中くらいだけど職場を明るくしてくれる人なら、どうしても後者のほうに歩合をあげたくなってしまいませんか?
 また、もらえない人は「 まぁぼちぼち生きていければいい 」とは考えないでしょう。「 これっぽっちの給料でやっていけるか! 」と思う人のほうがはるかに多いのが現実だと思います。
 景気が拡大しているのになぜか労働環境が劣悪になり賃金が下がり労働時間が猛烈に長いのが制作系の末端の人間です。その上どんどん中国・韓国に仕事が出て行っています。
そんな環境の中でクリエイティブ系の人間は全員が仕事内容だけでモチベーションを維持しているわけではありません。当然雇用環境や賃金もとても大事です。そこを経営者の方々は勘違いしていると思います。日本で仕事をしている普通の労働者なのに他の業種の労働者と違ってクリエーターだけが賃金に対する厳しい条件をつけたほうがモチベーションが上がると思うのでしょうか
 クリエーターをわざわざ窮屈な思いにさせていい作品を作れるとは思えません。しかもクリエーターは将来に不安を抱えている人ばかりです。そういう人達を崖っぷちに追いやって「さあがんばれ。うまく飛べたら餌やるぞ」と言っても能力があってもがんばれない人もいます。
以上引用終了

以下の様々なうごきと緊密に結びついて、総合的なシステムが構築されつつあります。
1)日本の管理医療(IT化の光と影)http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/managedcare.html
2)日本版マネジドケア:日本における管理医療のための総合システムデザイン。
3)国家医療情報ネットワーク「NHIN」データベース化
4)社会保障カード:データ一元管理の方策
5)疾病管理プログラム:患者管理強化
6)総合医について:患者管理強化と開業医の管理強化
7)専門医制度と報酬:成果主義批判:専門医制度の確立による、医師の階層化と管理強化

1)レセプトオンライン化:保険者機能強化
2)レセプトオンライン化の問題点:日医見解、安全コスト、保険者機能強化
3)ICD10:標準病名とワープロ病名、対応ソフト、査定問題、適応外処方
4)レセプトチェック:対応ソフト、受付事務チェックASP
5)オンライン化と回線:回線、IP−VPN、回線とPCの接続方法、ORCA
6)レセコン未導入医療機関の救済策代行入力、クリアリングハウス事業


参考文献
労働満足度
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/documents/040.pdf
以上の分析から、おおむね次のようなことが明らかになった。
年俸制&能力給の弊害とは?
http://www.jobchange1.com/33.shtml
成果主義に関する論点整理
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2004/documents/007_03.pdf
成果主義の欠点
http://questionbox.jp.msn.com/qa2573162.html?StatusCheck=ON
 数年前にベストセラーになったビジネス書に『 内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 』があります。私も読みましたが、成果主義が持つ欠点がうまく説明されていました。
能力主義化、能力給化についての労働組合の認識
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/jittai/jittai00/4.html