医療労働者の実態

−安全でゆきとどいた医療・看護のために―2001年9月12日
日本医療労働組合連合会・政策委員会
提言・医療労働に対する診療報酬上の評価について
劣悪な医療現場の実態
(1) 相次ぐ医療保険制度の改悪で、患者・国民の負担は大幅に増やされており、受診抑制や慢性疾患患者の治療中断など、国民の受療権が侵害され、病人が患者になれない深刻な状況が生まれています。WHOの「2000年版・世界保健報告」によれば、日本の「保健システムの最大到達(可能)度」は10位となっています。健康のいっそうの増進に寄与できる社会資源を有しながら、国民の健康で豊かな暮らしの創造に向けて、それを十分に活用できていない状況です。一方、政府の「総医療費抑制・病院の機能別再編とベッド削減」政策の下で、医療経営者は「利益最優先の経営主義」を強めています。徹底した「合理化」攻撃で、医療労働者の労働はいっそう劣悪になっています。医療事故に象徴されるように、いのちを守る職場でありながら、「安全」が保障できない事態です。「日勤は夜10時過ぎ、準夜は朝方、深夜は昼までになっている」「16時間夜勤だが、忙しくて仮眠もとれない。患者に責任がもてない」「休憩も取れず、立ったまま食事」「半泣き状態で仕事」など、悲痛な声があがっています。

(2) 日本医労連が昨年秋に実施した看護現場実態調査」は、労基法も満足に守られず、自らの健康や生活さえ脅かされる劣悪な労働条件とともに、人員不足・過密労働が患者の看護にも重大な影響を与えている実態を浮きぼりにしました。
@ 20歳代が4割(39.4%)、34歳以下が過半数(52.8%)を占めており、専門職でありながら、非常に若い年齢構成となっています。現在の職場・部署になっての年数では、満2年未満が5割(49.6%)にも達しています。働きつづけられない過酷な労働条件を示すと同時に、様々な生活背景を持った患者のいのちを直接預かる看護という仕事の上からも大きな問題をはらむものです。
A 3交替制の夜勤回数は、看護婦確保法・基本指針に違反する月9日以上が4分の1(24.9%)にも達しました。さらに、サービス残業なしが4割弱(37.6%)に止まったことや、当直制でも日常的に業務があるが4分の3(73.4%)に達したことなど、労基法さえ満足に守られない状況です。

B 母性保護も深刻な実態です。産前に受けた保護措置では、「夜勤・当直免除」は6割(60.0%)に止まり、「夜勤・当直日数の軽減」は2割(20.5%)、「特に措置は受けなかった」が2割(20.5%)にも達しました。妊娠の状況では、「順調」は16.9%と、6人に1人という状況です。「切迫流産」31.9%、「出血」22.6%などどなっています。
C 「患者さんに充分な看護が提供できていますか」では、「できている」はわずか8.2%に止まりました。その理由としては、「人員が少なすぎる」が72.4%、「業務が過密になっている」が71.1%となっており、人員不足と過密な業務で、充分な看護ができていない状況です。「ミスやニアミスを起こしたことがありますか」では、「ある」が93.8%を占め、「ない」は6.2%に止まりました。「医療事故が続発している原因」でも、「医療現場の忙しさ」が特に多く85.0%を占め、「交代制勤務による疲労の蓄積」41.5%、「慢性的人員不足」31.4%などとなっています。
D 「健康である」は29.5%に止まり、7割が健康に不安を感じているという結果となっています。また、「慢性疲労」も8割(79%)に達しています。「こんな仕事もうやめたいと思うこと」では、「なかった」は12.8%しかなく、3分の2(67.6%)が仕事を辞めたいと思っている深刻な実態です。しかも、辞めた後は4割(40.1%)が看護の仕事を離れると回答しています。辞めたい理由は、「仕事が忙しすぎる」56.3%、「仕事の達成感がない」32.5%、「本来の看護ができない」30.5%、「夜勤がつらい」25.7%、「休暇がとれない」22.6%となっています。看護の仕事にやりがいを感じつつも、仕事に追い立てられて日々の充実感はうすく、燃え尽きている状況を示すものです。

(3) この背景には、日本の極端に少ない人員配置があることは明らかです。同時に、増員が抑制されているにもかかわらず、徹底した「合理化」で、入院日数短縮やベッド稼働率アップが推進されていることが、過重労働に拍車をかけています。
日本医労連が2000年11月に実施した「
看護婦110番」には、「神経内科・小児科・産婦人科・眼科・精神科・心療内科の7科混合病棟、このような病棟があっていいのか」「月6〜7回の日勤・深夜は特に過酷。20時前後、遅い時は22時ごろ帰宅し、家で1〜2時間仮眠するだけで、ふたたび24時からの出勤。仮眠はほとんど取れず、翌日の12時まで勤務することが多い。寝不足によるミスを起こさない方が不思議なほど」など、人員抑制の下で仕事がますます過密になり、看護婦が疲れ果てている実態や医療事故への不安などが赤裸々に訴えられました。

(4) 経営効率最優先、人件費抑制の経営戦略の下で、看護婦ばかりでなく、医療労働者全体がいっそう過酷な労働条件下に置かれています。例えば、医療研委員会「薬と社会を考える」分科会運営委員会が実施した実態調査でも、薬剤師の1ヶ月の平均残業時間は17.3時間、代休が取れない23%、定時の休憩が取れない29%という状況です。また、全労連が実施した「2001年働くみんなの要求アンケート」では、サービス残業なしは、全労連全体の45.3%に対して、日本医労連は32.5%に止まっています。厚生労働省の調査でも、労基法違反は、依然として医療業が最も多いという実態です。
政府がおしすすめる「民間活力の活用」や「規制緩和」は、医療分野にも大きな影響を及ぼしており、給食や検査など下請け・業務委託が急速に拡大されています。1999年医療施設調査では、感染性廃棄物処理96.4%、保守点検業務84.3%、清掃75.6%、給食39.2%、滅菌13.2%などとなっています。介護関係では特に、登録ヘルパーなど不安定雇用が大半を占めており、雇用形態も大きく変質されようとしています。雇用形態が違う労働者が混在し、はたらく者同士の仲間意識、チームワークを育むことを困難にするとともに、医療機関の医療に対する責任を曖昧にし、医療の質が問われるようになっています。医療経済雑誌の調査(全国1500病院)では、直営に戻す病院があげた理由の第1は、「業者スタッフの質の悪さ」となっています。患者の人権と安全性を高める上からも、チーム医療確立の視点からも、現在の「効率化」を最優先にした医療のあり方を改めることが必要です。