お任せします

本田整形外科クリニック 本田忠2012/6/8


マターナリズム(母親的包容主義)が基本
 患者さんが、手術、検査、麻酔等の、必要性、危険性にたいして、主治医が用意する、同意書へ記入することさえ、違和感や、抵抗感を感ずる方が多いようです。「先生にお任せします」。これは日常よく見られる光景です。十分な説明の元に、個人の決断に基づくはずの、自己決定が、不明確に行われる。日本における、医師対患者の関係は、パターナリズムというより、むしろマターナリズムが基本であるようです。
「説明と同意」の限界

 様々な情報から総合的に判断して治療法をを選択するのは言うまでもなく患者さん自身です。インフォームドコンセント(説明と同意)は、難しくいえば、「独立した権利主体、人格主体としての患者」に、「同じ権利と人格主体である、医師」が説明して、同意を得て、はじめてなりたつものです。医師対患者は、対等の関係であらねばならない。患者が、「独立した人格」で、「十全な自己決定能力」がなければ、自己決定は十分には出来ないことになるでしょう。
情報の非対称はなくならな
 情報の非対称には「医学知識」と「依存」の2つの面があります。「医学知識」は、いうまでもなくある程度勉強すれば補えます。一方、どんな方でも、病気になれば、救けて欲しいという依存心が出ます。幾ら情報公開しても医師対患者は、残念ながら、対等の関係にはなりえません。
医師対患者の関係は、「信頼関係」と「思いやり」が基本となる
 「マターナリズム」と、「情報の非対称」の存在する社会では、医師対患者の関係は、「契約」ではなく、「信頼関係」と「思いやり」というきわめてあいまいな概念が基本とならざるをえません。こういう社会で、明確な文書化は、逆に医師の自己責任の放棄と、形式主義への退行になりうるでしょう。