受 診時定額負担について



本田整形外科クリニック 本田忠2011年12月5日



患者さんは医療費の4割を負担しています
 日本は皆保険制度ですが、全額保険で行なわれているわけではありません。医療費のうち、患者さんご自身が窓口で払う一部負担金で約14%。保険料で 30%弱で、あわせて42%は患者さんが負担しています。残りが事業主負担20%と公費37.5%でまかなわれています。皆保険制度とはいえ4割は患者さ ん自身が負担しています。
一部負担金について
 年齢によって異なりますが、現役世代は3割負担です。日本の窓口負担は世界的にみても非常に高いようです。イギリス、カナダ、イタリアは薬剤の一部負担 はあるものの、窓口負担は無料。フランスの窓口負担は3割ですが、それを補完する共済組合があるので実質的には無料。ドイツはひとつの病気の治療にかかる 費用は四半期ごとに10ユーロ(1ユーロ=116円)です。
一部負担金は3割が限度(長瀬効果)
 一部負担金が上がれば、患者さんは受診を手控えますから、医療費は減ります。厚労省に長瀬効果という一次式があります。それによれば3割負担では医療需 要の6割が確保されるにすぎず、4割負担だと医療需要の5割を切ります。つまり一部負担金が4割になれば、高額すぎて医療保険の意味合いがなくなることに なります。
受診時定額負担制度に反対する
 政府は「社会保障と税の一体改革」で、現在の3割負担に上乗せで、初診時に200円、再診時に100円程度を支払う「受診時定額負担制度」を平成27年 度の導入を目指すとしました。これでは受診回数の多い方(高齢者、病気がちの方)ほど負担が増えることになります。これ以上自己負担を上げれば、ほとんど 公的保険の意味合いがなくなります。医療機関を受診するよりは売薬で済ませる方が多くなります。医療財源は、公的保険である以上、患者さん自身からではな く、幅広く保険料に求めるべきであろうと思われます。







参 考
我が国の医療保険制度について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken01/01.html
社会保障改革に関する集中検討会議
「社会保障改革案」に対する日本医師会の見解2011年6月15日
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20110615_1.pdf
長瀬効果について:自己負担増と医療費減
http://www.orth.or.jp/seisaku/turuoka/content/nagase.html
会社員の健康保険料はどうやって決まるのか?
http://diamond.jp/articles/-/14800