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日医と財務省の見解の違い鮮明に 医療経済フォーラムジャパン・シンポ:(2003-10-31)
日医の坪井栄孝会長は、一般会計と特別会計を合わせた国家予算全体で見れば、医療費として直接国民に給付されているのはそのうち5%、介護は1%に過ぎないと指摘。国民が健康で安心して働ける社会を支える「社会共通資本」である医療・介護に国家予算を重点配分する必要性を説いた。日医総研(日医のシンクタンク)の試算によると、2017年の医療・介護費は51・2兆円。このうち国と地方による公費負担は21・6兆円で、国庫負担は00年度時点に比べて7・2兆円増えることになる。
坪井会長はこの国庫負担増7・2兆円を
(1)国家公務員の人件費や特殊法人への補助金、経費の削減など、一般会計・特別会計のリストラを実施(財政効果12・5兆円)
(2)政府が保有する米国債(約50兆円)の売却
(3)(1)、(2)の結果、景気が回復したことによる税収増
−を段階的に進めて調達する方法論を提示。増税をしないでも医療・介護費財源は確保できると強調した。
安全な医療、癒しの医療を患者に提供していくには医療従事者数を増やして医療現場に「ゆとり」を持たせる必要があるとの認識も表明。この人員増分の人件費、物件費として8兆円、さらに医療保険の適用にならない先端医療が必要になる“まさかの時”に備えて国民1人ひとりが自分で備蓄しておく財源として約12兆円(この部分は公的保険の枠外ですべて自由診療)を51・2兆円に上乗せした、総額71兆円が本来必要な医療・介護費だと話した。
一方、財務省主計局の向井治紀主計官は、「税収では一般会計の歳入の半分しか賄えておらず半分近くは借金。04年は公債が半分を超える状況にあり、歳出の入り繰りを言ってもしょうがない」と主張。公債償還分を除いた財政の収支バランスを均衡させることが最優先課題だとした。
公共事業費や政府の義務的経費を大幅に削減するなかにあっても社会保障関係予算は高齢者の増加にともなう予算増を認めており、「社会保障全体の伸びを抑制しながら、今までも他の予算を削って社会保障に回すことをやってきた」とも指摘。しかし、社会保障の伸びが経済の伸びを上回り、税収、保険料収入が落ち込んでいる現状では、ほかのところの予算を削って持ってきたところで高齢化による医療・介護費増を完全にカバーすることはできないとし、「保険料率や税を上げるしか方法はない」と話した。
向井主計官はまた、「これからの社会保障は高齢者だからという見方ではなく稼得能力という切り口でやっていくべきではないか」と提案。「高齢者は1割負担、若者は3割負担とするのではなく、高齢者も若者も同じにしたうえで稼得能力に応じて保険料、自己負担に差をつけてはどうか」と述べた。
社会保障制度の軋みが経済失速の原因
松原東大大学院教授(2003-10-27)
東京大学大学院総合文化研究科教授の松原隆一郎氏は25日、日本医師会主催の医療政策シンポジウムで、社会保障負担の増加が国民の不安をあおり、経済不況に拍車をかけていると分析。小泉内閣の構造改革に異議を唱えた。下甑村国保直営手打診療所で離島医療に従事している瀬戸上健二郎氏(同診療所所長)は、離島住民の医療に対するニーズは大都市住民並みに多様化しているとし、専門医療が提供できる診療所の整備や、医師が積極的に生涯教育に取り組むことを今後の課題にあげた。
松原氏は、医療費自己負担の大幅引き上げがあった97年頃から(1)消費性向(所得に占める消費の割合:景気が低迷すると上昇する)と消費者心理がともに低下する(2)高齢者の貯蓄率が上昇する−という経済学的にみれば「異例」の事態が起きていることを指摘。日銀の調査によると、家計支出を減らしている理由の上位を「仕事と収入への不安」、「社会保障負担引き上げの不安」が占めており、社会保障制度の「軋み」が経済の失速を招いていると述べた。
小泉内閣は「効率化」を旗印に株式会社の医療への参入や、医療費の抑制を提案しているが、松原氏は「資源がいくら効率的に配分されていても、それが社会に不安をまきちらすことになると結果的に経済の成長が望めなくなる」と問題視。一方で「医療は社会の基盤をつくる不安の解消のためのリスク管理という意味で公共性をもっている」とも述べ、経済を活性化するためにも「公共財」として国が充実・強化していくべきだとの認識を示した。
また、コンビニエンスストアのような消費者のニーズを優先した商品管理とサービスに慣れた患者は、医師の言動や行動など、医療技術以外の面も含めて医療サービスを評価していると説明。患者の不満や要求などの分析が必要だとも話した。
瀬戸上氏は、離島医療の課題が医師の不足という「量」の確保から、多様化するニーズへの対応へという「質」の確保へと移っていると話した。そのうえで、(1)生涯教育などを通じた医師のレベルアップ(2)救急医療体制の整備(3)CTスキャンなどを備えた「重装備診療所」の確保‐などが今後の離島医療では不可欠とした。医学教育課程に離島での実習を盛り込むことや、国の支援策を充実させる必要性も指摘した。
【解説】特別会計に構造改革のメスを(2003-04-2410:48:01)
日本の総国家予算は347兆円に上り、このうち一般会計は予算全体の4分の1にも満たないことが自民党の行政改革推進本部がこのほど作成した「平成14年度(2002年度)各府省局別予算一覧」から明らかになった。
景気低迷による税収の伸び悩みで、社会保障給付費の圧縮をはじめとする歳出の削減が課題とされているが、これはあくまで一般会計での話。今回の資料は、その数倍に上る財源が国民の目に触れる機会が少ない、特別会計にあることを意味している。
行革本部の資料は、一般会計と特別会計を合算して国家予算全体の姿を明らかにしたもの。一般会計から特別会計への繰り入れなどの重複部分は除外されている。それによると2002年度の総国家予算は347兆円。内訳は、一般会計80兆円(構成比23・2%)、特別会計266兆円(76・7%)などとなっている。省庁別でみると、もっとも多いのが財務省の148兆円(42・7%)。ついで総務省101兆円(29・1%)、厚生労働省64兆円(18・6%)となり、この3省庁で全体の9割を占める。
年末の予算編成では、毎年ほぼ例外なく医療を中心とする社会保障給付費の削減が論点になる。だが、これはあくまで一般会計の枠内での議論だ。行革推進本部の資料によれば、一般・特別会計を合算した厚労省予算64兆円のうち、社会保障給付関連は60兆円。注目度が高いわりに、総予算に占める割合は17%程度に過ぎない。
ちなみに、しばしば内閣府の審議会が引き合いに出す米国では、年金と医療の予算合計額の総国家予算に占める割合が4割に上る。これに比べれば日本の社会保障給付関連予算はきわめて低い水準にあることがわかる。
2002年度の予算編成では、社会保障関係費における国庫負担を2800億円削減するという政府目標を達成するため、医療機関に支払われる診療報酬の引き下げのほか、高齢者の医療費自己負担引き上げなどの制度改正が行われた。国民と医療機関が小泉首相のいう「痛み」を甘んじて受けたわけだ。ところが国はどうなのか。
特別会計の中には、特殊法人への補助金、管理コストなども含まれており、これらを単純に10%カットしただけで26兆円の財源が出てくるが、全くの手付かず。構造改革の旗を掲げるのであれば、小泉首相には医療給付や失業給付の切り下げといった「痛み」を国民にお願いする前に、ここに「改革のメス」を入れてもらいたいものである。
国の予算全体を視野に入れた財政論議を喚起
日医総研報告書(2003-07-0120:28:08)
日本の国家予算は2003年度予算ベースで232・6兆円に上り、社会保障給付や義務教育負担として国民に直接還元されているのはこのうちの60.4兆円にすぎない−。日本医師会のシンクタンクである日医総研は1日、報告書「入門 国家予算の読み方−社会保障費を中心に−」(研究者=前田由美子日医総研主席研究員)をまとめた。一般に日本の国家予算は80兆円程度と認識されているが、これは一般会計に限った話。一般会計の数倍に上る金が特別会計にあり、その一部が官僚の天下り先となる特殊法人などへ補助金として流れていることを明らかにした。補助金をカットし、国家公務員の人件費と経費も民間企業のリストラ並みにカットすれば、歳出を12・5兆円削減できる可能性があると指摘。「財政改革が国民への痛みのしわ寄せをするのではなく本当の無駄を削いでいくよう願う」としている。
千数百ページに及ぶ財務省の予算書の科目をひとつひとつ仕分けし、国家予算の全体像とその使い道を明らかにした。2003年度予算における歳出(支出)は一般会計81・8兆円、特別会計199・7兆円。これらを連結して重複部分を除いた国家予算の歳出合計は232・6兆円となる。このうち、社会保障給付や義務教育負担として国民のために使われているのは60・4兆円。残りは国債などの債務償還、地方交付税交付金、国家公務員の人件費や経費などに使われているが、歳出合計の7%にあたる15・3兆円は官僚の天下り先の特殊法人、独立行政法人、公益団体に補助金として流出している。
歳出合計のうち社会保障費は60・9兆円で、57・3兆円は医療、介護、年金などの給付費として国民に直接給付されている。残り2・4兆円は人件費と経費、1・2兆円は補助金となっている。
政府は、税収の伸び悩みなどで国家財政は逼迫しており、医療財源を捻出するのは困難として保険料への総報酬制導入、患者自己負担の引き上げなどに踏み切った経緯がある。報告書は、従来の医療財源論議が一般会計(2003年度予算ベースの社会保障費19・0兆円)にしか焦点をあてていなかったことを問題視。特別会計を含む国家予算全体に目を向ける必要性を示した。そのうえで民間企業のリストラを参考に(1)特殊法人や独立行政法人へ流れていると確定できる補助金等3・1兆円を廃止(2)自治体や公益団体などへ間接的に流れる補助金12・3兆円を50%カット(3)国家公務員の人件費7・6兆円を5%カット(4)国家公務員の経費・施設費5・8兆円を50%カット−を行えば歳出を12・5兆円削減する余地があると試算。「現状の歳入規模でも69・8兆円(社会保障給付費57・3兆円+12・5兆円)までの社会保障費を賄える可能性がある」と指摘した。報告書は厚生年金と国民年金の繰越利益153兆円を社会保障費に充てることも提案。年金積立金の一部は、貸付け先の自治体や特殊法人が債務超過に陥って不良債権化していることから、運用益を期待するよりも、「財務省の責任において健全化を図り、必要なときに社会保障給付のために取り崩されるべきだ」と述べた。
日本医師会の青柳俊副会長は、「現在の構造改革は財務省のためのものであり、三方一両の一方が欠けたまま進んでいることに非常に危機感をもっている。一般会計81兆円の世界ではなく特別会計を含めた233兆円という予算を国が動かしているという前提で議論する必要がある」と話している。
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