医療費亡国論

本田整形外科クリニック 本田忠

2008/12/17


 高齢化の伸展に伴い、このまま医療費が増え続ければ大変だ。国は負担を支え切れない。医療費は押さえるべきだ。これを「医療費亡国論」といいます。過去において、厚労省の官僚さんがいった言葉です。

長期にわたる医療費抑制策
 ここ20年くらいは、この考え方で、様々な医療費抑制策が実行されました。その結果ここ数年は、医療費はマイナス成長となりました。現在は「医療費の自然増」といわれる「医療の進歩」まで否定されています。

医療崩壊
 現在、地域から病院は消えつつあります。全国で閉院が相次いでいます。最近入院した方は経験しているでしょうが、入院した場合、在院日数短縮のために、入院と同時に退院日まで言い渡されています。あるいは抜糸もしないうちに病院を追い出されます。医師数も制限され、やっと数を確保していたのが、近年の「医師研修医制度」導入とあいまり、地域で、特に青森県では医師が極端に不足しだしています。その結果、病院の診療科の縮小も余儀なくされています。医師は過重労働で悲鳴をあげています。現在はまさしく医療崩壊といってよい状況です。

命は地球より重い
 そうはいっても、確かに医療だけ別世界ではすみません。「医療を支える財源の手当て」は、当然無視できません。そこで医療と経済の関係をすこし、考えて見ましょう。

医療が進歩し続ければ、本当に医療費は増え続けるのでしょうか
 現在「高額医療」といわれているものの内容は、主に「血友病」などの「血液疾患」、「臓器移植」、「遺伝子治療」などです。幸い、「血液疾患」や、「臓器移植」は、今後そう極端に症例数は増えません。「血友病」が高額なのは、「血液製剤」を使うためです。「血液製剤」は、現在、合成できないために、残念ながら大変高価です。しかし、医学の進歩により、遠くない将来に「人工血液」が出来れば、この費用は大幅に減少することが期待できます。「人工臓器」も同様です。よって、「医学の進歩」などの「技術革新」により、「際限なく医療費が増加する」とは、必ずしも限りません。


健保連平成19年度高額レセプトの概要についてより引用

参考文献;平成19年度高額レセプトの概要について