モバイル災害医療情報ネットワークの構築

本田整形外科クリニック 本田忠

 2008年6月19日


 携帯電話による地域災害ネットワークを構築する。メーリングリストを基本として、補助として医師会サイトも利用する。
1)携帯電話メールを基本とした災害メーリングリストの構築。
 通常のメーリングリストソフトで構築できます。携帯メールアドレスと、通常のPCのメールアドレスは混在可です。
2)医師会ホームページ上に携帯専用災害HPを構築する。
 災害時は、メーリングリストの補助として、HPでは記録性(保持性)の必要性の高い重要事項の伝達に使用する。HP上に伝言掲示板ができれば、なおよいですが、画面が小さいので大量になれば有効利用しずらいと思われます。


各論

災害時、携帯で入手したい情報
 各種アンケートで、災害時に欲しい情報は、安否情報が最も多く、続いて被害状況、避難場所、今後の見通し、交通情報、天候情報などです。
モバイル情報端末としての携帯電話
 携帯電話は、モバイル情報端末として高機能になってきています。災害時にも活用されています。携帯でテレビやラジオを活用したり、GPSで家族の居場所が分かったとか、携帯電話のカメラのライトがとても重宝したという声もあります。一方災害時のトラブルとして、電波障害、回線混雑、電池切れなどが指摘されています。


携帯電話と災害
 災害時は携帯電話もいろいろ日常と違った挙動をします。
1)中継局の停電:サービス中断は災害直後ではなく、数時間後に起きる。
 基地局が物理的に破壊されたらダメですが、災害によって停電が起きても、携帯電話の基地局は無停電電源装置により動きます。ただし無停電電源装置は2-3時間しか持ちません。その後はサービス停止(圏外)となります。「圏外」なら、電源を切ったほうが長持ちします。避難所か携帯電話のショップで充電サービスが始まります。災害に備えて予備電池を確保すべきです。無料でもらえるサービスもあります。
2)利用制限;輻輳対策は固定電話、携帯電話を問わず自動的に行われます。
 通話が集中することで、電話が繋がりにくくなる状態を「輻輳」と言いますが、1995年の阪神・淡路大震災では、輻輳が5日間も続いたそうです。現在では、ある一定以上の通話が発生すると、「自動的」に、電話の利用を制限する仕組みになっています。固定電話だけでなく、残念ながら携帯電話も、同様に発信規制がかかります。
3)音声による災害用伝言ダイヤル「171」(イナイと覚えましょう)
 災害があった地域のために、NTTが随時開始するサービスです。輻輳対策が行われても優先的に通話できます。携帯よりも公衆電話からのほうが、かかり安いようです。
4)インターネット(メールやHP)は輻輳対策にひっかかりづらい。
 中継局の自働輻輳対策により、電話による音声連絡はすぐ取れなくなります。しかし現在、主要な携帯電話サービスでは、音声電話とパケット通信は分離されています。対応基地局ではデータと音声を分離して制御できるようになりました。そのため通常の音声電話で規制がかかっても、メールやサイトは使えることも多いのです。停電により完全にサービス中断になってしまった場合はダメですが、音声での発信規制がかかっている場合は、インターネットや携帯サイトを有効利用しましょう。
5)携帯サイトの災害伝言板
 各携帯電話会社が用意しています。メッセージを音声ではなく文字で入力することになります。災害伝言板は、各携帯電話会社のトップページに表示されます。災害地にいる人は、無停電電源装置が動いている1〜2時間以内に災害伝言板に安否を登録しておけばよいでしょう。その後に携帯電話がストップしても、伝言板での安否情報は残ります。


携帯電話によるモバイル災害情報ネットワーク

 モバイル情報端末として高機能化してきた、携帯電話を基本とした、地域の医療機関同士の連絡網の構築が求められます。災害時のネットワークは「日常的によく利用しているものを使う」ことが基本となります。日常的でないものはハードでも、ソフトでも、結局有効利用されません。記憶に残っていないもの、使い慣れていないものは、緊急時には実際の所なかなか利用しづらいと思われます。


サーバの場所は同一地区以外が望ましい
 サーバが災害と同じ地区内にあれば、停電等の影響を受けることになります。またPCの無停電電源装置は、機能するのは、せいぜい20分程度です。あくまで瞬断対策用でしかありません。よってサーバは原則として別地域にあることが望ましいことになります。地震は局地的ですから、コストを考えれば、県医師会サーバ内に構築するとか、年間数万円程度の機能の充実した(CGIなどが使える)海外のレンタルサーバの利用なども考慮されます。


携帯メールを基本としたメーリングリストの構築
 掲示板やHP、SNS等では、自分で「能動的」に特定のサイトを見に行く必要があります。いわゆるプル型サイトです。一方メールは電源が入ればユーザが自動的に閲覧できます。メールの方がより簡便です。よって、ネットワークは、各種サイトよりもメールを情報伝達の基本とするシステムを構築する必要があります。メーリングリストは無料のサービスが多くあります。携帯電話専用に構築しても良いし、通常のMLを使っても良いと思われます。また携帯電話メールアドレスと通常のPCメールアドレスと混在することも可能です。
ただし携帯メールは以下の制限があります。

1)絵文字は無効となる
2)メール本文の文字数制限:携帯メールサービスによって内容が異なります。現在は5000字を越える文字数でも、携帯電話で流すことは可能な様ですが、一回の文字数を250字以下程度にするほうが、読み安いと思われます。
3)添付ファイルをサポートしていない場合も多い。

 よって混在するにしても、メーリングリストは、通常用と災害専用MLに分けたほうが良いと思われます。またときどき使用してメールアドレスの習知とエラー確認などをしておく必要もあります。
a)携帯電話専用のメーリングリスト:http://www.kt.rim.or.jp/~atsato/ml/basic/keitaiml.html
b)各種メーリングリスト開設サービスリスト:http://www.kt.rim.or.jp/~atsato/ml/mlprov.html


ホームページ等の利用
1)携帯専用のホームページを利用する。
 携帯電話からの利用は直接URLを入力する。あるいは携帯電話のカメラでQRコードよりURLを読み取る方法となります。普段から医師会の携帯用HPのURLを覚えておく必要があります。
八戸市医師会携帯版ホームページ:http://jns2.netfarm.ne.jp/~ab005778/1/i/

2)通常のホームページを利用する。フルブラウザソフトの利用
 携帯の画面が小さいので若干みずらいですが、フルブラウザソフトのたとえばJigブラウザを使えば、携帯電話から、一般のホームページを閲覧できます。
a)八戸市医師会ホームページ:http://www.hachinohe.aomori.med.or.jp/index.html
b)Jigブラウザソフト(携帯用フルブラウザソフト):http://bf.jig.jp/pc/
c)携帯電話からパソコン用ホームページを閲覧する方法:http://homepage1.nifty.com/urawaza/1keitai/4keitai-all/140040.htm

3)mixiなどのSNSの利用
 現在はブログなどは携帯電話からの方がアクセスが多いようです。様々な業者で行われています。たとえば、代表的なSNSサービスであるmixiモバイルなどでも専用サイトを無料で構築できます。あらかじめ作成して、習知しておく必要があります。ただこれも普段から利用していないと、使いこなせないと思います。
a)mixiモバイル:http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/6733.html
b)携帯電話専用SNSを比較評価してみる:http://yom.b-log.in/article/31711174.html


最後に
 災害は普段からの準備が肝要です。幸いモバイル情報端末である携帯電話が高機能となってきています。情報過疎になる危険性は減ってきています。上手にネットワークを利用して危機に備えましょう。


参考文献

総論
携帯メール
http://e-mail.pc-beginner.net/mail/mobile_mail.html
巨大地震に備える:災害時に携帯電話を使う5つのポイント
http://www.yomiuri.co.jp/net/security/goshinjyutsu/20080606nt04.htm
携帯電話電話の災害対策
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070829/280602/
地震・災害時の電話のかけ方
http://allabout.co.jp/computer/telecomfees/closeup/CU20041025A/
文字数と行数について
http://www003.upp.so-net.ne.jp/hat/imail/sec07.html

災害伝言サービス
災害時等における通信確保に向けた携帯電話事業者の取組
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/pdf/041222_2_2.pdf
災害用伝言板サービス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%BD%E5%AE%B3%E7%94%A8%E4%BC%9D%E8%A8%80%E6%9D%BF%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9
災害用伝言板サービス au by KDDI
http://www.au.kddi.com/notice/saigai_dengon/index.html
NTTドコモの取り組み
http://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/info/news_release/report/050819.pdf
iモード災害用伝言板サービスNTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/info/disaster/

一般的なシステム
横須賀市災害情報通信ネットワークシステムについて
http://www.bousai.go.jp/jishin/johokyoyu/8/08-03happyo01-yokosukashi.pdf
他地域等の災害時における情報通信の活用に関する考え方
http://www.kagawa-net.org/zaidan/houkoku/saigai/sai_g3s.htm