放射線の損害リスク


ver2011/4/22
since:2011/3/29本田整形外科クリニック本田忠


損害リスクの計算方法:自分の現時点の被爆による損害リスクを判断できます
Y=0.06X
Y:損害リスク
X;(単位SV)mSVであれば1/1000をかける。マイクロSvであれば10の6乗。できればこの2週間の蓄積線量が良い。
ICRP2007年勧告の損害リスク係数:合計では0.06になっています。
係数0.06について
 がんの影響0.055 /Sv(Sv-1)、遺伝的影響は0.002 /Sv、合わせて0.057 /Svですが、合計は0.06とされています。


実際の計算;津田敏秀教授:岡山大学大学院 環境学研究科(疫学、環境疫学、臨床疫学等)より引用
  福島では連日150 μSv/hなどという数字が報道されています。これですと、数時間で一般人の年間許容量とされている1mSvを超えてしまうのではないでしょうか。たとえばこの数値は、がんなどのリスクをどの程度高めるのでしょうか。
 150μSvは0.15mSvですね。従って、150μSv が24時間続き、これが1年間続いたとして、屋外にいてフルに被爆したと仮定して、年間1.314Svの被爆です。そしてICRP2007年勧告で計算することができます。0.15×24×365×0.055(/Sv)÷1000=0.072です。7.2%程度だけリスクの増加があることになります。しかし、150μSvはその日の最高値のはずで、スパイク状に高まった値と思います。
そうすると150μSv が24時間続くという仮定は相当高めということになります。要するに、これまでの被曝量の累積量(積分値)を示してもらう必要があります。
 ただ、もし150μSv が24時間続き、これが14日(2週間)続くだけでも、50.4mSvとなり、労働安全衛生法電離放射線障害防止規則で定めた基準である年間50mSvを超えてしまいます。また妊娠可能な女性労働者の3ヶ月5mSvも超えます(妊婦にはもっと厳しい)。ましてやICRP2007に定められた公衆被爆年間1mSvは軽く超えてしまいます。今回の状況は即座には解決しそうになく、状況により余裕はそれほどないと思います。


全国のモニタリングポストの被ばく量のデータ
 以下で見つけることができます。残念ながらこの2週間の蓄積にはなっていないところも多い。
都道府県別環境放射能水準調査結果:文科省
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1303723.htm
モニタリングポストマップ
http://maps.google.co.jp/maps/ms?hl=ja&ie=UTF8&brcurrent=3,0x34674e0fd77f192f:0xf54275d47c665244,0&msa=0&msid=208563616382231148377.00049e573a435697c55e5&ll=39.13006,140.229492&spn=17.158657,39.111328&z=5
「茨城県北と福島県いわき市の放射線量の状況」
http://eq201103.blogspot.com/2011/03/radiation-monitor-data-snapshot-at.html


具体的なリスク評価
津田敏秀(つだ・としひで)教授:岡山大学大学院 環境学研究科(疫学、環境疫学、臨床疫学等)
ICRP2007年勧告、がん影響0.055 /Sv(Sv-1)、遺伝的影響では0.002 /Sv、合わせて0.057 /Svの損害リスク係数を、曝露人口に掛け合わせて、例えば近藤先生はこれに100万人をかけて、100で割って(10mSv÷1Sv=100)、約500人(厳密には550人)というがんの数字を出しておられるわけです。従いまして、100万人が10mSvに被曝したと仮定して自分がその中に入っているとして、問題は自分がこの550人の側に入るか、99万9450人の側に入るかです。前者の側に入ると思える人は少ないでしょう。でも誰かが入るのでしょう(ただし全て仮定上の話です)。
 一方、日本では年間約35万人はがんで死亡しています。ここで35万人ががんで死に日本の人口を1億2000万人とすると、100万人中2917人ががんで死亡していることになります。上記の550人は被曝してからの累積死亡数ですので、がんによる死亡期間の幅を約30年としますと、一年あたり18人になります。従いまして、一年間に2917人対18人になり、これは18人が2917人に埋もれてしまい実際観察できそうにありません。だから「がんによる死亡の増加はなかった」と言われそうですが、厳密に言うと「がんによる死亡の増加は観察できなかった」となるのです。10mSvのレベルでさえ国が言う「ただちに健康障害を生じるようなことはない」という言い方もできるかもしれません。
 タバコを吸っている人はこのレベルを心配するよりタバコを止めた方がずっと発がん確率を下げることが期待できます。このあたりは中西先生の本などを見てもらっても分かるでしょう。能動喫煙だけでなく、避難所での受動喫煙も重大な問題ですので、避難所の分煙や禁煙状況も監視する必要があります。
以上引用終了

外部被ばくはあびないに越したことはない
 安全係数の一律基準は無理があります。なぜならしきい値=これ以下なら安全という数字はない。リスクは被ばく量に応じてY=0.06X(単位SV)で直線的に増加していきます。
実際的なしきい値は100mSV(一回でも、1年蓄積でも)
 100mSV以下だから安全ではない。それ以下でもリスクはある。問題がない=必ずしも安全を意味しない。一定のリスクがある。
リスクは総合的かつ個別に考えざるをえない
 かくて問題は各位がそれぞれ被ばくリスクをどこまで許容するのかということになります。それは人それぞれでもあります。
 リスクをゼロにするなら距離を稼ぐ。許容するなら留まる。リスクは少ないに越したことはないが仕事など諸般の事情で考えざるを得ないでしょう。幸い100mSV(一回、一年蓄積いずれでも)以下でのガン確率は低い。線量が低ければ低いほどリスクは下がることにはなります。
内部被ばくについて
 軽いセシウムなどの到達距離はγ線などとは比較にならないくらい広範な範囲となる。風向きや雨などでまだらとなる。吸入やら飲食物で体内に入れば発生源が体内にあるわけであるから放射線の距離の二乗減衰は期待されない。かくて体内から排泄されるまで被ばくし続ける。よって低線量でもリスクは上がる。ベクレルから核種により調整係数をかけて、シーベルト換算してから、上記の一次式で同じくリスク換算できます。


確定的影響と確率的影響
被ばく量に比例して、障害は直線的に増加していく。100mSv以下がいきなり被害がゼロなどということはありえない。100mSv以上は疫学調査で被害は確定している。100mSv以下は疫学調査では、残念ながら(幸い実例が少ない)明確に出ないのでモデルとされているが広く認められている。被害が確率的にあるということになります。


しきい値仮説について。
 上記の考え方は、LNTモデルによる「確率的影響」について述べたものです。しかし「確率的影響」の評価は、専門家の間で必ずしも合意を得ていません。「しきい値仮説」といって、「確定的影響を示す、100mSv/年」以下は確率的影響はない。安全であるという考え方も有力です。この考え方にのっとれば、「100mSv/年以下の被爆は心配ありません。」一方、いまだ「現在のICRP勧告にLNTmodelは採用されています」ので、上記の文はこのLNTmodelで記載しています。しきい値があるのかないのかは今後の疫学データの蓄積によると思われます。とりあえずLNTmodelは10−100mSv/年の間は疫学データと一致しているようです。10mSV以下は自然放射線のバックグラウンドに隠れてよくわからないとされています。超低線量には使えない。

 また、今後「ICRP基準」でどちらが採用されるにしろ、「しきい値仮説」、「しきい値なし」LNTmodel、いずれにしろ、安全係数としての「ICRP線量基準に大きな変更はない」と思われます。100mSv/年以下が安全か安全でないかという解釈だけが異なるということになります。


損害リスク係数ICRP2007年勧告
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrt/63/11/1320/_pdf/-char/ja/
リスクコミュニケーションの前提議論:津田敏秀・岡山大教授
http://smc-japan.sakura.ne.jp/?p=1382
放射線による内部被ばくについて:津田敏秀・岡山大教授On 2011年3月21日
http://smc-japan.sakura.ne.jp/?p=1310
内部被ばくに関する線量換算係数
http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html


個人線量計
 アロカのように、リアルタイム測定できてアラーム機能のあるのが良いようです。実際は青森県緊急被ばく医療マニュアルに乗っ取り行われる。原燃と個別契約している病院には備品であるようです。
個人線量計
アロカ
http://www.aloka.co.jp/products/radiation/h-k.html
放射線防護用設備・機器ガイド−2010/2011年版− 個人線量計一覧
http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,13904,108,143,html


汚染や被ばくした患者の診察
http://www.iryokagaku.co.jp/frame/03-honwosagasu/shuyoumokuji-860033299/ouyou3sho45-49.pdf
医療機関等における放射線緊急モニタリング対応マニュアル
http://www.nirs.go.jp/data/pdf/manual.pdf
青森県3月16日
福島県から青森県に来られた方で放射線による健康影響に不安のある方に対する相談窓口の設置等について
http://www.pref.aomori.lg.jp.cache.yimg.jp/release/2010/33548.html
青森県の現在の線量
http://www.aomori-genshiryoku.com/

システム
青森県緊急被ばく医療マニュアル(平成22年3月修正)
http://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/iryo/files/22hibaku-iryo-honpen.pdf
平成17年9月3日(土)青森市文化会館第9回放射線事故医療研究会
http://jammra.org/act/reports/r013.pdf
あおもり労災病院の訓練
http://www.jsomt.jp/journal/pdf/058010015.pdf
被ばく事故の対応確認 原燃と八戸市民病院(2009/06/18)
http://cgi.daily-tohoku.co.jp/cgi-bin/tiiki_tokuho/kakunen/news/news2009/kn090618d.htm
06年2月に原燃と「放射性物質による汚染に伴う傷病者の医療に関する覚書」を締結している。