病院機能の細分化による医療難民の増加

本田整形外科クリニック 本田忠2012/11/2



2週間で退院が強制される時代
 食道がんと診断されたAさんは、手術を受けた。がんは取り除けたものの、手術後しばらくして、肺に膿が貯まるようになった。口から食べることもできず、 静脈に埋め込んだカテーテルから点滴で栄養補給する状態になった。管だらけになり、「退院はまだ先だろう」と思った矢先、Aさんは担当医にビックリするこ とを言われた。「Aさん、退院していいですよ」。国の医療制度の変更で、長期入院はなかなかできなくなっています。患者さんからすれば非情とも思える強硬 な退院が行われるようになってきています。
在院日数短縮は望ましいことではない
 このように入院時にすぐ退院の日を宣言されるのは、国の合理化政策のため(医療費が増えるから大変だ)ですが、患者さんのことを考えれば入院期間は長い に越したことはないわけです。しかし抜糸もしない内に追い出される。術後リハも十分できなければ成績も当然落ちることになります。

病床機能の細分化による医療難民の増加
 現在国の方針は、病院を機能別に細分化して超急性期、急性期、亜急性期、長期療養と細かくわけて、流れ作業のように、病気の時期に応じて、次々と病院を 変わるようにしようとしています。しかし施設はバランスよくそろうわけもありません。現在は亜急性期が極端に不足しています。厚労省はベット数のアンバラ ンスの杯型がおかしいといっているわけですが、それ以前に、医療機関をこのように機能で細分化しすぎることが問題なわけで、各レベルをバランスよく施設数 をそろえることなど土台無理な相談だと思います。高度急性期、一般急性期、亜急性期、長期療養とわければ病期の各段階で、病院を変わろうとするたびに、入 れる施設がなくて右往左往するか、在宅を選択せざるを得ない医療難民が出るでしょう。もっと柔軟な制度づくりが求められます。








参考
 「財政について聴く会」 http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia241015.html
長期入院させてもらえない病院のウラ事情 http://diamond.jp/articles/-/26829