財政中立について
2009年12月24日
診療報酬削減は限界である。
医療機関の経営状態は収支差益のみならず、各種経営指標、特に経営安全率と損益分岐点でみるべきである。整形外科は経営安全率が他科より低く、また損益分岐点は最新のM-BASTでは無床院外一般診療所では、101.9であり、同整形外科では102.2であり、いずれも100を越していて、赤字であり危機的状況である。
1)平準化は零細な医療機関経営を直撃する。
病院と診療所の診療報酬の平準化のために診療所の再診料を下げれば、零細な医療機関ほど収入は再診料に依存している。かくて「零細な医療機関」ほど経営が立ち行かなくなる。
零細な所ほど検査や処置は少ないわけで、収入にしめる初診料と再診料の比率は上がります。
全科での比率
規模による比率
整形外科医療機関での初再診料の占める割合(2008年10月-12月平均) |
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日本臨床整形外科学会 |
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500万以下 |
500万ー1000万 |
1000万以上 |
診療所(無床) |
32% |
32% |
28% |
診療所(有床) |
31% |
31% |
29% |
病院(200床未満) |
21% |
31% |
17% |
病院(200床以上) |
0% |
0% |
20% |
再診料が66点に統一されれば診療所の経営は立ち行かない
診療所の再診料算定回数は病院の4.38倍であるから、66点で統一されれば病院は103億円のアップであり、診療所は375億円と実に3.65倍の削減となる。
病院 60点 +6点
診療所 71点 -5点
病院は 103億アップ
10,280,717,280円=1,713,452,880*6
診療所は375億減
37,548,751,200円=7,509,750,240*5
再診料1点で年間どれくらいの医療費が必要か
病院 算定回数14,278,774回/月*12ヶ月*10円=17億
診療所 算定回数62,581,252回/月*12ヶ月*10円=75億
因みに厚労省は「診療所の再診料1点は、医療費ベースで100億円弱に相当する。」
社会医療診療行為別調査(各年6月審査分)
初・再診料について 厚労省 中医協2009/11/16
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1106-9c.pdf
2)医療費削減幅は労働者給与や、物価より削減幅が大きい
財務省提出資料は意図的に「公務員給与」と「改定率」を使っている。しかし民間であれば労働者給与を、また改定の率ではなく実数たる医療費を使うべきであろう。また公務員給与は最近は下げているとなっているが、公的病院では、いまだに官民格差が大きい。勤務医を除いた医療スタッフの給料は民の2倍近い。
財務省から行政刷新会議提出資料(2009年11月11日)
理念なき削減;財務省の論理
とにかく減らす
医療予算について財務省平成21年11月19日
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/h22/iryo.pdf
反論
1)診療報酬は全体的に引き上げるべきである。少なくとも10%はあげる必要がある。
日本の医療費を先進国並み(OECD平均水準)にするためには、最低でも医療費を約10%引き上げなければなりません。産科・小児科・救急医療の充実、病院勤務医の過重労働緩和は最優先課題であることはいうまでもありませんが、同時に、地域医療全体の底上げが必要です。医療は、病院と診療所の連携の下、切れ目なく提供されなければならない。身近な診療所から病院への紹介、急性期医療、回復期医療、慢性期医療、診療所等への通院、在宅医療、すべてが健全化してこそ、安心の医療がもたらされる。
2)長年にわたる低医療費政策
財務省より刷新会議提出資料2009年11月11日
1981年以降の推移をみても一目瞭然ですが、近年のみならず、消費者物価指数、給料費などと比較しても判るように、長年にわたり医療費は抑制されています。財務省による刷新会議提出資料は1998年以降であり短い。医療費抑制が明確でない。また公務員給料を使っている。民であれば以下の如く、一般労働者給与費を使うべきであろう。また公務員給料は近年下げられているが、民間の医療従事者との官民格差は大きい。概ね民の2倍である。
保険診療の充実で、医師も患者もともに喜べる医療を:2009年10月 全国保険医団体連合会 作製資料より引用
3)日本の医療費は低い
2006年の対GDP総医療費は、OECD平均8.9%、日本は8.1%で、29か国中21位です。長年にわたる長期の医療費抑制策が行われた結果です。そのため、現在の我が国の医療費は、国際的にみても低水準です。しかし、医療現場の努力により効率的かつ質の高い医療を提供してきました。WHOの評価では世界のなかで日本の医療の質は常に1位か2位です。
4)医療費削減は限界:近年は特に顕著で、すでに累計で7.7%の削減をされています
小泉内閣の「基本方針2001」以降、特に医療費は厳しく抑制されてきました。診療報酬は2002年度以降、改定のたびに引き下げられ、2002年度から2008年度の間に引き下げ率は累計7.7%である。各医療機関では大幅なリストラを行っていますが、それ以前よりの抑制策もあり、医療機関の経営健全性は大きく損なわれています。その結果、医療現場が疲弊しただけでなく、安全で質の高い医療の提供が難しくなりました。損益分岐点は病院は元より、診療所も、のきなみ95%をこしています。倒産寸前です。
5)医療機関の倒産件数は、過去最高を更新中です。特に診療所が増加してきている。
2009年10月の全体での倒産件数は前年同月比 13.1%減であった。一方医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産件数は、2002 年度以降増加傾向にあり、特に2006年度以降は年間40 件前後と高水準な推移を見せている。最新の2009年10月の帝国データバンクの「全国企業倒産集計」(10月報)によると今年1−10月の累計は46件で、これは昨年同期27件の1.7倍に当たる。2007年から急増した。
病院の経営環境は、診療報酬の改定(引き下げ)、医師不足、大病院への集中は若干改善されてきているが、依然として厳しい状況が続いているものの、倒産件数は2006 年度(12 件)をピークに減少傾向をみせている。一方、「診療所」と「歯科医院」の倒産件数は増加しつづけている。上記にくわえ施設数の増加に伴う競争激化の要因が大きいと考えられる。
施設形態別倒産件数
全体の倒産
7)不況の為か患者さんの受診抑制が明確にでてきています。
自己負担がほぼ3割となり、不況とあいまり、患者さんの受診抑制が顕著です。
8)診療所は過当競争である。
病院数は減少してきている。よって病院集中は改善してきている。診療所数は増加しているため過当競争である。よって上記の如く倒産も増えてきている。
9)配分の見直しで生み出される財源は大きくありません
a)これまでの診療報酬改定においても、例えば、小児科については診療報酬を引き上げる一方、眼科のコンタクトレンズ検査料を引き下げるなど、診療科間の格差の是正は行ってきています。
b)また、前回の改定では、病院の勤務医対策のために、診療所に関する診療報酬を見直して400億円の財源を捻出するなど、病診のバランスにも配慮してきています。
c)しかし、総額で34兆円、医科だけでも26兆円にもおよぶ医療費の規模を考えると、仮にこうした見直しを行うにしても、医療再生のためには、もう一段の医療費増が必要です。
科別の収入について
整形外科が年収4200万円の根拠
事業仕分け2-4における財務省提出資料で整形外科は4200万円とされた。根拠は、医療経済実態調査報告(平成21年6月実施)引用とされている。これは一般診療所(個人)(集計2)全体の整形外科の損益差額350万1千円を12倍したもの。
財務省より行政刷新会議に提出された資料(2009年11月11日)
以下は医業経営実態調査から抜書きしたデータ
実調報告書の損益差額を12倍すれば財務省の出した資料となる。
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内科 |
小児科 |
精神科 |
外科 |
整形外科 |
産婦人科 |
眼科 |
耳鼻科 |
皮膚科 |
その他 |
全体 |
損益差額 |
1,880 |
1,446 |
1,653 |
1,545 |
3,501 |
2,059 |
2,624 |
1,465 |
2,333 |
2,365 |
2,048 |
施設数 |
244 |
40 |
15 |
22 |
42 |
22 |
44 |
32 |
34 |
15 |
510 |
損益差額(年) |
22,560 |
17,352 |
19,836 |
18,540 |
42,012 |
24,708 |
31,488 |
17,580 |
27,996 |
28,380 |
24,576 |
資料より |
2300万 |
1700万 |
2000万 |
1900万 |
4200万 |
2500万 |
3100万 |
1800万 |
2800万 |
2800万 |
2500万 |
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これに対する厚生労働省の見解
○ 月123万円、月211万円、月205万円という数値自体は、中央社会保険医療協議会が実施した調査の結果(917病院、1047診療所が回答)であるが、病院勤務医の数値が「給与」である一方、開業医(個人)の数値は「給与ではなく収支差額」である。
○ 開業医(個人)の収支差額で賄っている費用としては、院長の報酬相当額のほかに、例えば、診療所を建築するために借り入れた借金(元本)の返済 診療所の老朽化に備えた建て替えや修繕のための準備金 病気やけがにより休業した場合の所得補償のための費用(休業した場合に収入は激減) 老後のための退職金相当の積立て(サラリーマンのような退職金はない) といったものが含まれるものであり、勤務医の「給与」とは内容や性質が異なるものである。
○ また、全国の病院勤務医11万8157人、開業医7万1192人の平均年齢は、病院勤務医が43.4歳(※1)、開業医が59.4歳(※2)となっている。
(出典:「医師・歯科医師・薬剤師調査」(平成18年12月31日現在))
※1 大学附属病院以外の病院における、開設者を除く勤務者の平均年齢である。
※2 診療所の開設者の平均年齢である。
医療費(診療報酬)について(「勤務医の給料」と「開業医の収支差額」について)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=146205
1)診療報酬=医師の報酬ではありません
診療報酬は、病院や診療所に対して支払われるものです。診療報酬は、医師や看護師、薬剤師など様々な医療従事者が協働してより良い医療サービスを提供することや、治療に必要な医薬品、医療機器、さらには病院の建物本体などを整備するために使われています。
2)整形外科の手取り年収はひくい
整形外科診療所は規模が大きいため、一施設あたりの収入は多いが、手取り収入では、外科についで最低である。(日医総研)
3)実調は例数が少なく信頼性にかける
整形外科であればたった42例のデータである。年度毎の変動が大きくて信頼性にかける。
後述する日本臨床整形外科学会JCOAの行った医療経済実態調査平成21年12月2日、では、特に個人の無床院外診療所の損益差額の乖離が顕著です。平均で204万/月ですから、月に150万近い差が有ります。
第17回医療経済実態調査(平成21年6月実施)の問題点
http://www.docbj.com/iryohi/2009/
4)給与所得者と経営者の単純な比較は、意味がない。
両者の年齢構成が大きく異なることは構造的に避けがたい。実際に、勤務医師の平均年収を引き下げているのは30 歳代の医師であるが、個人開業医の中には30 歳代の医師はほとんどいない。このようなことから、医師のキャリアパスを無視した平均同士の単純な比較は、極めて不適切であり、大きな誤解を招いている。
5)勤務医と開業医の年収は差がほとんどない。
個人開業医の手取り年収を勤務医師と比較すると、45〜49 歳で56 万円高く1.05 倍、50〜54 歳で216 万円高く1.2 倍、55〜59 歳で264 万円高く1.2 倍であった。(日医総研)
また、他業種と比べて、開業医が著しく多いわけではない。
診療所開設者の年収に関する調査・分析(2006 年分)より引用
日本医師会 診療所に関する緊急調査
http://www.jmari.med.or.jp/research/summ_wr.php?no=367
6)経営構造の分析には収支差益のみならず、各種経営指標、特に経営安全率と損益分岐点をみるべきである。
経営安全率は整形外科は非常に低い。また損益分岐点もM-BAST最新版平成21年指標版によれば、黒字医療機関で102.4であり100を越して赤字であり、危機的状況にある。ちなみに全診療所では101.9である。
損益分岐点のまとめ(TKC医業経営指標に基づく動態分析の概要:日本医師会2009年11月18日)
整形外科は95を越し、危機的状況である。
2.2. 法人の損益分岐点比率
個人病院と個人診療所は給与費に院長報酬が含まれていないので、法人についてのみ、損益分岐点比率を分析した。
病院、診療所の損益分岐点比率は、平均的に90%を超えており、一般的にはかなり危険な状態にある。ここでは、損益分岐点比率95%超を特に危機的状態とした。そして、2008 年度の損益分岐点比率が95%を超え、かつ2007 年度から2008 年度にかけて損益分岐点比率が悪化したカテゴリを抽出した(表2.2.1)。その結果、特に深刻な状態にあるのは、病院では総合病院であった。診療所では、有床・無床、院内・院外でばらつきがあるが、整形外科は悪化していて、危機的状態にある。
個人立と法人医療機関の違い
「個人立診療所」の場合には、給与費に院長報酬は含まれない。損益差益(税引前利益)の中から、事業にかかわる税金(所得税、地方税など)や借入金の返済を行い、残りが、退職金相当額を含む院長所得になる。一方「法人」の場合は、院長報酬は給料となる。このように法人と個人では給与費の意味合いがまったく異なる。なお概ね個人立の診療所は法人に比較して零細な医療機関である。
利益の種類
1)粗利益=売上高−売上原価
2)営業利益=粗利益−販売費及び一般管理費
3)経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用
4)税引前当期純利益=経常利益+特別利益−特別損失
5)当期純利益=税引前当期純利益−法人税等
経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用
経常利益とは、企業では本業と営業外の収支(副業)を含めて稼いだ利益を表します。営業利益に営業外収益(受取利息、受取配当金、有価証券売却益など)を加えて、営業外費用(支払利息、有価証券売却損、有価証券評価損など)を差し引いたものです。経常利益は企業の経常的に稼げる利益を表します。
経常利益は医業そのものの利益に利息などを加味したものである。これに特別損益を足し引きし、税金を支払った残りが、再投資のための原資になる。すなわち経常利益率は、医業経営を行うための再投資が可能かどうかを示す指標であるともいえる。
個人病院と個人診療所は給与費に院長報酬が含まれていないので、法人についてのみ、経常利益率を分析した。
整形外科は内科や皮膚科より院内・院外ともに経常利益率が低い。
2.3. 法人の経常利益率(TKC医業経営指標に基づく動態分析の概要:日本医師会2009年11月18日)
無床診療所の院内・院外処方の比較(図 2.3.6)。
税引前当期純利益=経常利益+特別利益−特別損失
税引前当期純利益とは、企業では突発的に発生した収益や費用を加減して稼いだ利益を表します。経常利益に特別利益(固定資産売却益、前期損益修正益)を加えて、特別損失(固定資産売却損、前期損益修正損など)を差し引いたものです。経常利益は企業の経常的に稼げる利益を表します。税引前当期利益は、ほぼ事業所得、損益差額に相当する。
個人開業医の場合には、税引前当期利益(医療経済実態調査の損益差額に相当)の中から、事業にかかわる税金を支払い、借入金の返済を行うなどして、その残りが退職金相当額を含む院長所得になる。
当期純利益=税引前当期純利益−法人税等
当期純利益とは、税引前当期純利益から法人税などの利益にかかる税金を差し引いた利益です。つまり当期純利益は、法人税という社会的に必要なコストを支払った上でその企業の純粋な今期の利益を表します。
中医協に出た医業経営実態調査における損益差額で整形外科4300万のデータは以下で突出している。これははなはだ疑問のデータである。
反論
1)中医協の医療経済実態調査では、院内院外別のデータはない。しかし、整形外科の損益差額が突出しているのは疑問である。例数が少なすぎる。定点ではないし、はなはだバイアスがかかっていると思われる。
2)収入は平均値と中央値で順位が異なる
平均は一部の金額が大きい所に影響される。中央値は中央値はほとんど変わらない。医業経営実態調査では整形外科(個人、入院なし)は医業収益では10791千円/月だが、中央値では8441千円に、損益差益は3622千円/月が中央値では2521千円となる。
3)単月であり季節変動の影響を考えていない
整形外科は6月が一番レセプト件数が多い。6月の調査では、整形外科に不利になる。皮膚科、眼科も6月に多い。
各科の季節変動 整形外科は6月に患者が一番多い
http://www.docbj.com/iryohi/2009/kisetu.html
4)収入は平均値と中央値で順位が異なる
平均は一部の金額が大きい所に影響される。中央値は中央値はほとんど変わらない。医業経営実態調査では整形外科(個人、入院なし)は医業収益では10791千円/月だが、中央値では8441千円に、損益差益は3622千円/月が中央値では2521千円となる。
主な集計項目の平均値と中央値(第17回医業経営実態調査) |
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平成21年11月18日中医協資料 |
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個人入院収益なし(集計2) |
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単位1000円 |
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平均/中央 |
内科平 |
内科中 |
小児科平 |
小児科中 |
整形平 |
整形中 |
産科平 |
産科中 |
眼科平 |
眼科中 |
耳鼻科平 |
耳鼻科中 |
皮膚科平 |
皮膚科中 |
医業収益 |
6764 |
5705 |
4519 |
4587 |
10791 |
8441 |
7496 |
4496 |
6209 |
5533 |
4673 |
4199 |
6105 |
6142 |
損益差額 |
1905 |
1402 |
1446 |
1137 |
3622 |
2521 |
1960 |
1394 |
2517 |
2108 |
1465 |
1450 |
2333 |
1860 |
参考:第151回中央社会保険医療協議会総会資料2009年11月18日
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=145045
○ 医療経済実態調査に係る意見について資料(総−1)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1118-7b.pdf
5)整形外科は借入金が多い
M-BAST平成21年版によれば、無床個人診療所、院外処方では、長期借入金が他科よりも多く、47376千円で負債の43.2%を占めます。短期借入金は他科とは変りませんが、資金繰りが悪化しているため対前年比で増加しています。その結果借入金対月額医業収益高倍率(借入金/月額医業収益高)が他科より5.6と高くなっています。
M-BAST個人診療所無床、院外処方(平成21年指標版) |
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全科 |
内科 |
外科 |
整形外科 |
医療機関数 |
1376 |
581 |
67 |
119 |
借入金対月額医業収益高倍率(月) |
4.6 |
4.7 |
5.4 |
5.6 |
短期借入金(%) |
2.9 |
2.8 |
2.3 |
2.3 |
短期借入金対前年比(%) |
97.4 |
97.7 |
94.2 |
111.5 |
長期借入金(%) |
33.2 |
33.5 |
36.2 |
43.2 |
6)整形外科は人件費などリハに関する経費が多いために経営効率が悪い
損益差額率では整形外科は平成21年で31.6%であり眼科や皮膚科よりかなり低い。リハに関わる人件費などが多くて経営効率が悪いといえる。(健保連資料より2009年11月18日)
参考:第17回医療経済実態調査結果報告に関する分析平成21年11月18日健康保険組合連合会白川委員提出
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1118-7d.pdf
7)TKCの解析とは損益差額は、税引前当期利益とほぼ一致するのでこれで比較する。
2.5.2. 税引前当期利益(2008 年度)(TKC医業経営指標に基づく動態分析の概要:日本医師会2009年11月18日)
ここでは個人診療所の税引前当期利益の金額を示した。税引前当期利益は、ほぼ事業所得、損益差額に相当する。個人開業医の場合には、税引前当期利益(医療経済実態調査の損益差額に相当)の中から、事業にかかわる税金を支払い、借入金の返済を行うなどして、その残りが退職金相当額を含む院長所得になる。
8)TKCで比較すれば整形外科は突出はしていない。
TKCは規模の大きい診療所のデータである。その前提で、たとえば無床診療所で院内処方では整形外科は2195万円であり、内科、小児科と同程度(図2.5.9)。むしろ低いほうである。また無床診療所で院外処方では整形外科は3357万円である。しかし、眼科より低く、小児科と同程度であり、突出はしていない(図2.5.10)。
9)整形外科は減収が続いている
10)JCOA調査によれば、整形外科の無床診療所の損益差額は実調よりかなり低い
損益差額差額(税引前当期純利益)のJCOA調査と実調の平均値の比較(平成21年6月)では、厚労省の医療経済実態調査より、JCOA調査の方が例数が多い。平成21年12月3日施行の「日本臨床整形外科学会医療経済実態調査」JCOAによれば、個人(無床、有床)診療所と法人(無床、有床)診療所の平均値では個人の平均値の乖離が著しい。150万/月近い差である。JCOA調査では平均値でも204万円/月である。なお、法人の場合は実調より若干高いが、差は約20万/月である。
まとめ
TKC医業経営指標に基づく動態分析の概要:日本医師会2009年11月18日
3.病院も診療所も危機的状況であり、全体的な底上げが必要である(TKC医業経営指標に基づく動態分析の概要:日本医師会2009年11月18日)
損益分岐点比率は、病院94.9%、診療所95.0%である。医業収益が5%超減少すれば赤字に転落するが、患者数が5%程度減少することは十分あり得る。病院も、診療所も、事業環境の変化にきわめて弱い経営実態になっている。
損益分岐点比率の悪化については、固定費を見直すべきだとの指摘もある。医療機関においては、固定費の大部分を給与費が占めるが、役員報酬はほとんど伸びていない。その一方で、従事者給与賞与の前年比は、病院で+2.5%、診療所でも+2.5%であった。医師不足、看護師不足等により、給与費を上げざるを得ない実態があるものと推察される。
日本医師会の調査でも、従業員の給与を「引き上げた」(「かなり引き上げた」「やや引き上げた」)というところが、診療所、病院ともに、いずれも約4 割あった(図 3.1)。一方で、院長給与(または所得)は、診療所では半数以上で減少していた(図3.2)。病院でも4 割強で減少していた。
参考
利益の種類
1)粗利益=売上高−売上原価
2)営業利益=粗利益−販売費及び一般管理費
3)経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用
4)税引前当期純利益=経常利益+特別利益−特別損失
5)当期純利益=税引前当期純利益−法人税等
3)経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用
経常利益とは、企業では本業と営業外の収支(副業)を含めて稼いだ利益を表します。営業利益に営業外収益(受取利息、受取配当金、有価証券売却益など)を加えて、営業外費用(支払利息、有価証券売却損、有価証券評価損など)を差し引いたものです。経常利益は企業の経常的に稼げる利益を表します。
経常利益は医業そのものの利益に利息などを加味したものである。これに特別損益を足し引きし、税金を支払った残りが、再投資のための原資になる。すなわち経常利益率は、医業経営を行うための再投資が可能かどうかを示す指標であるともいえる。
個人病院と個人診療所は給与費に院長報酬が含まれていないので、法人についてのみ、経常利益率を分析した。
4)税引前当期純利益=経常利益+特別利益−特別損失
税引前当期純利益とは、企業では突発的に発生した収益や費用を加減して稼いだ利益を表します。経常利益に特別利益(固定資産売却益、前期損益修正益)を加えて、特別損失(固定資産売却損、前期損益修正損など)を差し引いたものです。経常利益は企業の経常的に稼げる利益を表します。税引前当期利益は、ほぼ事業所得、損益差額に相当する。
個人開業医の場合には、税引前当期利益(医療経済実態調査の損益差額に相当)の中から、事業にかかわる税金を支払い、借入金の返済を行うなどして、その残りが退職金相当額を含む院長所得になる。
5)当期純利益=税引前当期純利益−法人税等
当期純利益とは、税引前当期純利益から法人税などの利益にかかる税金を差し引いた利益です。つまり当期純利益は、法人税という社会的に必要なコストを支払った上でその企業の純粋な今期の利益を表します。
より詳しくは以下を参照ください
1)整形外科医療の現状
http://www.orth.or.jp/seisaku/siryou/kaitei/h21/genzyou2009.html
http://www.orth.or.jp/seisaku/siryou/kaitei/h21/genzyou2009.doc
2)診療報酬の配分について
http://www.orth.or.jp/seisaku/siryou/kaitei/h21/haibun2010.html
http://www.orth.or.jp/seisaku/siryou/kaitei/h21/haibun2010.doc
3)整形外科の医療の特徴
平成20年度医療費の動向平成21年6月より
http://www.orth.or.jp/seisaku/siryou/kaitei/h21/tokutyou2009.html
http://www.orth.or.jp/seisaku/siryou/kaitei/h21/tokutyou2009.doc
4)財政中立について 2009年11月16日
http://www.orth.or.jp/seisaku/siryou/kaitei/h21/zaisei1.html
http://www.orth.or.jp/seisaku/siryou/kaitei/h21/zaisei1.doc
5)第17回医療経済実態調査(平成21年6月実施)の問題点
整形外科診療所のデータの変動が大きすぎる
http://www.docbj.com/iryohi/2009/
参考文献
1)事業仕分け2-4における財務省提出資料H20/11/11
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov11-pm-shiryo/05.pdf
2)医療経済実態調査報告(H21年6月実施)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/s1030-6.html
3)医療経済実態調査報告の平成21年6月の機能別集計等
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/dl/s1030-6i.pdf
4)田中康夫氏;行政刷新会議について
http://www.youtube.com/watch?v=mXwR5pRLJtQ
5)平成21年11月11日中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会資料
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=144765
資料;医療経済実態調査における個人医療機関の収益について
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1111-5j.pdf
資料(安達委員提出資料2)(PDF:141KB)
中医協 医療経済実態調査の分析2009円11月5日日本医師会
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1111-5k.pdf
6)第26回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会資料
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/s1110-5.html
7)平成20年度診療報酬改定の結果の検証について
行政刷新会議の「事業仕分け」について
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20091118_1.pdf
8)TKC医業経営指標に基づく動態分析の概要−2008年4月〜2009年3月期決算―について
社団法人 日本医師会(2009 年11 月18 日 定例記者会見)
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20091118_2.pdf
9)営業利益
http://www.ifinance.ne.jp/glossary/account/acc029.html
10)利益の種類
http://www.boki-master.com/analysis/profit.htm
11)中央値
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E5%80%A4
12)平成22 年度診療報酬改定に対する日本医師会の要望
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20091202_5.pdf
13)「平成22年度予算編成上の主な個別論点(医療分野)」に対する見解について
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=145293
14)病院・開業医の倒産、10月までに昨年の1.7倍−帝国データ
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/25168.html
昨年は35件に減少したものの、今年は07年に迫る高水準で推移している。また、今年10月の負債総額は6億9900万円だった。
15)2008 年度の老人福祉事業者・医療機関の倒産件数、 ともに過去最高を記録
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p090504.pdf
倒産集計2009年10月