メディカル ツーリズム元年

本田整形外科クリニック 本田忠2010/12/25


メディカルツーリズム
 他国でメディカル(医療)+ツーリズム(観光)も行うツアーです。政府は「新成長戦略」で医療ツーリズムを促進するとしました。日本の医療のブランド力をいかして積極的に外国人患者を受け入れて経済を活性化させるという狙いです。そのために2011 年1 月から「医療滞在ビザ」の運用が開始されます。2011年はいわば医療ツーリズム元年になります。
様々な問題
1)安全リスク拡大;多剤耐性菌の拡大
 たとえば美容整形などを目的として、意図的に外国で治療を受けることはあまりお勧めしません。
2)メディカルツーリズムは発展途上国モデル
 「言葉、文化、価値観の相違」という障壁もありますが、海外から患者さんが来るのは、費用が安いか、技術レベルが高いかのどちらかです。
医療水準は東南アジアと同程度で差別化は困難
 一般的な医療レベルはいざ知らず、特化している、バンコク病院は、設備は豪華で、タイ国内でも特に経験豊富な医師がそろっており、実際に医療内容を見た日本人医師が、日本の医療と見劣りしないと認める水準にあるようです。
価格面の競争力がない
職員の人件費コストの高さ
 タイがメディカルツーリズムの目的地として選ばれるのは、高品質な医療サービスを、日本では考えられないぐらいの人員(通訳だけで80名/一病院)を割いて、利益管理できた価格で提供しているため。
手術料は韓国の5-6倍
 二木によれば、5種類の手術の公定料金を潜在的ライバルである韓国と比較したところ、弁置換術、冠動脈バイパス移植術では5.3〜6.0倍でした。
 日本でタイと同程度のサービスを提供すれば人件費が天文学的になります。それが自由診療の医療費に直接反映する形になります。医療ツーリズムはいわば安い人件費を前提とした「途上国モデル」であるといえます。
様々な影響
 外国人に対し、日本の医療を提供することは、人道的見地からも当然の責務ですが経済波及効果はあまり期待できませんし、人の移動の増加による感染リスクの増大などの安全面はもとより混合診療問題、倫理面などで様々な問題がでてきそうです。




参考文献
医療滞在ビザの創設
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/22/12/1217_05.html
医療滞在ビザの概要と問題点2010年12月22日日本医師会
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20101222_1.pdf
一般の方への情報提供:多剤耐性菌を正しく理解するためのQ&A
http://www.kansensho.or.jp/topics/100913publicqa.html
経済産業省平成20年度サービスイノベーション創出支援事業(サービス産業能力評価システム構築支援事業)
−高度予防医療ビジネスに関わる調査研究報告書−2009
http://www.meti.go.jp/policy/servicepolicy/bpo/2-4%20iryou.pdf
タイの現状
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/22/22620_5886551_misc.pdf