地域における医療福祉複合情報ネットワーク
2002/11/13本田整形外科クリニック 本田忠
はじめに
高齢化社会を迎えるに当たって、医療機関の機能分化、健診による早期発見と生活指導、家庭訪問による保健指導と訪問看護など、地域や家庭を中心とした総合的な、医療・看護・保健の連携が進みつつあります。また公的介護保険が2000年4月1日に開始されました。その結果、多種多様なサービス機関が参入してきております。
医療費の高騰に対する対策:医療の合理化と効率化
1)医療制度改革:持続可能な医療制度を作る。
2)介護保険制度:医療費の抑制という大きな目的があった。
3)地域保健 :予防医学、健診による医療費の抑制
ソリューションのひとつとして、医療福祉複合情報ネットワークを構築すべきと考えます。
医療制度の現状
高齢化社会:2030年で高齢化率30%となる。
医療費増加:高齢化と技術の進歩
低経済成長:労働力人口の減少
持続可能な医療制度の構築
地域医療情報ネットワークの現状
インフラとしてのホームページやメーリングリストは、すでに日医、県医(100%)、郡市医師会ネットワーク(90%)に達している。しかし、残念ながらまだ内容は乏しい。今後は以下のようなことが望まれる。
1)広域化 :二次医療圏単位で構築することで、患者さんの動きに合わせる。
2)情報集積:より情報集積を図る。
3)施設のIT化:電子保険証、電子レセプト請求、ORCA、電子カルテなど、データの標準化、デジタル化を図る必要がある。
介護保険の現状
介護保険の種類
介護保険の現状 2002年4月統計(厚労省)
受給者数は240万人であり、居宅サービスは173万人で施設サービスは68万人に達している。

内訳
居宅サービス受給者
訪問看護 :22万人
訪問リハビリテーション :1万8千人
通所リハビリテーション :35万人
介護状態
介護保険の問題
制度的には一次判定の問題、医療との関係や、施設数の不足、実質サービス低下、患者負担増など数多くの問題をはらんでいます。民活と福祉により医療のコスト削減を図り、医療の市場化と、医療の範囲の制限がより明確になったといえます。今までの医療では専門家同士の単なる分業でしたが、いろいろなサービス機関との協業化した形で、トータルなサービスを提供していく形態になりました。専門職の不足(人材の流動化)や、医療機関も多種多様な営利企業と手を組んでいく必要が出てきています。また、老人患者の比率が高い中小病院を中心に、患者の囲い込みのため、医療・介護の両分野にわたって複合経営する医療法人が増加しつつあります。
介護保険の特徴
1)医療・福祉両面からの効率的なサービス提供が必要
2)多様な実施主体
実施主体は市町村、社会福祉法人、社会福祉協議会、医療法人、民間営利企業等など
3)施設間の連携とケア・マネジメント
個人と社会の双方にとって最適なサービスの組み合わせの決定と、各自の状態変化に応じたサービス内容の再検討が継続して行われる
介護の流れ
介護における情報の性質
1)情報の非対称性
サービス利用者にとっては情報取得窓口は、市町村窓口や介護支援事業者、医療機関におけるかかりつけ医に限定されることになります。利用者にとっては情報をえる場所は限定されます。いわば情報の非対称が起こっているわけです。
2)顧客情報の重要性
介護保険においては、利用者がサービス認定を市町村に申請した時に迅速に対応することが、利用者獲得の主な方法となります。顧客の囲い込み効果が大きいことになります。特にケアマネージャと、かかりつけ医の存在が患者獲得と選別に重要な役割を担うことになります。
3)個人情報保護
介護保険では顧客情報である患者名簿が最も貴重な財産であり、セキュリテイの問題が発生します。ICカード利用を前提とするのが妥当です。
3−1)情報公開法2001年4月1日
たとえば医療・福祉関係では介護認定の決定過程・認定の公正性等、会議そのものが要求があれば開示されます。一方個人情報は不開示情報として、厳しく制限されます。さらに、守秘義務違反には罰則を課されます。
3−2)医師の守秘義務
患者情報は医師に対しては医師法により守秘義務が課せられています。
地域医療福祉複合ネットワーク
情報はそれぞれの機関で収集を行うわけですが、医師会等で情報の集中化を図り、情報統合機能・情報選別機能の役割を持たせることによって、医療機関と介護サービス提供機関の情報の分断を防ぐことができます。サービスメニューの充実や人材育成と同時に、サービスの安全性の確保と効率的運用のための情報システムです。
A)在宅ネットワークの基本条件
1)個人情報の扱い
患者の情報は、患者の同意があった方のみが参照する。患者のICカードと介護事業者のカードがそろってはじめてかかりつけ医の情報を見ることができるようにする。
2)情報を集中化させる
高齢者が対象であることから、ハイリスクな患者が多い。緊急時に、情報の集中化を図っておいたほうが、迅速な対応が実現できる。
3)情報を分散させる
これは現在の頼診形態そのままです。問題が起こったときに、診療情報書を書き、患者さんに持たせる。同時にネットでも相手に流す。画像も流す。
B)在宅医療情報ネットワークの構築
1)施設情報
2次医療圏における、各介護や医療施設の情報の一元化を図る必要があります。具体的には、サービス事業者の「サービスの種類」「サービス提供の可否(空き情報)」を一体的・包括的にケアマネジャーや住民へリアルタイムで情報提供する情報システムも必要となる。
2)関係者の連絡網
関係者間の連絡網も構築する。
3)在宅ネットワークの事例
その必要度は宮城県でのアンケートをみれば、市町村では、福祉情報サービス(78.3%)、各種施設概要情報(66.7%)、在宅ケア情報(58.3%)のような順になり、社会福祉施設では、福祉サービス情報システム(94.9%)、行政の通達情報(93.8%)、救急医療情報システム(86.7%)などとなっている。また医療機関では、救急医療情報システム(48.5%)、医師会等連絡情報システム(41.5%)、医薬品情報システム(37.3%)などが高率であったが、保健所情報システム(29.4%)、福祉情報システム(28.7%)であった。
4)具体的な内容
緊急通報サービス、遠隔リハビリシステム、在宅介護支援システム、介護についての情報提供サービス。要介護認定支援システム(ケアプランを策定)、学校と家庭にテレビ電話システム(状態観察、教育)、GISを活用した高齢者みまもり事業、定刻デイコール問診、健康カードや、保健情報システム、福祉情報システム(入所者管理、デイサービス管理、要介護者登録、ヘルパー・ボランティア登録、介護計画、ヘルパー等派遣スケジューリング、福祉統計)などがあげられる。医学的情報のみではなく、介護保険を含んだ、総合的な情報の統合化が必要であると思われる。
5)在宅等で使われる情報機器
事例よりは、在宅でバイタルサインや画像をとらえ、それを転送する機器がメインとなります。データ入力者は患者さんの家族や看護婦さんや、ヘルパーさんなので簡単なのが望ましい。テレビ電話。PHS。位置検索機能付のテレビ携帯電話。GPS。携帯情報端末PDAなどがあげられます。
ネット上へのサービス情報(施設情報)と資料の集積:ホームページとデータベース
1)社会福祉・医療事業団 http://www.wam.go.jp/wam/
2)財団法人
日本障害者リハビリテーション協会情報センター。ノーマネット http://www.normanet.ne.jp/
3)難病情報センター http://www.nanbyou.or.jp/
4)財)テクノエイド協会 http://www.techno-aids.or.jp/
5)保健所等情報システム(厚生行政総合情報システム:WISH)
「結核・感染症サーベイランスシステム」、「地域保健医療計画支援システム」、「医療機関行政情報システム」。
6)福祉人材情報システム HOT SYSTEM
7)ボランティア情報ネットワーク
行政情報システム
1)ケアマネジメント支援システム
在宅介護支援センターからの相談業務の支援、ケアプランサービス。住民基本台帳との連動(岩手県遠野市の事例)
2)岩手県在宅医療等推進支援事業
国保連と各保険者で゙在宅医療対象者の管理
3)脳卒中情報システム
岩手県庁ト保健所を結び゙、在宅患者ノ情報ヲ市町村に提供する。
まとめ
医療福祉情報ネットワークの構築に必要な要件は以下のごとくです。
1)利用者と、医療、福祉、救急、健診、保健を結ぶ多層的なネットワーク。
2)二次医療圏を単位とする。
3)行政を中核とする。
医療、福祉、救急、健診等を含めた二次医療圏単位での、総合的な医療福祉情報ネットワークの構築が待たれます。