地域から診療所が消える日(初再診料) 

ver2010年1月21日


初診料と再診料の収入にしめる割合
 診療所は、病院と比べ「初・再診」「医学管理等」「処置」の割合が高く、「検査」「画像診断」の割合は低くなっています。最新の平成20年度では初診料と再診料の収入にしめる割合は、病院では10.5%。診療所では18.7%です。医学管理料とあわせれば病院は14.9%。診療所は30.2%です。つまり外来診療の収入の3割を占める。これは科によっても違います。投薬や処置の少ない科では初診料と再診料で収入の3割を越します。





整形外科は再診料の比率が高い 各科別にみると、整形外科は基本診療料の占める割合が高い。かつ整形外科は再診料の占める割合が高い。


整形外科外来診療は、骨折など外傷や高齢化による変形性関節症など整形外科疾患が多い


医療機関の規模による初再診料の全体の収入における割合の変化

 整形外科診療所では初再診料は収入の3割を超える。また零細なところほど、収入に占める割合が大きい。

整形外科医療機関での初再診料の占める割合(2008年10月-12月平均)日本臨床整形外科学会

500万以下

500万ー1000万

1000万以上

診療所(無床)

32%

32%

28%

診療所(有床)

31%

31%

29%

病院200床未満

21%

31%

17%

病院200床以上

0%

0%

20%



財務省;診療所と病院の再診料の統一を求める



厚労省の診療報酬改定要求:2009/12/18
2010年度診療報酬改定に当たり
1)医科本体を1.73%前後引き上げを財務省に要求
過去3回の改定率の積み重ねはマイナス2.28%(医科本体は、2002年マイナス1.30%、2004年は0%、2006年マイナス1.36%、2008年プラス0.38%)
今回の厚労省の要求は、なお不十分である。
2)診療報酬全体では0.35%の引き上げを求めている。
 過去4回の改定で累計7.7%引き下げられた。

2010年度の診療報酬を0・19%引き上げ 2009/12/24
薬価を1・36%下げ
本体を1・55%上げ

勿凝学問282
http://news.fbc.keio.ac.jp/%7Ekenjoh/work/korunakare282.pdf
国債11兆円の増発で医療費700億円増だと思っていたら、実質±ゼロ改定らしい


足立政務官方針
1)診療所の再診料を引き下げ
2)地域医療に貢献していないような診療所;ビル診は評価しない
夜間早朝加算をあげる
電話で対応加算を付ける
「(診療時間が)9時(から)5時で、時間外は電話もつながらない診療所と、地域医療を守る診療所は、本来、区別してしかるべき」

○外来改定財源 400億円あるから病院をあげても充分足りる
病院の再診料を71点にあげても220億円である(厚労省)
再診料(病院60点 診療所71点)
 病院 1点 約20億円 診療所1点 約100億円
外来管理加算(52点)
 病院1点 約10億円
 診療所1点 約40億円
再診料の設定ごとの影響額(イメージ)
再診料 総額  病院  診療所
71 点 220億円 220億円  0億円
66 点▲ 380億円 120億円 ▲ 500億円

再診料及び外来管理加算について
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/dl/s0120-2g.pdf
2.論点
外来改定財源が400億円となっている状況で、以下の2点についてどう考えるか。
(1)病院と診療所の統一された再診料の点数設定をどうするか。
(2)5分という時間の要件を廃止した上での外来管理加算の点数設定や新たな要件をどうするか。


■再診料下げれば「開業医は大変」
    民主・医療議連の櫻井氏
 民主党の適切な医療費を考える議員連盟(櫻井充会長)は18日、2010年度診療報酬改定に向けて、再診料や外来管理加算など点数の配分に関する要望を小沢一郎幹事長に今週中に提出する方針を確認した。次回の会合は20日に開く予定で、提出する要望項目を取りまとめる。
 10年度診療報酬改定の「現時点の骨子」について、櫻井会長は18日の議連終了後、本紙に対し「中医協から骨子が出ているが、問題点が多々ある」と指摘。「大病院ばかりが(収入が)増えるのではないかと言われている。再診料が引き下げられて外来管理加算まで引き下げられたら、開業医だって大変だ」と述べ、骨子の方向性で改定が行われれば診療所の経営に大きな影響 を与えかねないとした。
 同議連は当初、病院や診療所、薬など6つの課題別チームに分かれて10年度改定についての要望項目を検討する予定だった。櫻井会長は「思った以上に(中医協の)タイムスケジュールが早かった」とし、課題別チームの議論を省略して要望項目をまとめる考えを示した。
1月19日 メディファクス 5801号

再診料下げても「収入減らさない」 足立政務官
 2010年度診療報酬改定で焦点となっている診療所の再診料と外来管理加算について、厚生労働省の足立信也政務官は19日、診療所の再診料を引き下げたとしても、時間外対応や地域連携を積極的に進める診療所の評価を引き上げることで、地域医療を守る診療所については現行の収入水準を維持させるべきとの考えを示した。政務三役会議後の会見で述べた。
 足立政務官は会見で、再診料について「仮に病院(60点)を引き上げて診療所(71点)に合わせる場合、それだけで相当な医療費が考えられる。今回、外来の財源が約400億円に限られている中で、病院を上げて統一すると、ほかのことができなくなる」と述べ、再診料の統一は診療所を引き下げて行う方針を示唆した。
●地域医療担う診療所は別に評価
 ただ「時間外でも電話で対応したり、病院を紹介したりするなど、病院との連携の中で地域医療を守っている診療所の診療報酬を減らすことは考えていない」と強調。「(診療時間が)9時(から)5時で、時間外は電話もつながらない診療所と、地域医療を守る診療所は、本来、区別してしかるべき」と指摘した。
 その上で「地域医療を担う診療所では、現在の再診料と外来管理加算の合計点数を下回らないようにすることが必要」と述べ、時間外対応を行うなど「かかりつけ機能」を持つ診療所については、収入ダウンとならないよう配慮する考えを示した。一方、地域医療に貢献していないような診療所については「若干の低下があるだろう」と述べた。
 さらに足立政務官は「外来で化学療法や放射線治療を行ったり、入院してやるような病理検査を外来でするところも増えている。これ以外にも、外来で重視させないといけない部分はたくさんある」とし、個別の技術料の評価を充実させるべきとの考えを示した。
●同時改定の会議体「既存審議会と重複しない形で」
 長妻昭厚生労働相が設置の方針を表明している2012年度の診療報酬と介護報酬の同時改定に向けた新たな会議体については、「既存の審議会などと重複しないような形を考える必要がある」と述べた。
 足立政務官は「新たな会議体ですべて決めるのではなく、テーマによっては既存の審議会などでさらに深い議論をしてもらう必要も出てくる」とし、「重複を避けつつ、既存の会議の意見も反映できるようにしないといけない」と指摘した。 1月20日 メディファクス 5802号


「平成22年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点での骨子)」等に対する日医の見解
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20100121_2.pdf
日医見解
 厚生労働省は診療所の再診料を引き下げる方向であると報道されている。医療は切れ目なく提供されなければならず、病院だけでなく、診療所の経営もともに建て直さなければ、地域医療の再生はない。
 わずかな財源ではあるが、日本医師会はあらためて、浅くとも診療報酬を全体的に引き上げること、その上で、病院勤務医対策のために、より多く配分することを主張する。

日本人の健康長寿のポイント(OECD諸国との比較分析:日医総研)
第一に、日本では、いつでも、どこでも受診できること
フリーアクセスを堅持して、自己負担は増やすべきではない。
第二に、その結果、疾病が早期に発見されている可能性があること
再診回数が多いのは善である。
第三に退院時の治癒率が高くなっている可能性があること
 病床数や医療機器保有数の多さは、しばしば医療費高騰の要因として問題視される。しかし、日本の医療費は諸外国と比べて「低い」。病床数の多さなどは、むしろ肯定的要因としてとらえても良いと考えられる。
 日本では、「基本方針2001」以降、少なくとも2009年まで、日本では医療費が低いにもかかわらず、医療費を抑制するという矛盾した政策がとられてきた。財務当局が医療に関する国際比較データを意図的、かつ部分的に使用してきたことも一因ではないか。

英国の医療制度改革
 NHSへの公的支出は最近10 年間で実質ベースで1.87 倍に拡大している。この増加率はGDP 成長率よりもかなり高くなっている。
NHSの財源は安定的で、約75%を税金から、約20%を国民保険からとなっている。これらの公的資金で全体の約95%の資金を調達している。
 国家歳出における医療の位置づけは高い。2009 年度の国家歳出予算では医療は 17.7%を占め、社会保護に次ぐ2 番目の大きさである。歳出実績で見ると、医療への歳出は最近10 年間で1.85 倍となっており突出している。

改定は全体でみるべきである
 現在の改定率は、医療経営実態調査、労働経済指標などを参考にして、あくまで全体の収支をみながら、細かい点数配分をして、調整しています。診療所の場合は算定できる医療行為自体が少ないので、勢い非常に細かい調整となります。

再診料だけいじればどうなるか
 医療資源の効率化、病院と診療所の格差是正のために、インセンティブとして診療所を安く、病院を高くするという流れもありますが、機械的に診療所の再診料を下げれば、収入の2-3割を占めるわけですから、診療所は経営的には大打撃を受けます。診療報酬への事業課税のお話も有ります。これでは到底、経営は成り立ちません。地域から診療所が消える日も間近です。

補助金を活用すべきである
 「診療報酬を上げて補助金に頼る部分を少なくする」のが確かに理想ではあるが、問題は財源であろう。社保審の斉藤先生が仰しゃられるように、診療報酬の財源は、税金と保険料と患者による窓口負担です。だから診療報酬を単純に上げると、保険料と窓口負担も増えます。患者負担はこれ以上は上げられません。保険財政も苦しい現状では、補助金=税金で診療報酬の引き上げ分をカバーすればよい。


再診料が66点に統一されれば診療所の経営は立ち行かない
 病院と、診療所では、再診料の増減の影響がまったく異なる。診療所の再診料算定回数は病院の4.38倍であるから、66点で統一されれば病院は103億円のアップであり、診療所は375億円と実に3.65倍の削減となる。

66点で統一;
病院  現状60点 +6点 。診療所 現状71点 -5点
病院は 103億円アップ
10,280,717,280円=1,713,452,880*6点
診療所は375億円減
37,548,751,200円=7,509,750,240*5点


再診料1点で年間どれくらいの医療費が必要か
病院 17億円
 算定回数;14,278,774回/月*12ヶ月*10円=1,713,452,880円
診療所 75億円
 算定回数;62,581,252回/月*12ヶ月*10円=7,509,750,240円
今回の計算は、参考文献にあげた、厚労省の中医協提出の6月、1ヶ月の算定回数データを12倍して計算した。因みに厚労省は「病院の再診料1点は50億程度、診療所の再診料1点は、医療費ベースで100億円弱に相当する。」とのべている。


社会医療診療行為別調査(各年6月審査分) 平成20年算定回数(厚労省)


厚労省中医協提出資料と上記の計算の異同
どのデータを使ったのか不明です。


再診料
診療所の再診料1点は、医療費ベースで100億円弱に相当する。(厚労省)
外来管理加算はボリューム、金額が大きく、修正・廃止した場合の影響が大きい

診療科間格差について
○(医療経済実態調査における診療所のうち、)小児科、外科、産婦人科の利益率は余り高くない。また診療科によって初・再診料の占める割合が異なっている。これらを踏まえて初・再診料、外来管理加算についても検討が必要。(白川委員)

初・再診料に包括される範囲について(厚労省)
1) 個別技術にて評価されないような基本的な診察や検査、処置等や、基本的な医療の提供に必要な人的、物的コストを含めて評価している。
(2) 平成20年度診療報酬改定においては、医師による診断と適切な指導があれば、必ずしも医師等の医療従事者による高度な技術を要せず、患者本人又は家人により行うことが可能な処置について、基本診療料に含めて評価を行った。
※ 100平方センチメートル未満の皮膚科軟膏処置、湿布処置、点耳、簡単な耳垢栓除去等


初・再診料について(厚労省)
(1) 病院、診療所における初・再診料は従来同一であったが、病院は入院機能、診療所は外来機能を重点的に評価する観点から、再診料は昭和60年、初診料は平成4年に、診療所に対して病院より高い評価を行った。
(2) しかしながら、初診の際には、全身にわたる診察から始まり、きめ細やかな診断・治療方針の決定を行う手間について、病院と診療所の間に差はないことから、平成18年度診療報酬改定において初診料の統一を行った。
(3) 再診料についても、同一のサービスには同一の単価とすべきとの議論がある。

外来管理加算に新たな要件を加えることとなった背景(厚労省)
 診療所から病院に対して財源のシフトを行うことが求められた中で、中医協における議論を経て、公益委員の裁定により、再診料を引き下げるのではなく、外来管理加算に時間の目安を導入する、という手法により対応することとなったものである。その場合の時間の目安については、懇切丁寧な説明を行うことから、概ね5分程度とされた。


病院の再診料を上げても患者さんの病院集中(改善傾向にあり)はあまり改善されない
安達氏
再診料の差の理由は病院は入院に特化し、個人診療所は外来機能に特化するべき、という意味合いがあると聞いている。実際の患者の行動様式は逆になっており、病院再診料を11点の引き上げたとしてもこの傾向は変わらないのではないか。(安達委員)
○病・診の機能における役割の棲み分け、その誘導という意味で付けられた格差か、それ以外に理由があるのかの確認が議論の出発点として必要。低い方を高い方に合わせるという前提で統一するのであれば異存はない(安達委員)


再診料、外来管理加算等中央社会保険医療協議会総会資料2010/1/13)
1)再診料について、病院と診療所の機能分担の観点からそれぞれ異なる点数が設定されているが、同一のサービスには同一の価格であることが分かりやすいことから、病院と診療所の再診料を統一する方向で検討する。
2)外来管理加算については、一定の処置や検査、リハビリテーション等を必要としない患者に対して、それらを行わずに計画的な医学管理を行った際の評価であったが、平成20年度診療報酬改定において、概ね5分以上の懇切丁寧な説明を行った際の加算として意義づけの見直しを行った。この見直しについては、必ずしも5分という時間の要件が診察の満足度等に関係するとは言えないことから、時間の目安は廃止した上で、点数設定や新たな要件について検討する。
第159回中央社会保険医療協議会総会資料
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/s0113-4.html
平成22度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/dl/s0113-4e.pdf


基本診療料の基本的性格
基本診療料としては,「初・再診料」及び「入院料等」がある。基本診療料は、初診若しくは再診の際及び入院の際に行われる基本的な診療行為の費用を一括して評価するもの。
 従って,基本診療料として支払われる診療内容には,簡単な検査(例えば血圧測定検査等)の費用,入院の場合の皮下,筋肉内及び静脈内注射の注射手技料,簡単な物理療法の費用,簡単な処置の費用等を含んでいる。
 また,入院基本料,特定入院料及び短期滞在手術基本料には,療養環境(寝具等を含む。)の提供,看護師等の確保及び医学的管理の確保等に要する費用は,特に規定する場合を除き含まれている。
基本診療料と特掲診療料との関係
1)基本診療料として一括して支払うことが適当でない特殊な診療行為の費用は,第2章特掲診療料に定められているが,特掲診療料が設定されている診療行為及びそれらに準ずる特殊な診療行為を行った場合は,それぞれ特掲診療料を基本診療料のほかに算定できるものである。従って,1人の患者に対する診療報酬は,基本診療料と特掲診療料を合算した額となる。
2)特掲診療料は、特に規定する場合を除き、当該医療技術に伴い必要不可欠な衛生材料等の費用を含んでいる。

医業原価の観点からは病院と診療所で同一のサービスは同一の価格ではない
 医療機関の診療機能の維持にかかっているコストは病院と診療所では当然異なる。地域医療において求められている機能も異なる。収入構造からも病院は入院収入も多いが、外来機能を担う診療所の収入は再診料に依存しており、再診料の引き下げは、診療所経営、ひいては地域医療に大きな打撃を与える。あくまで特掲診療料を含めた、医業収入全体のなかでの基本診療料などの資源配分を考えないと当然、「診療所の機能維持」はできない。

日医見解
 医療は、入院、入院外ともに切れ目なく提供されるべきものである。今回の入院、入院外それぞれの改定率が設定され、枠がはめられた背景には、きわめて強い財務省主導が感じられる。また、「民主党政策集INDEX2009」にあったように公的な病院を強化するための地ならしであるとも考えられる。
 日本の医療を再生させるためには、すべての地域、すべての医療機関が健全化しなければならない。今回、入院、入院外の配分が明確に規定されたが、このうえ、さらに医療崩壊の問題を、全体的な底上げではなく配分の見直しで解決することのないよう強く求める。
 総会では、2009 年12 月27 日に厚生労働省が診療所の再診料を引き下げる方向であるとの記事が報道されたことについて、診療側委員から、「前にも同様なことが起こったときには、十分精査して二度とないよう注意したいとの返答であったと思うが、にもかかわらず、何故あいかわらず起こるのか。そういうことがないようにしていただきたい」との指摘もあった。これに対しては、厚生労働省事務局から「報道の内容については事務局から公表したという事実はないが、今後このような誤解を招かないようにしたい」との回答があった。しかし、今回のリークは、既成事実化のための布石とも受け取られかねない。中医協の権威を踏みにじるものであるとして、あらためて強く抗議するとともに、注意喚起を促したい。

1.再診料
日本医師会の見解
 日本医師会は、1 月6 日の定例記者会見でも再診料に関する見解を示したが、病院の再診料を引き上げて、診療所の再診料に統一していく方向には賛成である。しかし、診療所の再診料を引き下げて統一することは認められない。病院は入院収入も多いが、外来機能を担う診療所の収入は再診料に依存しており、再診料の引き下げは、診療所経営、ひいては地域医療に大きな打撃を与えるからである。日本医師会は、今回の改定では、病院の再診料引き上げ幅をある程度多くして診療所の再診料に近づけること、そして次回以降、より高い水準で統一することを提案する。
2.外来管理加算
日本医師会の見解
 外来管理加算の5 分要件は撤廃すべきである。第一に、新政権である民主党は、2009 年7 月27 日に発表した『民主党医療政策(詳細版)』において、「外来管理加算の5 分要件に関しては、外来管理に時間要件はなじまないことを踏まえ、診療所負担の軽減を図るため撤廃」するとしている。
第二に、日本医師会の調査によれば、5 分要件の導入により、患者の待ち時間が長くなったり、時間の計測が医師の診療上の妨げになったりしている1。
 1 月6 日、厚生労働省足立信也政務官が、外来管理加算の廃止の方向性も示したと報道されたが2、中医協基本小委では廃止は混乱が大きいとの指摘もあった。日本医師会は、5 分要件の撤廃を機に、加算そのものを廃止するという方向に反対である。今回改定では、5 分要件を撤廃すること、その上で、外来管理加算のあり方については、次回改定にむけて時間をかけて議論すべきと考える。
平成22年度診療報酬改定に係る中医協での議論に対する日本医師会の見解2010 年1 月13 日
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20100113_2.pdf


◇ 基本診療料について(医科診療報酬点数表より)
(1)1人の患者について療養の給付又は医療に要する費用は,第1章基本診療料及び第2章特掲診療料又は第3章介護老人保健施設入所者に係る診療料の規定に基づき算定された点数の総計に10円を乗じて得た額とする。
(2)基本診療料は,簡単な検査(例えば,血圧測定検査等)の費用,簡単な処置の費用等(入院の場合には皮下,筋肉内及び静脈内注射の注射手技料等)を含んでいる。
(3)基本診療料に係る施設基準,届出等の取扱いについては,「基本診療料の施設基準等(平成16年厚生労働省告示第49号)」に基づくものとし,その具体的な取扱いについては別途通知する。
◇ (基本診療料の性格と内容)
(1)基本診療料としては,第1部初・再診料及び第2部入院料等が設けられているが,これは,医療という一連のサービスを初・再診及び入院診療の2つの基本的関連においてとらえ,それぞれ初診若しくは再診の際及び入院診療の際に行われる診察行為又は入院サービスの費用のほかに,通常初診若しくは再診の際又は入院の際に行われる基本的な診療行為の費用も一括して基本診療料として支払うという方式をとっている。従って,基本診療料として支払われる診療内容には,簡単な検査(例えば血圧測定検査等)の費用,入院の場合の皮下,筋肉内及び静脈内注射の注射手技料,簡単な物理療法の費用,簡単な処置の費用等を含んでいる。
 また,第2部入院料等の入院基本料は,従前の入院環境料,看護料,入院時医学管理料等を統合・簡素化し,基本的な入院医療の体制を総合的に評価したものであり,特定入院料,短期滞在手術基本料には入院基本料が包括されている。このため,入院基本料,特定入院料及び短期滞在手術基本料には,療養環境(寝具等を含む。)の提供,看護師等の確保及び医学的管理の確保等に要する費用は,特に規定する場合を除き含まれている。
(2)基本診療料は,初診,再診及び入院診療の際(特に規定する場合を除く。)に原則として必ず算定できるのであって,仮に簡単な診療行為を全く行わない場合においても所定の点数を算定できるものである。例えば,初診料は270点であり,初診の際に算定できるのであるが,初診の際に診察だけで終り,検査も注射もしなかった場合においても,270点として算定できる。
また,逆に基本診療料として一括して支払われる簡単な診療行為を何回やっても,何種類やっても基本診療料の所定点数しか算定できない。
◇ 基本診療料と特掲診療料との関係
◇基本診療料として一括して支払うことが適当でない特殊な診療行為の費用は,第2章特掲診療料に定められているが,特掲診療料が設定されている診療行為及びそれらに準ずる特殊な診療行為を行った場合は,それぞれ特掲診療料を基本診療料のほかに算定できるものである。従って,1人の患者に対する診療報酬は,基本診療料と特掲診療料を合算した額となる。
医科点数表
http://shirobon.net/18/ika_1_1/i_k_1.htm
診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について
http://www.sia.go.jp/~miyagi/iryou52-1.pdf
2 基本診療料は、簡単な検査(例えば、血圧測定検査等)の費用、簡単な処置の費用等(入院の場合には皮内、皮下及び筋肉内注射及び静脈内注射の注射手技料等)を含んでいる。 3 特掲診療料は、特に規定する場合を除き、当該医療技術に伴い必要不可欠な衛生材料等の費用を含んでいる。
現行の診療報酬体系第1 回社会保障審議会後期高齢者医療の在り方に関する特別部会平成18年10月5日
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1005-4e.pdf
- 基本診療料は、初診若しくは再診の際及び入院の際に行われる基本的な診療行為の費用を一括して評価するもの。
平成18年度厚生労働科学研究費補助金政策科学推進研究事業による「診断群分類を活用した医療サービスのコスト推計に関する研究」「コスト調査のための方法論に関する研究」の概要
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb11GS20.nsf/0/dd0568fd77b81853492573210009fdaa/$FILE/20070723_1shiryou_all_3.pdf

 


外来管理加算について
現在の算定回数(一施設あたりの平均値)
 一施設あたりで外来管理加算の算定回数は、病院では1万3千回/年、診療所は5000回/年、整形外科は4000回程度である。
金額ベースでは、よって52点の現状では、病院は690万円程度。診療所は260万程度、整形外科は210万程度である。これがもし52点から45点になれば、病院では、93万円/年、診療所は35万円/年、整形外科では28万円/年程度の減額となる。もし廃止されれば、病院は687万円/年、診療所は、262万円/年、整形外科は209万円/年の減額となる。
整形外科の算定回数は消炎鎮痛処置があるので少ない
 施設数が20 施設を超えた診療科に限定して、診療所における主たる診療科別の外来管理加算算定回数・割合についてみると、「内科」の外来管理加算算定割合は65.3%で最も高かった。次いで、「小児科」が50.8%、「皮膚科」が40.4%、「産婦人科」が33.0%となった。一方、外来管理加算算定割合が低い診療科としては、「耳鼻咽喉科」(2.1%)、「眼科」(2.7%)、「整形外科」(12.9%)となった。







外来管理加算の診療所の収入全体に対する影響
外来管理加算がなくなると、診療所(外来のみ)の「損益差額」は、
外科:マイナス13.05%
内科:マイナス 9.74%
など大幅なマイナスとなり、診療所の継続は困難となります。


【試算方法】
●計算式
【1】外来管理加算消失による収入の減少分の計算
参考資料2)の医業収入の中の「保険診療収益」 × 参考資料1)の「外来管理が占める割合」
【2】損益差額のマイナス率の計算

 【1】の収入減収分  ÷  2)の「損益差額」

●実際の数値(単位:千円)

 外科

内科

医業収益

6201

6764

保険診療収益

5559

6376

介護収益

1

3

医業介護費用

4666

4861

損益差額

1536

1905

外来管理加算が占める割合

3.61%

 2.91%

外来管理加算による収益

 200

186

外来加算消失による収益差額のマイナス率

 13.05%

 9.74%

参考資料
1)外来管理加算が総点数に占める割合(診療所 診療科別)
社会医療診療行為別調査平成20年6月分のデータ
第12表 医科診療(診療所入院外−1総数) 診療科別
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_csvDownload_&fileId=000003305677&releaseCount=2
2)診療所の医業収入・医業経費・損益差額
第17回医療経済実態調査の報告(平成21年6月実施)機能別集計等
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/dl/s1030-6i.pdf
 一般診療所(個人) 入院診療収益なし より


外来管理加算の影響、診療所は748億円の減収
 昨年4月の診療報酬改定で見直された外来管理加算の算定要件などによって、診療所が受けた影響額はマイナス748億円に上ることが、日本医師会の「外来管理加算に関するアンケート調査」で明らかになった。同調査は昨年11月に実施。日医会員の診療所1744か所、病院226か所から回答を得た。
 それによると、外来管理加算を現在算定している医療機関は90.2%。昨年4月以降に算定をやめた医療機関は5.9%だった。
 算定をやめた理由については、「(再診時、おおむね5分を超えて直接診察を行った際に算定する外来管理加算の)『おおむね5分超』という要件を満たさないため」が67.9%と最多で、「患者への説明が難しい」(27.7%)がこれに続いた。
 外来管理加算を算定する患者数の増減については、昨年と2007年の4−9月を比べ、「大幅に減少」が27.5%、「減少」が37.7%に上った。減少の理由についても、「『おおむね5分超』という要件を満たさないため」が74.3%と最多だった。
 経営への影響では、再診療算定回数に占める外来管理加算の算定回数の比率が、診療所では07年7−9月が63.3%だったのに対して昨年7−9月は48.0%と低下。病院でも55.6%から46.3%に低下している。また、外来管理加算算定回数についても、診療所では24.3%、病院では14.9%の共に減だった。
 日医が算定要件の見直しによる算定回数の減少などの影響額を試算したところ、診療所ではマイナス748億円となり、改定時見通しのマイナス240億円を大幅に上回った。病院についてはマイナス57億円と試算している。
更新:2009/01/14 22:57   キャリアブレイン

厚労省
外来管理加算の意義付けの見直しの影響調査 結果概要(速報)中医協検−1 21.3.18
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0520-4c_0002.pdf
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/dl/s0318-5a.pdf
日医調査アンケート
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20090114_3.pdf
中医協・診療報酬改定結果検証部会「外来管理加算の意義付けの見直しの影響調査」に対する日本医師会の見解2009年4月22日
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20090422_2.pdf


夜間・早朝等加算
1)届出医療機関数(診療所)平成20年 36,881
2)診療所における夜間早朝加算の算定回数は3100万回/年程度である。1点あたり、3億円となる。



整形外科診療所で19時以降まで診療をしている施設(JCOA調査2007年11月)
1)東京、神奈川、埼玉、愛知、三重、大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良福岡等の大都市圏に多く見られる。
2)地方では19時以降診療をしている施設はほとんど見られなかった。



初・再診料について中医協 21.11.6
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1106-9c.pdf
初・再診料について中医協 21.11.6
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb11GS20.nsf/0/5e2cbf25a8d45a49492576660026c025/$FILE/20091106_8shiryou2.pdf
JCOA調査夜間診療に関するアンケート2007/11/19
http://www.jcoa.gr.jp/gozonzi/2007/zikangai/yakan2007.pdf


夜間早朝等加算の科別の算定回数
社会医療診療行為別調査平成20年6月分(診療所)

「回数」は、当該診療行為が実施された1ヶ月間の延べ算定回数である。

科別の比較
 夜間早朝等加算を算定しているのは内科が41%で大部分を占める。ついで多いのは整形外科で14%である。


参考資料
平成20年(2008)社会医療診療行為別調査結果の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa08/index.html
社会医療診療行為別調査平成20年6月分のデータ第12表 医科診療(診療所入院外−1総数)診療科別
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_csvDownload_&fileId=000003305677&releaseCount=2


現在の経営状態
医療の倒産最多09年度上期
 2009年4−9月の今年度上半期に発生した病院・開業医の倒産は、現在の集計方法で過去最悪だった昨年度の上半期(16件)の2倍近い30件だったことが10月13日、帝国データバンクの調査で明らかになった。

M-BAST 速報値からみる平成20年度診療報酬改定の影響
 今改定は勤務医対策に重点が置かれました。つまり、プラス部分というのは、病院に回されたわけです。診療所にとってみれば、一部の診療科を除き、事実上、マイナス改定です。それが医業収益の前年比に現れています。
 今改定の全体の影響として医業収益の前年対比を見ると、診療所では個人が 99.1 %、法人が 97.8 %、病院では個人が 97.8 %、法人が 100.3 %という結果になっています。

整形外科【診療所】
 対前年医業収益は、個人が 100.1 %と前年並み、法人が 98.5 %と減収となっている。個人では、材料費・委託費、給与費、経費が前年並みとなっているが、減価償却費が 107.9 %と増加しているため、対前年経常利益は 98.2 %と減益となっている。法人では、材料費・委託費、給与費の削減努力が見られるが、減収を補填するまでには至っておらず、対前年経常利益が 60.0 %と減益となっている。
この5年間では平成 18 年の医業収益の一時的な増加を除くと、趨勢としては、厳しい経営状態基調にあるものと認識されます。このなかでも、特に留意すべき点は、「損益分岐点医業収益高」が趨勢的に増加傾向にあるということです。即ち、変動費である薬品、材料、委託費などの経費が増加傾向にあるためと思われます。

近年の医療機関の倒産の推移;倒産件数は過去最高を更新中


参考文献
1)中央社会保険医療協議会総会(第147回)平成21年7月29日(水)
平成22年度診療報酬改定について資料(総−3)
http://www.mhlw.go.jp/za/0730/d03/d03-03.pdf
 病院と診療所の再診料の格差是正については、積み残しという認識。また、効率的な医療提供体制の確立を目指し、地域医療の連携を強化すべきだ。
 「選択と集中」の考え方に基づいて、限られた資源の中で病院と診療所の格差をどう考えるのか、その上で救急・産科・小児科等にどう重点化していくかを考えていく必要がある。
前回の改定における病診の配分見直しは切り込みが足りなかったのではないか
2)病院と診療所別にみた診療行為の状況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa08/1-3.html
3)上記は平成20年(2008)社会医療診療行為別調査結果の概況より
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa08/index.html
4)平成20年度 医療費の動向
http://www.mhlw.go.jp/topics/medias/year/08/index.html
5)医療・介護の倒産最多 09年度上期
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2009101402000078.html
6)平成20年度診療報酬改定の影響『 TKC 医業経営指標(M−BAST)』
  厳しさ続く医業環境経営努力が色濃く反映
http://www.clinic.tkcnf.or.jp/b/b03/b0402.html
7)平成20年度診療報酬改定後の医業経営動向速報
http://www.clinic.tkcnf.or.jp/b/b03/b0401.html
8)診療科別の経営動向とその対策(3)【整形外科診療所】
http://www.clinic.tkcnf.or.jp/b/b03/b0400.html
9)第155回中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会資料
10)医療予算について財務省平成21年11月19日
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/h22/iryo.pdf
11)初・再診料について 厚労省 中医協2009/11/16
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1106-9c.pdf
12)初・再診料について 厚労省 中医協2009/1/14
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/dl/s0114-8d_0001.pdf
13)診療報酬改定にむけての日本医師会の見解
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20091111_21.pdf
14)平成20年(2008)社会医療診療行為別調査結果の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa08/index.html
15)医療技術に関する現状の俯瞰と今後の展望
http://www.repix-lab.co.jp/PDF/macroME.pdf
16)診療報酬改定にむけて
―行政刷新会議「事業仕分け」の問題点についてー
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20091202_6.pdf
17)第132回中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会議事録
http://www.mhlw.go.jp/za/0806/d12/d12.txt
18)第134回中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会議事録
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/06/txt/s0603-1.txt
19)再診料についての日本医師会の見解2009/1/6の会見資料
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20100106_2.pdf
 厚生労働省は診療所の再診料を引き下げる方向であると報道されている。医療は切れ目なく提供されなければならず、病院だけでなく、診療所の経営もともに建て直さなければ、地域医療の再生はない。
 わずかな財源ではあるが、日本医師会はあらためて、浅くとも診療報酬を全体的に引き上げること、その上で、病院勤務医対策のために、より多く配分することを主張する。

20)2009-12-17医療関連データの国際比較 −「OECD Health Data 2009」より−
http://www.jmari.med.or.jp/research/summ_wr.php?no=422
 日本では、「基本方針2001」以降、少なくとも2009年まで、日本では医療費が低いにもかかわらず、医療費を抑制するという矛盾した政策がとられてきた。財務当局が医療に関する国際比較データを意図的、かつ部分的に使用してきたことも一因ではないか。
 そこで、今回、「OECD Health Data」の情報を網羅的、経年的にグラフ化して示してみることにした。
 その結果、日本では、第一に、日本では、いつでも、どこでも受診できること、第二に、その結果、疾病が早期に発見されている可能性があること、第三に退院時の治癒率が高くなっている可能性があること、などが示唆された。
 病床数や医療機器保有数の多さは、しばしば医療費高騰の要因として問題視される。しかし、日本の医療費は諸外国と比べて「低い」。病床数の多さなどは、むしろ肯定的要因としてとらえても良いと考えられる。
また、これまで、財政制度等審議会は、日本の病床数の多さ、平均在院日数の長さをばかりを取り上げてきたが、重要なのは、病床数の多さや平均在院日数の長さをもたらす要因、たとえば疾病構造の違いであることも浮びあがった。

21)労働党政権による英国NHS改革はどう進んでいるか?
http://www.jmari.med.or.jp/research/summ_wr.php?no=423
労働党政権は2000 年のNHSプラン以来の改革を継続している。その結果、待機患者数や死亡率の減少という成果が得られている。しかし、最新の2008ー2009 年データでは、部分的に改革路線に陰りが見えるため、今後を注視する必要がある。
NHSへの公的支出は最近10 年間で実質ベースで1.87 倍に拡大している。この増加率はGDP 成長率よりもかなり高くなっている。
NHSの財源は安定的で、約75%を税金から、約20%を国民保険からとなっている。これらの公的資金で全体の約95%の資金を調達している。
国家歳出における医療の位置づけは高い。2009 年度の国家歳出予算では医療は 17.7%を占め、社会保護に次ぐ2 番目の大きさである。歳出実績で見ると、医療への歳出は最近10 年間で1.85 倍となっており突出している。
英国の総医療費の対GDP 比は1997 年の6.6%から2006 年の8.5%へと大きく伸びてきたが、2007 年は8.4%へと0.1 ポイント低下した。

22)所得格差、健康に関係 地域の信頼感も薄れ 日本福祉大調査2010年1月6日
毎日新聞社
◇「病」は所得格差から
 所得格差が大きい地域ほど、地域の絆(きずな)を示す他人への信頼感が低下し、自分の健康状態が悪いと思う人の割合も高くなる--愛知県知多半島の高齢者を対象にした日本福祉大などの大規模調査で、こんな傾向が明らかになった。経済的な格差と住民の結びつきの深さや健康が相互に関係していることを示す結果で、注目されそうだ。
 調査は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京都港区)の市田行信研究員(地域計画)らが日本福祉大健康社会研究センター(名古屋市)などと協力。知多半島の10自治体に住む65歳以上の高齢者約3万4000人を対象に郵送で実施、半数の約1万7000人から回答を得た。1950年時点の自治体で分けた計25地区ごとに、所得格差を示す「ジニ係数」と、地域の絆を示す「他人への信頼感」の程度や、自分の健康状態をどう思うか(主観的健康感)などとの関係を分析した。
 その結果、25地区のジニ係数は0・26-0・41と開きがあった。ジニ係数が0・01高くなり格差が大きくなるごとに、健康状態を「悪い」とする回答が平均0・6%ずつ増える一方「人は信用できる」と他人への信頼感を肯定的に示す回答は平均で1・4%ずつ低下した。  また、他人への信頼感を示す回答が1%上がれば、自分の健康状態を「悪い」とする回答は平均で0・9%ずつ下がることも分かった。健康状態が良いと思う人が多ければ、実際に長生きする人も多いなど、主体的健康感は死亡率に関係することが知られている。
 市田さんは今回の調査結果から「所得格差が拡大すると、地域の絆の低下を通じて住民の健康に悪影響を及ぼす可能性が示された」と分析する。【江口一】
◇ジニ係数
 所得を基に不平等度がどれだけあるかを計算した数字。0-1で表し、0は平等で格差がない状態、1はただ一人に所得が集中している状態を意味する。