医療機関の過度の機能分化は避けましょう

本田整形外科クリニック 本田忠2012/6/8


 厚生労働省は「一般病床の機能分化の推進についての整理(案)」を提示しました。医療機関を急性期医療、亜急性期、回復期、療養、在宅までの流れで明確に機能分化するという考え方です。開業医であれば「総合医」や「家庭医」構想で、レントゲン機器もおかない慢性期医療のみを担う零細化した診療所のみにしようとしています。
機能分化は医療機関の機能の低下そのものです
 しかし「機能分化」とは、同時に個々の医療機関のもつ「機能を絞って単能化する」ことでもあります。いわば個々の医療機関の機能の低下です。結果として手術などの待ち時間の増大。急性期をすぎた患者さんの御家族は、地域であいている医療機関探しに翻弄されることになります。手術したら抜糸もすまないうちに追い出される。あるいは亜急性期や慢性期医療を担う医療機関へたらいまわしされます。地域で各々の病院が機能別に十分確保されているわけではありませんから、患者さんが病期により移動するたびに、引き受け先のない、医療難民、介護難民が増え ることになります。
市場の強直化で地域で医療サービスが十分提供できなくなる
 医療機関を過度に機能分化すれば、個々の医療機関のもてる機能を絞りすぎることになり、かえって効率は低下して、「医療サービス市場の強直化」を招き、旧ソ連の計画経済のような官制市場で、いわゆる「市場のミスマッチ」が起こるでしょう。急性期病院が慢性期医療をある程度になっても良いし、診療所が急性期医療を担っても良いはずです。各施設である程度機能を多機能化しておかないとかえって無駄の多い困ったことになります。診療所にしても慢性期を担う無床で零細なところから、検査機器から何でもある重装備診療所、有床など多様な医療サービス形態がなければ地域の多様な医療ニーズに到底こたえられないでしょう。


急性期医療に関する作業グループ第7回会合資料
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=176061