名医とは

本田整形外科クリニック 本田忠2011/1/7


専門医が多すぎる?
 18の基本領域科の専門医数は医師の44%です。これでは専門医の名に価しないという声が有ります。たとえば整形外科医師の90.8%が専門医です。整形外科の医師数は19,273人(全体の7.1%)、勤務医は11976人です。一方整形外科専門医は現在17,924人です。2015年から今度は「専門医制度の厳格化」が予定されています。整形外科の「全体の質」をあげるのではなく、絞って専門医をブランド化するという考え方です。
質の向上の名の元に
 毎年8000人の医師が作られているにもかかわらず、「医師不足」が問題になっています。地域でも閉鎖された診療科が多い。現在の医師不足の原因は、若干は絶対量不足もあるわけですが、近年の医師不足の主原因は「医師の偏在」であり、「臨牀研修医制度」が導入されたためです。その結果地域で「深刻な医師不足」が出現しました。今度は併せて「深刻な専門医不足」が出現する可能性が高いと思われます。
医師のキャリアの固定化
 平成22年の厚労省の調査では、地域で求人も多い。専門医制度の厳格化は医師のキャリアの固定化です。現在は自由開業医制により、勤務医から開業医への移動は簡単です。しかしそれぞれの専門医認定が高度化するわけで、整形外科専門医トレーニングを受けた方の総合医への移行は非常にハードルが高いことになります。
専門医の施設偏在による外来医療のレベル低下
 専門医を絞れば、確かにブランド化され、それぞれの専門医の質は上がるかもしれません。しかし、まず地域から現在のような臓器別専門医は払底します。あわせて、医師は「施設で偏在」して病院にいる少数の臓器別専門医と、開業医は総合医専門医となります。「診療所」には「臓器別専門医」はいなくなります。結果デンマークの如く、プライマリケアにおける外傷のチェックが甘くなり医療のレベルは低くなる。「一将なって万骨枯れる」状態となります。専門医の数を絞ってブランド化して施設で偏在させるより、臓器別専門医全体のレベルアップを図って行くほうが健全ではないでしょうか。


参考文献
青森県の医師不足について
http://www.orth.or.jp/Isikai/2008/now/ishibusoku2010.html
青森県の必要医師数
http://www.orth.or.jp/Isikai/2008/now/ishisu2010.html
専門医について
http://www.orth.or.jp/Isikai/2008/now/senmoni.html
整形外科手術の需要調査(平成17年度労働産業委員会調査)から見る現在と近未来の手術需要 佐々木孝 日本整形外科学会雑誌 第83巻 第9号( 平成21年9月 )page553-554
http://journal.joa.or.jp/onlinejournal/LoadPdf.do?document_code=1620
手術需要に対して整形外科医が不足することは明らかである. このままの手術需要が続くとすれば, 整形外科医を24%増加する必要がある. 整形外科医の増加あるいは骨折予防や変形性疾患予防を代表とする手術予防のような発想が必要になる.
まとめ
今後も増え続ける手術需要の中で, 整形外科医の必要数は増加し続けており, 現状での苛酷な労働環境がさらに悪化することが懸念される. 手術需要に見合う適正な質および人数の整形外科医の育成に力を入れる必要がある。