日本版マネジドケア

ver2008/10/24 by T.Honda


 医師を階層化して管理強化を図る。保険者が社会保障カードにて、健診やレセプトなどの各種データベースを一元管理して、疾病管理プログラムでPDCAサイクルをまわしながら、個人と医療機関等を、損保等の保険管理業者の提供する保険指導プログラムで、個人と医療機関の予防から疾病までトータルに管理する。国家医療情報ネットワーク「NHIN」National Health Information Networkそのものとなります。日本における疾病管理プログラム disease managementによる、国家医療情報ネットワーク「NHIN」は平成23年度に完成します。


以下の様々なうごきと緊密に結びついて、総合的なシステムが構築されつつあります。
1)日本の管理医療(IT化の光と影)http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/managedcare.html
2)日本版マネジドケア:日本における管理医療のための総合システムデザイン。
3)国家医療情報ネットワーク「NHIN」データベース化
4)社会保障カード:データ一元管理の方策
5)疾病管理プログラム:患者管理強化
6)総合医について:患者管理強化と開業医の管理強化
7)専門医制度と報酬:成果主義批判:専門医制度の確立による、医師の階層化と管理強化


1)レセプトオンライン化:保険者機能強化
2)レセプトオンライン化の問題点:日医見解、安全コスト、保険者機能強化
3)ICD10:標準病名とワープロ病名、対応ソフト、査定問題、適応外処方
4)レセプトチェック:対応ソフト、受付事務チェックASP
5)オンライン化と回線:回線、IP−VPN、回線とPCの接続方法、ORCA
6)レセコン未導入医療機関の救済策代行入力、クリアリングハウス事業


日本版マネジドケアの完成
 医師を総合医(開業医)と専門医(勤務医)に階層化(制度化)して、供給側の医師の管理強化を図る。医療内容に関しては、国家医療情報ネットワークNHINで、社会保障カードで一元管理して、レセプトデータや健診データを利用して、個人と医療機関を徹底管理する。それによって、患者さんの行動や医療の無駄=医師の不徹底を取り除き、矯正して、医療費を抑制する。発生源入力ならぬ、発生源から撲滅しようという発生源撲滅作戦。焦土作戦です。オーウエルの1984年どころではない、地域の個人の生活管理までする訳ですから究極の管理国家像です。
 アメリカにおけるマネジドケア管理医療より、プレイヤーが少ない。またレセプトデータなどがデータベースとして一元管理されますから、より強力にコントロールできますね。実現を阻むのは、保険者の力量とNHIN構築に要する膨大な予算のみか。それも保険者や医療機関へのコスト負担に転化する。損保等の民間保健管理会社にとっては巨大な健康産業市場の創出です。

導入にあたって
1)保険者の力量
有効に行えるかどうかは保険者の力量しだいです。広域連合も作り、国からも厳しい目標も設定された。予算はない中で人的資源も限られる。効率をあげるのは至難でしょう。
2)投資額
 国民1人当たり3万円ほどの予算=3兆円の投資。この投資額はまず不可能とは思いますが、いずれにしろ個人の生活嗜好をすべて健康維持のために国家管理しようという動きです。それも医療費削減のために。棄民政策そのものであろう。


IT化の光と影;誰のためのシステムなのか
 誰のためのIT化なのか。常に問い続けないといけません。いずれにしろNHINなどのIT化による合理化計画には、医療側でもIT化で連携を図って抵抗していくことになります。IT化にはIT化を。データにはデータを。


医療側の対抗
1)効率化;医療の生産性をあげる。規模の論理の追求。
2)地域の医療連携
 医師会生協の発展系としてのINH構想。医師会事業の充実(急病、健診など)によるpay backの増加。人材プール事業、共同購入事業、福利厚生。
3)地域医療情報ネットワークの推進
 医師主導の地域医療情報ネットワークを強固にしていく。IT化にはIT化で対抗する。IT化の不要論には当然ならない。文明の利器は使い方しだい。
4)医療介護複合体:介護や健診を行う。


参考文献
米国における医療制度の現状と公立病院の果たす役割について
http://www.clair.or.jp/j/forum/c_report/pdf/288.pdf
病院の提携、ネットワーク構築
 経営に苦しい病院はそれぞれの成功目標を設定して、厳しい医療市場の中で生き残っていくために運営を再構築することに取り組んでいる。彼らは、運営効率、経営や情報システム、患者サービスを強化することにより生き残りを模索している。ある病院は新しい業務提携先を模索したり、より充実したサービスを提供するためにネットワークの構築を模索している。また、一方では、彼ら自身の生き残りと彼らの使命である医療弱者への医療提供とのバランスを取るために、医療弱者以外の患者(医療保険を持っている患者)を多く獲得するために彼らの対象患者の裾野を広げる努力を行っている。
○ケンブリッジ医療提携96(Cambridge Health Alliance):セーフティネット提供機関の統合 ケンブリッジ医療提携は、いかにセーフティネット提供機関が環境変化に対応し、医療市場の中で生き残っていくかを示す一つの例である。マサチューセッツ州のケンブリッジ、サマービル、ボストンメトロノース地域の住民のために、3つのセーフティネット病院(ケンブリッジ病院、サマービル病院、ウィデンメモリアル病院)が合併97し、この地域にある20 以上の初期治療診療所とケンブリッジ福祉局とともにケンブリッジ医療提携を構成した。この提携は財政的に独立した団体、地域医療連携財団と、独自のメディケイドマネージプランである「ネットワークヘルス」を有している。この提携により地域には、専門医療、手術専門診療、産科診療、全ての年代に対する初期診療を含む多様な医療サービスが提供されている。

7 方針転換
様々な理由から公立病院が経営主体を変える場合がある。その際には次のような方法が考えられる。
○賃貸 (Leases)
ある一定期間財産の使用や占有を他者に許可する契約。場合によっては、公立病院の全ての財産が貸し出される。またある場合は、その建物だけが貸し出される。
(例)
ブラッケンリッジ病院と子供病院は、テキサス州オースティン市によって所有、運営されていた。1995 年、オースティン市は、チャリティ全米ヘルスシステム婦人会によって運営されている地域の非営利病院であるセットン医療ネットワークに、両方の病院の全財産を貸し出すことを決定した。30 年の更新可能賃貸契約で、セットンは両病院の財政面と運営面の責任を事実上引き継いだ。
○合併 (Mergers)
2つ、あるいはそれ以上の病院が合併することをいう。通常、一方の病院が他方の病院に吸収される。
(例)
1996 年、教育病院であったボストン市立病院と、公立長期診療病院であったボストン専門診療リハビリ病院と、民間の非営利教育病院であったボストン大学病院が合併して民間非営利のボストンメディカルセンターを形成した。
○売却 (Sales)
ある一定金額、もしくは同価値の物と引き換えにその病院の一部もしくは全体財産を譲ること。基本的に、病院が完全に売却される場合、自治体はもはやその所有にも経営にも口を出せない。
○マネジメント契約 (Management Contracts)
既存の医療団体、もしくはマネジメント会社に運営を任せること。マネジメント契約の長さや、政府の関わり方の度合いは多岐にわたる。
○統合 (Consolidation)
2つ以上の機構が1つの機構に統合、提携すること。
(例)
ミシガン州のディアボーンのオークウッド医療システムは、オークウッド病院(非営利地域病院)と、デトロイト近郊で20 以上のコミュニティの医療サービスを管轄していたピープル・コミュニティ・ホスピタル・オーソリティ(5つの公立病院で構成)が、1991 年に統合したことによって生まれたものである。
○閉鎖 (Closure)
公立病院が一時的に、または永久的に経営をやめること。通常、施設は他の機関に売り払われ、昔の病院名は、もはや使われることはない。
○PPP(官民パートナーシップ) (Public/Private Partnerships)
既存の民間病院との連携。通常、引き続き地方自治体の管理化および責任下に置かれる。
○附属 (Affiliations)
2つ以上の団体が別々に管理運営されながら、非常に親密な関係を結ぶこと。