低医療費政策



本田整形外科クリニック 本田忠2011年12月3日



医療費亡国論
 いわゆる「医療費亡国論」で「医療費が増えて大変だ」ということで、「皆保険制度」が始まって以来、医療費は抑えられています。たとえば図に示したよう な1981年を100とした「賃金指数」や「消費者物価指数」と「医療費の改定率」をみても、バブル期を除いて、マイナス成長でほとんど据え置かれている のがわかると思います。医療費の自然増とされる、医療費の技術の進歩、あるいは、疾病構造の変化により、高齢化で増加した科などは徹底した抑制策がきめ細 かに行われています。
地域医療崩壊
 これだけ厳しい「医療費抑制政策」を長期間受け続けた結果、近年は公的病院の赤字や数の削減、深刻な勤務医師不足による長時間労働などが明らかになって きています。地域の多くの医療機関も規模の縮小を余儀なくされています。皆さんも一昔前に比べて、入院するのが難しくなり、しかも入院期間が短くなったと 感ずる方も多いでしょう。これらは地域からベットがなくなってきているからです。有床診療所も減り続けています。
さらなる医療の合理化計画
 現在さらなる「医療の合理化」が行われつつあります。地域における赤字の公的病院の廃止や診療所化、療養ベット削減。慢性期医療(リハビリなど)の介護 への移行。品質に不安のある後発医薬品の使用促進。指導監査の強化では医師の自殺者も出てきています。
医療にもっと投資を
 財源しだいではあるわけですが、2つの選択肢があります。現在の日本のように「公的皆保険制度」を維持するのか、あるいはアメリカのように「低負担低福 祉国」として、個人の自由で「混合診療解禁」でなんでもありにするのか。アメリカ型になれば皆さんへ医療は十分いきわたらなくなります。混合診療解禁にす ることのデメリットの方があきらかに大きいと思います。いずれにしろ現在は「低負担低福祉国」まっしぐらです。このままでは「アメリカの医療」となってし まうでしょう。より医療への投資を増やしていく必要はあると思われます。せめて中負担中福祉国を目指すべきでしょう。








参考
賃金・物価指数を大きく下回ってきた診療報酬改定率
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vpkq-att/2r9852000001w61x.pdf
平成22年度 医療費の動向2011年08月26日
http://www.mhlw.go.jp/topics/medias/year/10/
第18回医療経済実態調査の報告(平成23年6月実施)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=168863
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