卒後研修医制度について

本田整形外科クリニック 本田忠 2011/1/18


 2004年度から6年間の医学部卒業後、幅広い診療能力の習得を目的として2年間の研修を義務付けられた、臨床研修医制度が始まりました。適正な給与の支給と研修中のアルバイトの禁止などが定められています。
導入により地域医療へ様々な悪影響がでています
1)研修医の都市部市中病院への集中
 マッチング制度の導入によって、研修先を自由に選べるようになった結果、研修医は都市部の一部有名市中病院へ集中し、地方の医師数は不足しています。
2)大学病院の機能低下
 以前は大学に8割の医師が残っていました。大学は「医育機関」であると同時に「地域への人材派遣」も担っていたわけです。しかし研修制度導入により大学に医師がいないくなり、地域の関連病院へ派遣した医師を引き上げ始めています。各地の病院で診療科の閉鎖が起こっています。
3)診療科の偏在
 研修医は、2年間は志望科にかかわらず複数科をまわります。その結果多忙な科や訴訟リスクの高い科を敬遠する傾向がでてきています。
大学の機能の回復を
 研修医制度を導入した一部の先生は、全国の病院の自由競争で、質の向上を図るもので、大学に研修医が集まらないのは大学の努力不足であるとしています。しかし現在のマッチング制度は、結果として人気投票でしかないと思います。この制度は、「自由競争による質の向上」という、かなり偏った視点からだけの導入で、大学の医育機能と人材派遣機能を無視した制度でしかありません。
フリーマッチングの廃止の提言
 2011年1月に日医改革案が発表されました。「フリーマッチング制度によらず、大学の教育・研修を中心にしながら医師会が主導する地域単位での医師育成システムを充実させる」 としています。たった一つの施設での研修ではなく、大学を中心として地域の複数の医療機関を回る方がより研修の質の向上を図れることは明白です。一つの医療機関で研修を行うことには明確な限界が有ります。妥当なご意見と思います。




参考
医師臨床研修制度のホームページ
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/index.html
・医学部教育・初期臨床研修制度についての日本医師会の考え
 ―日医総研の聞き取り調査を基に―
http://www.med.or.jp/japanese/members/flv_movie/2010/20110112b/index.html
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20110112_2.pdf