医療費の自然増

本田整形外科クリニック 本田忠
2008/12/15


日本の医療費はいくら
 毎年1兆円増えるといわれてきた国民医療費は、2006年度は若干のマイナスとなりました。また、国民医療費の国民所得比も前年度を下回り、これは介護保険法が施行された2000年度を除くと1986年終わりから1991年初頭のバブル期以来のことです。

なにが問題なの
 人口の高齢化が進む中で、医療費の増加が問題とされ、抑制するため様々な医療抑制策が取られています。
i減らす理由
1)高齢化率が経済成長率より高い
 高齢化社会の到来により高齢人口増加率(3−4%)が、経済成長率(1ー2%)を上回る。
2)医療費の伸びが国民所得の伸びより高い
 医療費は、国民所得を上回る伸びを示している。特に老人医療費の伸びが著しい。
これらを是正するためには、医療費を減らす必要があるとされました。

医療費抑制策
 国は、年金、医療、介護などの社会保障費を平成14年度から毎年2,200億円削減しつづけています。

ほんとに医療費は増えているの
 近年の社会保障給付費と国民所得の伸び率を見ると、2002(平成14)年以降、解離は縮小しています。医療費増加のカーブは平坦化しており、老人医療費も増えていません。2006年度からはマイナスに転じています。

医療費の増加する原因は
 国民医療費は、高齢者人口の増加や医療技術、医療機器の進歩などにより、毎年自然に増えていきます。これを「医療費の自然増」といいます。
自然増の原因は
1)人口の増加
2)人口の高齢化
3)医学、医療の進歩、新技術の導入
4)疾病構造の変化、対象の変化
とされています。このなかでは「医学の進歩」が、最も大きな要因とされています。
 医学が進歩すれば、当然、新しい医療技術や新薬が開発され、新しい医療機械が使われるようになります。国民の皆さんの健康を守るためには、医学の進歩を止めるわけにはいきません。よってこの自然増の部分を無理に抑えれば、医学の進歩の否定や、国民が必要な医療を受ける機会を奪うことになりかねません。

医療費の自然増はなくなった
 現在は医療費が減っていますので、この「医療費の自然増」がなくなりました。いわば過度に抑制されているといえます。その結果日本全体で、医療崩壊が始まっています。


参考文献 日本医師会健康交叉点No18