整形外科診断学

ここでは主に研修医向けの、解剖より見た、整形外科診断学を述べます

目次

  1. 肩関節
    肘関節
    手関節と手
    頸椎 
    顎関節 (tempromandibular joint)
    歩行
    股関節と骨盤
    膝関節
    足部と足関節
    腰椎
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肩関節

  1.    ▲視診
            Erb's palsy
            肩関節脱臼
            スプレンゲル変形
            脊柱側弯症
       ▲骨の触診
            胸骨頚切痕 suprasternal notch
            胸鎖関節  sternoclavicular joint
            鎖骨 clavicle
            烏口突起 coracoid process
            肩鎖関節 acromioclavicular joint
            肩峰 acromion
            上腕骨大結節 great tuberosity of the humerus
            結節間溝 bicipital groove
            肩甲棘 spine of the scapura
       ▲軟部組織の触診
            腱板 rotater cuff    
               棘上筋 supraspinatus
               棘下筋 infraspinatus
               小円筋 teres minor 
               (肩甲下筋は前方にあるため触診不可)
            肩甲下滑液包、三角筋下滑液包  bursa
            腋窩 axilla
            肩甲帯

              胸鎖乳突筋 sternocleidomastoid
               大胸筋 pectoralis major
               上腕二頭筋 biceps
               三角筋 deltoid
               僧帽筋 trapezius
               大菱形筋、小菱形筋 rhomphoid major,minor
               広背筋 latissimus dorsi
       ▲関節可動域                      
               外転 180゜ 内転 45゜
               屈曲 90゜  伸展 45゜
               内旋 55゜  外旋 40−45゜
       ▲神経学的検査
            筋力テスト  5 正常 (normal)
                   4 優  (good)
                   3 良  (fair)
                   2 可  (poor)
                   1 ゼロ  (zero)
          肩関節の屈曲  伸展  外転  内転  外旋  内旋
          肩甲骨の挙上(肩すくめ運動)  
          肩甲骨の内転(気をつけ姿勢)
          肩甲骨の外転(腕を前方へ伸す運動)
              反射テスト
          知覚テスト 
             異常知覚(parasthesia)
             知覚過敏(hypersthesia)
             知覚鈍麻(hyposthesia)
             知覚脱失(anesthesia)
       ▲特殊な検査
         ヤーガソンテスト(Yergason test)
          上腕二頭筋腱長頭が結節間溝で不安定だと陽性
         ドロップアーム テスト(drop arm test)
            腱板断裂
         不安テスト(apprehension test)
           習慣性肩関節脱臼

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肘関節

   ▲肘の3つの関節 
      上腕橈骨関節(humero-radial joint)
      上腕尺骨関節(humero-ulnar joint)
      橈骨尺骨関節(radio-ulnar joint)
   ▲視診
    肘外偏角(carrying angle)  男5゜ 女10〜15゜
              外反肘  内反肘    
   ▲骨の触診
     内側上顆 (medial spicondyle)
     内側顆上稜(medial supracondylar line)
     肘頭(olecranon)
     尺骨縁(ulnar border)
     肘頭窩(olecranon fossa)
     外側上顆(lateral epicondyle)
     上腕骨外側顆上稜(lateral supracondylar line)
     内側上顆(medial epicondyle)
     橈骨頭(radial head)
   ▲軟部組織の触診                
     内側面> 
       尺骨神経(ulnar nerve)
       手関節屈筋群、回内筋群  (内側上顆の共同腱に起始部)
              円回内筋(pronator teres)
              橈側手根屈筋(flexor carpi radialis)
              長掌筋(palmaris longus)
               尺側手根屈筋(frexor carpi ulnaris)
          内側側副靱帯(medial collateral ligament)
          顆上リンパ節(supracondylar lymph nodes)
     後面>
         肘頭滑液包(olecranon bursa)
         上腕三頭筋(triceps)
     外側面>
       手関節伸筋群  (外側上顆、外顆上稜に起始部)
        3つの動く小塊(the mobile wad of three)
        腕橈骨筋(brachioradialis)
        長橈側手根伸筋(extensor carpi radialis longus)
        短橈側手根伸筋(extensor carpi radialis brevis)
        外側側副靱帯(lateral collateral ligament)
        輪状靱帯(annular ligament)
     前面>
         肘窩(cubital fossa)
         上腕二頭筋腱(biceps tendon)
         上腕動脈(brachial artery)
         正中神経(medial nerve)
         筋皮神経(musculocutaneous nerve)
   ▲関節可動域                 
     自動関節可動域
    屈曲135゜  伸展0〜ー5゜  回外90゜  回内90゜
   ▲神経学的検査
    筋力テスト
     屈曲; 上腕筋、上腕二頭筋(ともに筋皮神経 C5C6)
     伸展; 上腕三頭筋(橈骨神経 C7)
     回外; 上腕二頭筋(筋皮神経)、回外筋(橈骨神経 C6)
     回内; 円回内筋(正中神経 C6)、  
         方形回内筋(正中神経前骨間枝 C8、T1)
   反射テスト
        上腕二頭筋腱反射  C5 
          腕橈骨筋腱反射   C6
        上腕三頭筋腱反射  C7
     知覚テスト
   ▲特殊なテスト
  靱帯支持性テスト
      肘関節の内外側側副靱帯の支持性の検査
  チネル兆候(Tinel sign)
      神経内の神経腫の圧痛を誘発するテスト
      尺骨神経内部に神経腫があれば、尺骨神経溝を叩打すると
前腕から手部の尺骨神経領域に沿ってびりびりする感覚が
伝わる。
  テニス肘テスト(tennis elbow test)
   患者の前腕を固定しこぶしをつくり、手関節を背屈するよう指示する。
     次に、検者が患者の手関節が掌屈位になるようにこぶしの背側に一方の
     手で圧迫を加える。テニス肘であれば外側上顆に急激に著明な疼痛を
   生じる。
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手関節と手

 ▲解剖
     指節骨(phalanges),中手骨(metacarpals)
     手根骨(carpus) 
    橈骨(radius),尺骨(ulna)
 ▲視診
  手掌面
    皮線    遠位指皮線(DIP)     近位指皮線(PIP)
          手掌手指皮線(pulleyの位置)   
          遠位手掌皮線       近位手掌皮線
          尺側皮線   正中皮線   母指球皮線
          手関節皮線
   丘(peak); 虫様筋 (lumbrical)、神経血管束(neurovascular bundle)
   谷(valley);屈筋腱 (flexor tendons)
       手背面
        スプーン状爪(spoon nail)
        弯曲した爪(clubed nail)
  ▲皮膚の触診
  ▲骨の触診              
    手関節の骨; 2列に並んだ8個の手根骨
            近位手根骨(proximal carpal raw)
              舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨
            遠位手根骨(distal carpal raw)
              大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鉤骨、
           橈骨茎状突起(radial styloid process)
           タバコ窩(anatomic snuffbox)
           舟状骨(navicular、scaphoid bone),舟状骨結節 
                  一番骨折しやすい
           大菱形骨(trapezium)
                     橈骨結節(リスター結節、Lister's tubercle)
           有頭骨(capitate)
           月状骨(lunate) 2番目に骨折しやすい
                   最も脱臼しやすい
           尺骨茎状突起(ulnar styloid process)
           三角骨(triquetrium)
           豆状骨(pisiform)  尺側手根屈筋腱が付着
           有鉤骨の鉤(hook of the hamate)
           中手骨(metacalpal)
           第1中手骨
           中手指節関節(MetacarpoPhalangeal joint,MPjoint)
           指節骨(phalax) 
                近位指節間関節(PIPjoint)
                遠位指節間関節(DIPjoint)
  ▲軟部組織                     
    手関節;領域1 橈骨茎状突起
        タバコ窩:尺側縁は長母指伸筋腱、底部は舟状骨
        トンネルT:長母指外転筋腱(ABD.POLL.LONGUS)
              短母指伸筋腱(EXT.POLL.BREVIS)
              狭窄性腱鞘炎(De Quervain 病)
        Finkelsteinテスト
    手関節;領域2 橈骨結節(リスター結節)
        トンネルU:橈骨結節の橈側
              長、短手根伸筋腱
        トンネルV:長母指伸筋腱
        トンネルW:総指伸筋腱(EXT.DIGITORIUM COMMUNIS)
              示指伸筋腱(EXT.INDICIS)
    手関節;領域3 尺骨茎状突起
        トンネンX:小指伸筋腱(EXT.DIGITI.MINIMI)
        トンネルY:尺側手根伸筋腱
    手関節;領域4 豆状骨(手掌面)
        尺側手根屈筋腱(flexor carpi ulnaris)
        ギョン管(尺骨管、tunnel of Guyon)
             豆状骨と有鉤骨の鉤との陷凹
             豆鉤靱帯
             尺骨神経、尺骨動脈
        尺骨動脈
    手関節;領域5 長掌筋と手根管
        長掌筋(palmaris longus)  7%の人に欠如
        手根管(carpal tunnel)
            長掌筋の深部
            近位部は舟状骨、豆状骨、
            遠位部は大菱形骨結節、有鉤骨の鉤
                        正中神経と屈筋腱
            手根管症侯群
      Tinel sign
    Phalen sign 手関節を最大屈曲にして1分間その位置
            で保持した時、指のビリビリ感が再現する
            橈側手根屈筋(flexor carpi radialis)
   ▲手部;領域1 母指球(thenar eminence) 正中神経反回枝 9
            短母指外転筋  表層
            母指対立筋   中間
            短母指屈筋   深層
     ▲手部;領域2 小指球 (hypothenar eminence)
  尺骨神経、ギヨン管
            小指外転筋
            小指対立筋
            小指屈筋
   ▲手部;領域3 手掌
        手掌腱膜(pqlmar aponeurosis)
        デユビュイトラン拘縮(dupuytren's contracture)
            指屈筋腱
               手掌腱膜の下
               ばね(弾発)指(trigger finger)
   ▲手部;領域4 手背
       伸筋腱
   ▲手部;領域5 指節骨
       ブシャール結節(bouchard's node)  RAの滑膜炎
       スワンネック変形         RA     
       ボタン穴変形           RA
       ヘバーデン結節(Heberden's node,DIP)  OA
       槌指(mallet finger)
    ▲手部;領域6 指腹(finger tuft)
      漂疽、爪周囲炎
      指腹に原発する感染は腱鞘に沿って拡大しKanavelの4主徴
              1 指の屈曲
              2 典型的な腫脹
              3 他動的伸展による激痛
              4 腱鞘の走行にそう触診による過敏性
   ▲関節可動域(自動)        
      手関節屈曲80゜    伸展70゜
      手関節尺屈30゜    橈屈20゜
      MP関節屈曲90゜    伸展30〜45゜
      PIP関節屈曲100゜  伸展0゜
      DIP関節屈曲90゜   伸展10゜
      指の内転0゜       外転20゜
      母指の屈曲(MPJ)50゜伸展0゜
      母指の屈曲(IPJ)90゜伸展20゜
      母指の掌側外転70゜   内転0゜
      母指の橈側外転50゜
   ▲神経学的テスト
    筋力テスト
     手関節伸展    C6、橈骨神経
       手関節屈曲    C7、正中神経、尺骨神経
     指伸展      C7、橈骨神経
     指屈曲      C8、
        深指屈筋(尺骨神経)  浅指屈筋(正中神経)
     指外転      T1、尺骨神経
     指内転      T1、尺骨神経
     母指伸展     C7、橈骨神経
     母指屈曲(MP)   尺骨神経(内側部)
                正中神経(外側部)
         (IP)   正中神経
     母指掌側外転     橈骨、正中神経
     母指内転     C8、正中神経
     つまみ動作(pinch)
       母指対立筋    正中神経
       小指対立筋    尺骨神経
    知覚テスト         11
      末梢神経支配
        橈骨神経   母指と示指の指間部が知覚固有域
        正中神経   示指先端部掌側が知覚固有域
        尺骨神経   小指の指先部掌側が知覚固有域
    神経学的レベルによる手の知覚支配
        C6  母指、示指、中指の半分の知覚
        C7  中指(C6、C8からも支配を受ける)
        C8  環指と小指
   ▲特殊な検査
    指屈筋テスト
      浅指屈筋腱テスト
      深指屈筋腱テスト
    バネル、リトラーテスト(bunnel-littler test)
       内在筋(虫様筋、骨間筋)の短縮、関節包拘縮
    支帯靱帯テスト(retinacular ligament test)
       支帯靱帯の短縮、関節包短縮
    アレン(Allen)テスト
       橈骨動脈、尺骨動脈の血流状態
      アレンテスト変法
       指動脈の血流状態

 

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頸椎


 

   ▲視診
   ▲骨の触診
     前面>
      舌骨(hyoid bone)     馬蹄形 、C3椎体の高さ
      甲状軟骨(thyroid cartilage)
         上甲状切痕(superior notch)  C4の高さ
         甲状軟骨下部         C5の高さ
      第1輪状軟骨(first cricoid ring)  C6の高さ
      頚動脈結節(carotid tubercle)    C6横突起の前結節
     後面>
        後頭(occiput)
        外後頭隆起(inion:bump of knowlege;知識のこぶ)
        上項線(superior nuckal line)
        乳様突起(mastoid process)
        頸椎棘突起(spinous process)  第7棘突起(隆椎)
        椎間関節(facet joint)    C5とC6間の椎間関節が最も
                      変形性関節症を起こしやすい
   ▲軟部組織の触診
     前面>
        胸鎖乳突筋(sternocleidomastoided muscle)
        リンパ節鎖(lymph node chain)  胸鎖乳突筋内側縁
        甲状腺(thyroid gland)  C4〜C5の前方
        頚動脈拍動(carotid pulse)
        耳下腺(parotid gland)   下顎角を部分的に覆う
        鎖骨上窩(supraclavicular fossa)   広頸筋
     後面>
        僧帽筋(trapezius muscle)
           起始; 外後頭隆起点からT12棘突起
           停止; 鎖骨、肩峰、肩甲骨棘
             僧帽筋、胸鎖乳突筋ともに発生学的に1つの筋
            ともに脊髄副神経、第11脳神経(副神経)
        リンパ節    僧帽筋の前外側
        大後頭神経(geat occipital nerve) 外後頭隆起点の両側
        上項靱帯(superior nuchal ligament)
           外後頭隆起点よりおこりC7棘突起へのびる
           各頸椎棘突起を覆い繊維性に付着する
  ▲関節可動域
    屈曲、伸展の動きの約50%は後頭骨とC1の間でおこなわれ、
残りの50%は比較的平均して分担(C5ーC6が比較的よく動く)
    回旋の約50%はC1(atlas)とC2(axis)の間でおこなわれる
   側屈はすべての頸椎の動きで行なわれるが、純粋な動きとしておこる
   のではなく、回旋要素との組合せによる動きである
    自動運動      
        前屈       後屈
        右回旋      左回旋
        右側屈      左側屈
  ▲神経学的検査
    第1相; 頸部の内在筋の筋力テスト
      前屈    胸鎖乳突筋(脊髄副神経、第11脳神経)
      後屈    傍脊柱伸筋群(板状筋、半棘筋、後頭筋群)
            僧帽筋
      回旋    胸鎖乳突筋
      側屈    前、中、後斜角筋      第2相;神経学的レベルによる検査
  ▲神経学的解剖)
  神経は椎体を出て前斜角筋と中斜角筋の間を通り、
              すぐC5とC6の神経根は一緒になり上神経幹(upper trunk)を作る。
  C8とT1の神経根は一緒になり下神経幹(lower trunk)を作る。
  C7は他の神経根と一緒にはならずそれだけで中神経幹(middle trink)を作る。
  上神経幹と下神経幹は中神経幹に分岐を出し、それらが後側神経束(posterior
  cord) を作る。
  中神経幹も分岐を出しC5、C4の上神経幹と一緒になり外側神経束   (lateral cord)を作る。
  C8、T1の下神経幹は分岐を出した後に内側神経束(medial cord)を作る。
  外側神経束より外側胸神経、筋皮神経が分岐する。
  外側神経束と内側神経束が一緒になって正中神経を作る。
  内側神経束からは内側胸神経、内側上腕皮神経、内側前腕皮神経、尺骨神経が分岐
  後側神経束からは上肩甲下神経、胸背神経、下肩甲下神経、腋窩神経、橈骨神経
  が分岐する。
   外側神経束よりの末梢神経
      1筋皮神経
      2正中神経への神経
   内側神経束よりの末梢神経
      1尺骨神経
      2正中神経への神経
   後側神経束よりの末梢神経
      1腋窩神経
      2橈骨神経
  ▲知覚分布)  
   C5;上腕外側 /腋窩神経
   C6;前腕外側、母指示指中指の橈側 /筋皮神経知覚枝
   C7;中指
   C8;環指小指、前腕内側 /内側前腕皮神経(内側神経束より)
   T1;上腕内側 /内側上腕皮神経(内側神経束より)
   神経学的レベル;C5)
      筋力テスト
         三角筋:C5腋窩神経
         上腕二頭筋:C5C6筋皮神経
      反射テスト
         上腕二頭筋反射:C5(C6)
      知覚テスト
         上腕外側:腋窩神経
   神経学的レベル;C6)
      筋力テスト
       手関節伸筋群:C6橈骨神経
        1 長橈側手根伸筋(C6)
        2 短橈側手根伸筋(C6)
        3 尺側手根伸筋(C7)
        上腕二頭筋:C6筋皮神経
      反射テスト
           腕橈骨筋反射
           上腕二頭筋反射:C5C6
      知覚テスト
           前腕外側:筋皮神経
   神経学的レベル;C7)
      筋力テスト
         上腕三頭筋:C7橈骨神経
         手関節屈筋群:C7正中神経、尺骨神経
           1 橈側手根屈筋(正中神経)
           2 尺側手根屈筋(尺骨神経)
         指伸筋群:C7橈骨神経
            1 総指伸筋
            2 示指伸筋
            3 小指伸筋 
      反射テスト
           上腕三頭筋反射
      知覚テスト     
           中指
   神経学的レベル;C8)
      筋力テスト
         指屈筋群
        1 浅指屈筋(PIP)、正中神経
        2 深指屈筋(DIP)、尺側半分は尺骨神経
               橈側半分は橈骨神経
      知覚テスト
           環指、小指、前腕尺側遠位
           小指尺側は尺骨神経の知覚固有域
   神経学的レベル;T1)
      筋力テスト
           指外転筋群:尺骨神経
             1 背側骨間筋
             2 小指外転筋
      知覚テスト
           上腕内側:内側上腕皮神経
   ▲特殊な検査
    牽引テスト(distraction test)
       頸椎牽引によって疼痛が軽快する効果をみる
       狭窄による神経根の圧迫からくる疼痛に有効
    圧迫テスト(compression test)
     神経孔の狭小化、椎間関節にかかる圧力の増加、筋のスパズムなど
     が原因で、圧迫することで疼痛が増強する。
     また、頸椎から上肢への放散痛により神経学的レベルの局在診断に
     有効
    バルサルバテスト(Valsalva test)
       腹圧を増強させると頸椎の疼痛が増加する
       頸椎椎間板ヘルニア、腫瘍といった頸椎管の狭窄をきたす
病変が頸椎にあるときに陽性
    嚥下テスト(swallowing test)
       嚥下困難、嚥下痛
       骨の突出、骨棘といった頸椎自体の病変、
           頸椎前方部の血腫、感染、腫瘍といった軟部組織の腫脹
    アドソンテスト(Adson test)
       圧迫された鎖骨下動脈の状態をみる
       頸肋、緊張した前斜角筋、中斜角筋の間での圧迫

 

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顎関節 (tempromandibular joint)


 

   1日に約1500〜2000回開閉する。
   ▲視診      1)関節の動いている時の遊脚相(swing phase)
     2)閉口している時の立脚相(stance phase)
     顎関節  蝶番運動(関節上部)と滑動運動(関節下部)
        半月板で関節を上下に分ける。
        外翼状筋の双頭は開口の際非同期性に働く、すなわち         一方が顎関節を開く時にもう一方は半月板を前方に引張る。
   ▲骨の触診
    外耳道に示指を入れ、前方に押しつけ、患者にゆっくり口を開けさ
せると下顎頭(mandibular condyle)の動きが示指で触診できる。
    両側同時に触診する。
    轢音(crepitation)やクリック(click);半月板損傷、滑膜腫脹
    できるだけ大きく開口させ顎関節が脱臼するか調べる。
   ▲軟部組織の触診
     頸椎過伸展で顎関節脱臼が生じる。
     顎関節脱臼を合併した頸部損傷の場合、頸椎牽引は顎関節に
負荷をかけ結果的に傷みを増強する。
     歯牙の不整または完全な閉口ができないことが顎関節の
クリックの原因となる。
    外翼状筋(external pterygoid)
           外傷をうけると、引伸されて緊張し、顎関節の疼痛、
非対称性の動きがおきる。
   ▲関節可動域
     門歯の間に3本の指が入る(35〜40mm)くらい開口できる。
   ▲神経学的検査
      筋力テスト; 開口:外翼状筋(三叉神経下顎枝)
             閉口:咬筋(三叉神経)、側頭筋(三叉神経)
      反射テスト
       下顎反射(jaw reflex)
        咬筋、側頭筋による伸張反射(第X脳神経、三叉神経)
          低下消失:第X脳神経に病変
        亢進:上位運動ニューロンの病変
   ▲特殊な検査
      クボスティック テスト(Chvostek test)
           第Z脳神経(顔面神経)のテスト
        咬筋がおおっている耳下腺部を叩くと、低Ca血症
があれば顔面筋がピクピクと収縮する。tetanusの検査。

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歩行

 ▲立脚相 (60%)
    1 踵接地期(HEELSTRIKE)
    2 足底接地期(FOOTFLAT)
    3 立脚中期(MIDSTANCE)
    4 趾離地期(PUSHOFF)
 ▲遊脚相(40%)
    1 加速相(ACCELERATION)
    2 遊脚中期(MIDSWING)
    3 減速期(DECELERATION)
 1)左右の足の開きは踵と踵の幅が5〜10CM以内
 2)体の重心の位置は第2仙椎の前方5CM のところ。
   正常歩行では重心の位置は上下方向に5CMしか動揺しない。
 3)重心の位置が過度に動揺しないために膝関節が立脚相の
各時期にわたって、踵接地期を除く)ずっと屈曲している。
 4)骨盤と体幹の側方移動は、歩行中は股関節へ体重がかかる
ように、約2、5CM体重負荷側へ移動する。
   中殿筋が弱いと体幹と骨盤の側方移動は著しく増強する。
 5)平均的な歩幅は約38CM。
 6)1分間に約90〜120歩,平均エネルギー消費量100cal/mile
 7)遊脚相では骨盤が前方に4゜回旋する。
   反対側の股関節がこの回旋の支点となる。
 
▲立脚相
 有痛性歩行(antalgic gait)
  患者は可能なかぎり患肢への体重負荷期間を短縮し、痛みを避け
ようとする。
 1)踵接地期(HeelStrike)
    踵骨底面の内側結節面の骨棘の突出は踵骨棘(heel spur)と
なってくる
    足部痛の原因となる。時がたつと保護の目的で滑液包が覆う。
   膝関節
    伸展して接地する。大腿四頭筋筋力低下や膝関節屈曲位で固定
されている
患者では、踵接地時に膝関節が不安定になり伸展方向に手で
膝を押える。
 2)足底接地期(FootFlat)
   足部の背屈筋群(前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋)は足底が
床に滑らかに遠心性収縮をおこないながら足関節は底屈する。
   足関節背屈筋の筋力低下により、踵接地後足部がバタンと落ちる。
 3)立脚中期(MidStance)
   足底面全体に均等に体重が負荷される。
   扁平足、距骨下関節炎;でこぼこ道を歩く際に疼痛ともなう。
   縦アーチの陥没により扁平足になる。
   横アーチの陥没による中足骨骨頭上の胼胝により疼痛をきたす。
   かぎ爪趾(claw toe)の背側に胼胝ができ、疼痛の原因となる。
   膝関節;完全には収縮していない。安定させるために、四頭筋が
収縮する。
   股関節;約2、5CM体重負荷側へ移動する。
       外転筋、中殿筋跛行;患側への側方傾斜。
       伸筋、大殿筋跛行;股関節伸展を維持するために胸郭を
後方へ反らす。 
 4)趾離期(Push Off)
   強直性屈趾症(hallux rigidus),変形性関節症の患者では、母趾
MP関節の過伸展不可。
疼痛の為、前足部外側から趾離地をすることになる。
   (靴のしわが斜めにはしる)
▲遊脚相
 1)加速期(Acceleration)
   足関節背屈筋群が収縮して、足関節を中間位にたもつ。
   膝関節;最大65゜屈曲位になる。
   股関節;大腿四頭筋が収縮して下肢を前方に振りだす際の助けにする。
 2)遊脚中期(MidSwing)
   足関節背屈筋麻痺により床に靴の先端部をこする;
   つまさきこすり(shoe scrap)
   代償動作として過度に股関節屈曲、膝関節屈曲歩行;鶏歩(steppage gait)
 3)減速期(Deceleration)
   ハムストリング筋の収縮;制御された動きで静かに床へ踵を接地するため。
   ハムストリング筋が弱いと踵接地期のショックが激しくなり踵の皮膚が
   厚くなる。そして膝関節は過伸展となる。(反張膝)

▲まとめ
 立脚相
  筋力低下>
 1)前脛骨筋(L4)に筋力低下のある患者は下垂足歩行
 2)中殿筋(L5)に筋力低下のある患者は外転筋または中殿筋歩行
 3)大殿筋(S1)に筋力低下がある患者は伸筋または大殿筋歩行
 4)下腿三頭筋(S12)の筋力低下がある患者は弱い趾離地のため
扁平足歩行
 5)大腿四頭筋(L234)に筋力低下のある患者は反張歩行
  不安定性>
 1)不安定な患者は左右の足の開きを10CM以上開いて歩行
 2)足底感覚の低下した患者(DM、梅毒、末梢神経炎)では歩幅を広くする
 3)小脳患者は左右の足の開きを広くする
 4)膝蓋骨脱臼の患者は不安定膝となり突然膝崩れをきたす
 5)半月板断裂の患者は不安定膝となり動揺が生じる
 6)側副靱帯断裂の患者は不安定膝となり動揺が生じる。
 疼痛>
 1)靴に問題のある患者は立脚相のすべての時期で疼痛を感じ、有痛性歩行となる
 2)踵骨に骨棘のできている患者では立脚相の踵接地期に疼痛が生じる。
 3)膝関節、股関節に変形性関節症のある患者は立脚相すべての時期に痛みを
   感じる。なるべく早く立脚相を終ろうとする。
 4)強直性屈趾症の患者は疼痛のため十分な趾離地ができないので扁平足歩行
   となる。
 固定された関節>
 1)足関節、膝関節、股関節が固定された患者はすべての相で支障あり。
   1関節のみ固定された状態では、代償動作を行なうのではなはだ
しい支障とはならない。
▲遊脚相
 筋力低下>
 1)背屈筋群の筋力低下のある患者は鶏歩となる。
 2)大腿四頭筋の筋力低下の患者は加速ができなくなるので、異常な
股関節の回旋を伴ってくる。
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股関節と骨盤

 骨盤帯は1)股関節(臼蓋大腿関節) 2)仙腸関節 3)恥骨結合
の3つの関節からなる。
▲視診
股関節、骨盤周辺に皮膚の擦過、色素脱失、あざ、水泡、瘻孔、腫脹、
膨隆、しわはないか気をつける。
立位時に、上前腸骨棘が水平かどうか。
水平でなければ、下肢長差による傾斜 (pelvic obliquity,tilted pelvis)
側面では普通、生理的前弯(lordosis)がある。
 前弯がすくない(傍脊柱筋の過緊張) 前弯が強い(腹筋の筋力低下)
後方からみるとから殿部のひだを見る。
 小児のひだの非対称(先天性股関節脱臼、筋萎縮、骨盤の傾斜、下肢長差)
▲骨の視診
前面) なるべく立位で診察する
  上前腸骨棘(anterior superior iliac spine)
    腸骨稜(iliac crest)
  腸骨結節(iliac tubercle)  腸骨稜最上部より約7、5pのところ
  大転子(great trochanter)  後側縁が触れやすい
  恥骨結節(pubic tubercle)  大転子最上部と同じ高さ
     後面) 側臥位で診察する
  上後腸骨棘(posterior superior iliac spine)
  上後腸骨棘の上に母指を固定してもう一方の手で腸骨稜の後方から
  腸骨結節に向って触診すると上後腸骨棘から上前腸骨棘まで腸骨稜
  全体が皮下に触れる。
  大転子(great trochanter)  後面が触れる
  坐骨結節(ischial tuberosity) 殿部ほぼ中央で殿部のひだと同じ高さ
   股関節屈曲位で触れやすい。小転子と同じ高さ
  仙腸関節(sacroiliac joint)
   関節の中心はS2と上後腸骨棘を結んだ線上にある。
   腸骨稜最上部を結んだ線はL4とL5の棘突起間にある。
▲軟部組織の触診 1)大腿三角 2)大転子 3)坐骨神経 4)腸骨稜
        5)股関節および骨盤の筋群
<1>大腿三角(femoral triangle)
   鼠径靱帯(inguinal lig) 上前腸骨棘 と恥骨結合を結ぶ
  長内転筋(adductor longus) 
   縫工筋
    鼠径靱帯; 上前腸骨棘 と恥骨結合を結ぶ
    大腿動脈femoral artery;
          鼠径靱帯のほぼ中央の下を通る
    大腿神経femoral nerve;
          大腿動脈の外側
    大腿静脈femoral vein
          大腿動脈の内側
       *内側より
VAN(Vein Artery Nerve)
    縫工筋 sartorius  
       体の中で最長の筋
         上前腸骨棘の少し下方に起始部
       大腿骨内側上顆の後を回り脛骨粗面内側に付着。
       L2L3(大腿神経)
       股関節屈曲、膝関節屈曲。
       停止腱は薄筋、半腱様筋 の筋膜と重なって鵞足(pes anserinus).
    長内転筋 adductor longus
       股関節外転で触れやすくなる。
       恥骨結合部より大腿内側中央部に走る明確な輪郭をしめす.
       強い起始腱で恥骨結節下方から起こり外下方に広がり
       大腿骨粗面内側唇に付着。
       L2L3(閉鎖神経前枝)、股関節内転
    大腿三角部の中央にリンパ節が存在する
<2>大転子 greater trochanter        25
    側臥位にて触診
    大転子の滑液包 trochanteric bursa
       炎症が無い限り触れない
    中殿筋 gluteus medius
腸骨翼外面から起始。
三角形をなして外下方へ向い扇状に集って
      大転子の上外側部に付着。
       上殿神経(L4L5S1)
       股関節外転。
       股関節が屈曲、内転し加重がかかると大腿筋膜張筋
       (tensor fascia lata)は大転子の前面を覆う
       疼痛があまり強くない限り又は大転子滑液包炎程度で
ある限り弾発股(snapping hip)は重大な障害とはならない。
<3>坐骨神経 sciatic nerve   側臥位で診察
    坐骨神経
       坐骨神経と大転子の中間を通る。
       股関節屈曲位にて触診可能(大殿筋が上方に移動する)
            坐骨滑液包炎はその位置を確認し正確な疼痛部位を明確
にしなければ坐骨神経痛と混同することがある。
<4>腸骨稜
    下を殿皮神経が通る。殿筋や縫工筋の起始部。
    殿皮神経 cluneal nerse
    上後腸骨棘と腸骨結節の間の腸骨稜を覆う皮膚の知覚を支配
<5>股関節および骨盤帯の筋群       
 1)屈筋群、前側
     腸腰筋(iliopsoas)
        1)腸骨筋(m.iliacus) 腸骨窩、下前腸骨棘から起始。
        2)大腰筋(m.psoas major) Th12〜L4椎体(浅頭)、
         肋骨突起(深頭)から起始。
        3)小腰筋(m.psoas minor)Th12,L1椎体前面から起始。
         合して鼠径靱帯下の筋裂孔をへて小転子に付着。
         腰神経叢と大腿神経の枝(L1ーL4)
         股関節屈筋。他の筋の深部にあり触知不可。
         変形性股関節症ではしばしば腰筋滑液包に炎症を生じる。
         腸腰筋 の異常緊張は股関節の屈曲変形をきたす。
     縫工筋(sartorius)
         長い紐状の筋
     大腿直筋(rectus femoris)
       股関節と膝関節にまたがる筋 。股関節屈曲、膝関節伸展。
       大腿四頭筋の中で唯一の2関節筋。
       下前腸骨棘(direct head) および寛骨臼(indirect head)
       の上方から起始。(2つの起始部をもつ)
       direct headはスポーツ外傷によってしばしば剥離する。
       膝蓋靱帯として脛骨粗面に着く。腱両側の繊維の一部は
       内側外側膝蓋支帯(retinaculum patellae med. lat.)と
       なり脛骨粗面の両側に付着。(L2ー4)
 2)内転筋群、内側
     薄筋、恥骨筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋
     薄筋(m.gracillis)
      恥骨外側から起始。大腿最内側を下り脛骨内側面に付着。
      停止腱は鵞足。
      閉鎖神経前枝。(L2ーL4)
         股関節内転、膝関節屈曲。
     恥骨筋(m.pectineus)
      恥骨櫛から起始。後外下方に向い大腿骨上部に付着。
      大腿神経(L2L3)  大腿屈曲、内転
     長内転筋(m.adductor longus)          27
      恥骨結合部より大腿内側中央部に走る明確な輪郭をしめす.
      強い起始腱で恥骨結節下方から起こり外下方に広がり
      大腿骨粗面内側唇に付着。
      L2L3(閉鎖神経前枝)、股関節内転
     短内転筋(m.adductor brevis)
        恥骨から起始、大腿骨粗面に停止。
        L2L3(閉鎖神経前枝)、股関節内転
     大内転筋(m.adductor magnus)
      最も強い内転筋
      恥骨、坐骨枝、坐骨結節から起始、大腿骨粗面内側唇
と内側上顆に付着。
      閉鎖神経後枝(L2ーL4)、坐骨神経(脛骨神経部
L4L5)
      股関節内転
 3)外転筋群、外側
     中殿筋と小殿筋(小殿筋は中殿筋の深部にあり触知不可)
              中殿筋(gluteus medius)
      腸骨翼外面から起始。三角形をなして外下方へ向い扇状に
      集って大転子の上外側部に付着。
      上殿神経(L4L5S1)       股関節外転。
      中殿筋筋力低下で中殿筋跛行(gluteus medius lurch)
 4)伸筋群、後側
     大殿筋とハムストリング筋
     大殿筋(m.gluteus maximus)
     腸骨翼外面、仙骨、尾骨から起始。
     上部と表層の筋束は腱板となり大転子を越えて腸脛靱帯深層に
     移り、下部と深層の筋束は大腿骨の殿筋粗面に付着。
     下殿神経(L5S1)  
     股関節伸展、外旋
     ハムストリング筋(膝屈筋、hamstring muscles)
        外側は大腿二頭筋、内側は半腱様筋、半膜様よりなる。
        大腿二頭筋(m.biceps femoris)
          短頭は(caput breve)は大腿骨幹粗面外側唇から、
          長頭(caput longum)は坐骨結節から起始。
          腓骨頭に付着。
          坐骨神経(短頭は腓骨神経部L2ーL4、
               長頭は脛骨神経部L5ーS2)
          股関節伸展、外旋、膝関節屈曲
        半腱様筋(m.semitendinosis)
          坐骨結節から起始、脛骨粗面内側に停止(鵞足)
          坐骨神経脛骨神経部(L4ーS2)
        半膜様筋(m.semimembranosis)
          坐骨結節から起始、脛骨内側窩後部に停止。
          坐骨神経脛骨神経部(L4ーS2)
        *鵞足(pers anserinus)
   縫工筋、薄筋、半腱様筋の脛骨粗面内側部の停止腱。
▲関節可動域
 自動運動可動域
     外転0〜45゜   内転0〜20゜
     屈曲0〜135゜  
     屈曲内転;椅子に座らせて一方の大腿の上に他方の大腿を交叉させる。
     屈曲外転外旋;一方の足の外側が対側の膝関節の上にくるようにする。
     伸展;胸の前で腕組みさせて背を曲げることなく椅子より立上がらせる。
 他動運動可動域
     屈曲(トーマステスト Thomas test) 120゜
     伸展 30゜
     外転 45゜〜50゜
     内転 20゜〜45゜
     内旋 35゜   外旋 45゜
      股関節伸展時、90゜屈曲時ともにおこなう。
      正常では大腿骨長軸と大腿骨の内顆外顆に対して頸部は15゜前棯       している。
      過度の前棯で下肢内旋を生じる。(うちわ歩行toe-in gaitの原因)
      逆に過度の後棯では下肢外旋を生じる。(そとわ歩行toe-out gait)
      小児においては大人より前棯角は大きい。
      思春期の急激に発育する時期においては大腿骨頭すべり症
     (slipped capital femoral epiphysis)を生じ、大腿骨頭は後下方
     にすべり大腿骨頸部は相対的に後棯を生じ内旋制限を生じて下肢外旋
     が増加する。
     変形性関節症では内旋外転制限が強い。

▲神経学的検査
筋力テスト
 屈筋群  腸腰筋;大腿神経(L1、2、3)  座位で検査
 伸筋群  大殿筋;下殿神経(S1)    膝を屈曲して検査
 外転筋  中殿筋;上殿神経(L5)    側臥位で検査
 内転筋  長内転筋;閉鎖神経(L2、3、4)
    筋力   
   5 正常(normal)    重力と十分な抵抗に抗して全可動域動く
 4 優(good)      重力と中程度の抵抗に抗して全可動域動く
 3 良(fair)      重力に抗して全可動域動く
 2 可(poor)      重力を除くと全可動域動く
 1 不可(trace)     筋の収縮は認められるが運動はおこらない
 0 ゼロ(zero)     筋の収縮が認められない
 知覚テスト
      臍のレベル  T10
      鼠径部    T12
      大腿上前部  L1
      膝蓋骨直上  L3
      殿皮神経(L1、2、3の後方第1枝)
 1)腸骨稜部
        2)上後腸骨棘と腸骨結節の中間部
        3)殿部
      後大腿皮神経(S2)      大腿後面
      外側大腿皮神経(S3)     大腿外側
      肛門周囲   S2(最外側の輪)
             S3S4(再内側の輪)
▲特殊な検査
トレンデレンブルクーテスト(Trendelenburg test)
    中殿筋の筋力を調べる目的
    内反股、大転子骨折、大腿骨頭すべり症、先天性股関節脱臼、
    ポリオ、脊髄髄膜瘤、神経根損傷
脚長差のテスト
   真の脚長差;上前腸骨棘から足関節内果までの距離
   見かけの脚長差;臍(又は剣状突起)から足関節内果までの距離
           骨盤の傾き、股関節の内転又は屈曲拘縮による
腸脛靱帯拘縮のためのオーバーテスト(Ober test)
  腸脛靱帯又は大腿筋膜張筋の拘縮のテスト
  患肢上の側臥位。膝関節90゜屈曲位にて股関節を外転し、腸脛靱帯を
  ゆるめる。外転した下肢をはなすと、腸脛靱帯が正常ならば下肢は内
転位に落ちて行く。
腸脛靱帯、大腿筋膜張筋に拘縮があると下肢を離しても
   外転位のままとどまる。
   ポリオ、脊髄髄膜瘤で陽性
先天性股関節脱臼のためのテスト
 オルトラニのクリック、テスト(Ortolani-click)
  先股脱において、屈曲した股関節を外転、外旋すると大腿骨頭は
  寛骨臼蓋縁を乗越えて整復されクリックを生じる。
 テレスコープ現象(telescoping)
  一側の手で膝関節部を握って大腿骨を牽引する。
  他方の手で骨盤を固定し母指を大転子の上に置く。
  大腿を牽引すると大転子が骨盤から離れてゆき、手をゆるめると
  上方に再び移動することが確かめられる。この異常な運動が
 テレスコープ現象という。
  内転拘縮
   股関節を90゜屈曲して開排してゆく。
   正常では両側とも90゜開排されるが、先股脱のある患者は開排制限
   がある。
   開排角度の左右差
関連領域の検査  直腸診(rectal examination)
         肛門括約筋反射(S2、3、4)深部肛門反射(S5)

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膝関節

 ▲視診
      膝の腫脹  局所性(滑液包) 
             膝蓋骨上(膝蓋前滑液包炎)
           脛骨粗面の上(膝蓋下滑液包炎)
           膝窩嚢腫
           脛骨粗面の内側面(鵞足滑液包炎)
       全体性(関節内)
         関節内出血や滑液の分泌の原因となる滑液膜の
         刺激症状(滑膜炎)
         滑膜肥厚は膝関節は通常、膝全体に急激に腫脹が及ぶ。
         関節包容量は伸展よりも屈曲において大きいため、
         腫脹を緩和するため軽度屈曲している。
   筋の萎縮  特に内側広筋(膝関節術後に萎縮しやすい)
   外反膝(knock knees)
   内反膝(bow knees)
   内反膝(genu recurvatum)
 ▲骨の触診
  <内側面>
   内側脛骨プラトー面(medial tibial plateau)
        鋭い上縁。内側半月板の付着部
   脛骨粗面(tibial tub)
    膝蓋靱帯が付着。脛骨粗面の内側、脛骨プラトーのはりだしの下では
    皮下に脛骨が直接触れる。この部分は鵞足の付着部と滑液包がある。
   大腿骨内側顆 (medial femoral condyle)
      鋭い内側縁。
      離断性骨軟骨炎、変形性関節症による軟骨の欠損を触知。
      変形性膝関節症で骨棘を触知。
   内転筋結節(adductor tubercle)
      大腿骨内側上顆の後内側部に位置する。
      内側広筋とハムストリング筋の間の筋溝の遠位部。
  <外側面>
   外側脛骨プラトー(lateral tibial plateau)
   外側結節(lateral tubercle)
   大腿骨外側上顆(lateral femoral condyle) 鋭い縁
   大腿骨外側上顆(lateral femoral epicondyle)
   腓骨頭(fibural head) 脛骨粗面とほぼ同じ高さ
  <滑車切痕と膝蓋骨>
   膝蓋骨(patella)
   滑車切痕(trochlear grooves)  伸展時に検査
 ▲軟部組織の触診
  <前面>
  大腿四頭筋(quadriceps)
   内側広筋は外側広筋より遠位に広がっている。
   断裂は大腿直筋や中間広筋の末梢で膝蓋骨のすぐ近位部によく見られる。
   脛骨内側プラトーの縁から7、5p上で大腿周径を測定することにより萎縮
   を調べる。
  膝蓋靱帯(infrapatellar tendon)
     膝蓋骨下縁から脛骨粗面付着部まで触診可能
     Osgood-schlatter's disease
     滑液包炎
       前膝蓋滑液包(prepatellar bursa)
           過度の膝立ちと前方への傾き(houseman's knee)の
           結果炎症を生じやすい。
       浅膝蓋下滑液包(superficial infrapatellar bursa)
              過度の膝立ちの結果炎症を生じる。
       深膝蓋下滑液包(deep infrapatellar bursa)
       鵞足滑液包(pes anserine bursa)
              鵞足(縫工筋、薄筋、半腱様筋の共通腱)、
              脛骨粗面の内側
<内側面>
   内側半月板(medial meniscus)
       冠状靱帯により脛骨プラトーの上縁に固定される。
       脛骨を内旋すると内側半月板が触診できる。
       脛骨を外旋すると内側半月板は後退する。
       内側半月板が断裂すると内側関節裂隙に圧痛(+)
       内側半月板のほうが外側半月板より断裂の頻度が高い。
   内側側副靱帯(medial collateral ligament)
       幅広い扇状の靱帯で大腿骨内側上顆と脛骨を結合する。
       深層と浅層の2部分からなる。
       深層部は脛骨プラトーと半月に付着する。
       表層部はもっと遠位部で脛骨のはりだし部に付着する。
       内側側副靱帯は関節包の一部をなす。
       外反方向への外力で断裂する。
    縫工筋、薄筋、半腱様筋
     半腱様筋(semitendinosus muscle)はもっとも後方に表層の腱。
     薄筋(gracilis)は半腱様筋より少し前内側に位置する。
     下肢の内旋に抵抗を加えるとさらにはっきりする。
     薄筋の上で広く厚い筋の帯は縫工筋(sartorius)。腱様ではなく
     もっとも触診困難。
     鵞足滑液包炎
 <外側面>
   外側半月板(lateral meniscus)
     膝関節屈曲位で触れやすい。
    冠状靱帯により脛骨プラトーの周縁に固定され、断裂時は半月が
    遊離する原因となる。この場合外側関節裂隙に圧痛がある。
    半月は膝窩筋に付着しているが、外側側副靱帯には付着していない。
    そのため内側半月板より可動性を有し、まれにしか断裂しない。
    外側半月嚢腫(cyst)は、ときどき関節裂隙に発生し、有痛性の硬い
    かたまりとして触れる。
   外側側副靱帯(lateral collateral ligament)
       大腿骨外側上顆と腓骨頭を連結する強固な靱帯。
       関節包と独立して存在する。
       股関節外転、外旋位で膝関節90゜屈曲位で触診しやすい。
       (下肢を交叉させ、対側の膝の上に足関節を置く。)
       靱帯は関節から離れて存在し関節裂隙に沿って外側後方に位置する。
   前上脛腓靱帯(anterior superior tibiofibular ligament)
       脛骨と腓骨頭の間の間隙に存在する。
       腓骨頭の前内側。障害されること稀。
   大腿二頭筋(biceps femoris)
       膝関節屈曲時、大腿二頭筋腱は腓骨頭に付着する前に膝関節を越える        部位で突出する。
   腸脛靱帯(iliotibial tract)
       膝の外側面の前方に位置する。外側脛骨結節に付着する。
       膝が伸展し足が持上げられた時や、膝関節が抵抗に抗して屈曲された        時、触診されやすい。
       膝蓋靱帯のもっとも近位部のすぐ外側にある腸脛靱帯の前縁が触診の        ためにもっとも役立つ部位。
   総腓骨神経        腓骨頭を横切る部分で触診。
       過度の圧排は神経を障害し下垂足の原因になる。
 <後面>
   膝窩(popliteal fossa)
       上外側縁は大腿二頭筋腱突出部により形成される。
       上内側縁は半膜様筋と半腱様筋の腱。
       下縁は腓腹筋の2頭(内側頭と外側頭)
    後腓骨神経(posterior tibial nerve)
       坐骨神経の分枝。膝窩部の最も表層を通る。
   膝窩静脈(popliteal vein)
       後脛骨神経の直下。
   膝窩動脈(popliteal artery)
       一番深層に存在。
       関節包に接して走行。
       膝関節屈曲位にて触診可能。
       膝窩嚢腫又はベーカー嚢腫(Baker's cyst)
        (一般に腓腹筋、半膜様筋滑液包の腫脹)
        膝関節伸展時に触診しやすい。疼痛なく、膝窩内側に動く腫脹。
   腓腹筋(gastrocnemius)
       内側頭・外側頭は、膝関節屈曲に抵抗を加えた時、
       大腿骨内外側顆直上の大腿骨後面に起始を触れる。
 ▲関節の不安定性テスト
  側副靱帯
    内側側副靱帯のテスト
      膝関節軽度屈曲位で内側の膝関節裂隙を開くように外反外力を加える。
      膝関節内側裂隙の開きを触診するが開きがあればみてもわかる。
      関節への外力を除去すると脛骨と大腿骨の接触音を感じる。
  外側側副靱帯のテスト
      外側の膝関節裂隙を開くように内反外力を加える。
      関節への外力を除去すると脛骨と大腿骨の接触音を感じる。
  十字靱帯(cruciate ligament)(前後十字靱帯)
      脛骨に起始、大腿骨両顆部の内側に付着。
      検者の指が内外側ハムストリング筋の停止部に、母指が内外側関節裂隙       にあたるようにする。
     前方引出しテスト陽性の時は患者の下腿の内旋、外旋を繰返し行なう。
      一般に下腿外旋で関節包の後内側部が緊張し、前十字靱帯が断裂して
      いても大腿骨に対する脛骨の前方への動きは小さくなる。したがって
      下腿外旋時でも中間位と同様に前方引出しが陽性なら前十字靱帯と
      関節包の後内側部の両方に損傷がある。
      (内側側副靱帯の損傷の可能性もある)
      下腿内旋位では膝の後外側部がが緊張する。したがって内旋位でも
      中間位と同様に前方引出しが陽性なら前十字靱帯と関節包の後外側部
      の両方に損傷がある。
      前十字靱帯は内側側副靱帯とともに断裂することが多い。
     後十字靱帯は後方引出しテスト(posterior draw test)
      単独損傷は稀。
 ▲関節可動域
 1 屈曲(滑動に関連して)  2 伸展(滑動に関連して)  3 内旋外旋
  屈曲と伸展は大腿骨と脛骨の間で行なわれる。
内旋外旋は脛骨と大腿骨の間の動きに合せて脛骨上の半月の移動とともにおこる。
伸展は大腿四頭筋により行なわれる。屈曲はハムストリング筋と重力によりおこな
われる。
内旋外旋(膝が軽度屈曲した時生じる)は内側の半膜様筋、半腱様筋、薄筋、
縫工筋と外側の大腿二頭筋の交互の活動により行なわれる。
▲自動関節可動域
(屈曲)
     深くしゃがみ込ませる。両膝が対称的に屈曲可能かをみる。
(伸展)
   しゃがみ込みから立つよう指示する。膝関節が十分伸びているか。
   診察台の端に座らせ膝関節を十分伸すよう指示する。
   場合により伸展最後の10゜ができないか、最大努力してかろうじて伸展
   し終えることができる時、伸展ラグ(extension lag)と呼ばれ大腿四頭筋
   筋力低下に起因する。
   大腿骨に対し脛骨はいくらかの外旋なしでは完全伸展できない。
   大腿骨内顆が外顆よりも2、5p長い為。screw home運動
(内旋外旋)
     正常では内旋外旋ともに約10゜可能。
▲他動関節可動域 
  屈曲 135゜
  伸展  0゜
  内旋 10゜  外旋 10゜
▲神経学的テスト
 筋力テスト
  屈曲  
  大腿四頭筋(m quadriceps femoris);次の4頭からなり大腿伸筋のほとんど
      全部を作る強大な筋。大腿直筋は寛骨から、ほかの3頭は大腿骨から
      おこる。股関節屈曲、膝関節伸展
   1)大腿直筋(m.rectus femoris)
      下前腸骨棘、寛骨臼から起始。
      膝蓋骨を介して膝蓋靱帯となって脛骨粗面に付着。
      大腿神経(L2ー3)
   2)外側広筋(m.vastus lateralis)
      大腿骨粗線の外側唇から起始。
      膝蓋骨を介して膝蓋靱帯となって脛骨粗面に付着。
      (L34)
   3)中間広筋(m.vastus intermedius)
      大腿骨の前面と両側面
      膝蓋骨を介して膝蓋靱帯となって脛骨粗面に付着。 
           (L2ー4)
   4)内側広筋(m.vastus medialis)
      大腿骨粗線の内側唇
      膝蓋骨を介して膝蓋靱帯となって脛骨粗面に付着。
      (L23)
 伸展        
  ハムストリング筋(膝屈筋、hamstring muscles)
    外側は大腿二頭筋、内側は半腱様筋、半膜様よりなる。
    大腿二頭筋(m.biceps femoris)
      短頭は(caput breve)は大腿骨幹粗面外側唇から、
      長頭(caput longum)は坐骨結節から起始。
      腓骨頭に付着。
      坐骨神経(短頭は腓骨神経部 L2ーL4、長頭は脛骨神経部 L5ーS2
          股関節伸展、外旋、膝関節屈曲
    半腱様筋(m.semitendinosis)
      坐骨結節から起始、脛骨粗面内側に停止(鵞足)
      坐骨神経脛骨神経部(L4ーS2)
    半膜様筋(m.semimembranosis)
      坐骨結節から起始、脛骨内側窩後部に停止。
      坐骨神経脛骨神経部(L4ーS2)
  *鵞足(pers anserinus)
縫工筋、薄筋、半腱様筋の脛骨粗面内側部の停止腱。
 ▲知覚テスト
  L5;下腿外側
  L4;膝下部内側(伏在神経)
  L3;膝のすぐ上の大腿前面(大腿神経)
  L2;大腿中央部の前面(大腿神経)  
  S2;大腿後面と膝窩部(後大腿皮神経)
 ▲反射テスト
  膝蓋腱反射(knee jerk) L2 L3 L4
    臨床的にL4の反射と考えて良い。
 ▲特殊な検査                
 マックマーレーテスト(McMurray test)
  断裂した半月は膝関節屈曲伸展の際に膝関節裂隙部で轢音
 (clicking)を感じたり聞くことができる。
   内外側どちらかの側の裂隙の触診で疼痛の誘発があれば、
  半月板の可能性を示唆する。
  半月後部断裂の診断は困難であり、マックマレーテストは
  この困難な診断のために考案された。
  検者は一方の手で踵をつかみ、患者の脚を十分屈曲する。
  次いで、検者の他方の手をひざのうえにおき、母指と母指球が
 外側関節裂隙に他方が内側関節裂隙に触れるようにする。
  膝屈曲位で大腿骨に対し脛骨を内旋外旋する。
  外旋し膝に外反外力を加えたまま、ゆっくり膝関節を伸展し
 内側関節裂隙を触診する。
  もし轢音が感じたり聞くことができたら、内側半月板断裂の
 存在を示し、通常は内側半月板の後方にあることが多い。
 アプレー(Apley)の圧迫、牽引テスト
  圧迫テスト(compression or grinding test)
  患者に膝関節90゜屈曲位で腹臥位をとらせる。固定の為、
 患者の大腿骨後面に検者の膝を軽くのせ、患者の踵の上に
 検者の体重を強めにのせる。
  強く圧迫したまま、大腿骨に対して脛骨を内旋外旋する。
  内側関節裂隙に疼痛が生じたら内側半月板損傷を示唆し、
 外側関節裂隙に疼痛が生じたら外側半月板損傷を示唆する。
 牽引テスト(distraction test)
  大腿骨後面を固定し、圧迫テストと同じ肢位で行なう。
  大腿骨に対し脛骨を内旋外旋しながら足を牽引する。この方法は
  半月板にかかる力を減じ、内側外側靱帯を緊張させる。もし靱帯に
 損傷があるなら患者は疼痛を訴え、半月のみの断裂であればこの
 テストにより傷みは生じない。
 Reduction click                  
  半月の断裂、位置移動または折れ重なり(heaped up)のため、
 膝関節をロックしたままの患者に適応する。肢位はマックマレー
  テストと同じである。
  reduction click手技の目的は、轢音とともに、半月の移動と
 断裂部分を整復することにある。
 このため膝関節を内旋外旋しながら屈曲させ、次に半月が
 適切な位置へすべりもどるまで膝関節を回旋させながら進展させる。
Bounce homeテスト
 半月断裂、膝関節内の遊離体、関節包内の腫脹により、膝関節が完全伸展
 できないことを調べる検査法である。
患者を仰臥位にさせ、検者の手掌で踵をつかみ、膝関節を完全屈曲位まで
 曲げさせる。その後、他動的に膝関節を伸展させる。
 膝関節は伸展の最終点ではねかえった(Bounce home)後、完全に伸展する。
 膝に腫脹がある(半月板断裂、遊離体など)と、bounce homeの動きを
妨げられ伸展に対し抵抗を示す。
膝蓋骨圧迫テスト(patella femoral grinding test)
  膝蓋骨関節面のなめらかさを検査する。
  (膝蓋骨関節面と大腿骨滑車切痕の適合性を検査するテスト)
  患者を仰臥位にして下肢を中間位に保ちリラックスさせる。
  膝蓋骨を遠位方向に滑車切痕へ向け押す。
  次に患者に大腿四頭筋に力を入れるように指示する。
  検者の指で膝蓋骨に抵抗を加えその動きを触診する。
  膝蓋骨は滑らかにすべるのが正常であるが、関節面に不整があると
  膝蓋骨が動く時、捻髪音を感じる。
  テストが陽性ならば患者は疼痛と不快感を訴える。
  患者は階段の昇りや椅子からの立上がりに際し、疼痛を訴える。
  (膝蓋骨の不整な下面は滑車切痕に押しつけられる)
  膝蓋骨骨軟化症、骨軟骨の欠損、大腿骨滑車切痕の退行性変化で陽性。
膝蓋骨脱臼と亜脱臼の不安テスト(apprehension test)    
  膝蓋骨の外側脱臼をみるテスト。
  患者の下肢を伸し大腿四頭筋を弛緩させる。
     検者の母指で膝蓋骨の内側縁を外側方に押す。膝蓋骨が
脱臼し始めたら、患者は不安な表情を示す。
チネル徴候(Tinel sign)
 神経切断端の神経腫を叩打して又は再生繊維の末端刺激により疼痛を誘発する
 検査。伏在神経の膝蓋骨下枝の広がる脛骨粗面内側周辺に多い。
膝関節の浸出テスト(effusion test)
 広範な浸出テスト
   膝蓋跳動(ballotable patella)
   膝関節を伸展させ大腿四頭筋を弛緩させるよう指示。
膝蓋骨を滑車切痕に押しつけすばやく離す。
膝蓋骨下の大量の液は、はじめ外力により膝の両側に
   移動し、次に膝蓋骨を跳ね返し元の位置に戻る。
 小浸出テスト
   膝関節を伸展させたままで、膝蓋下小嚢と膝の外側から内側へ
浸出液を移動させる。浸出液が内側に貯留した時、液の上から関
節を軽く圧迫する。
   浸出液は外側に移動してふくらみをつくる。

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足部と足関節

▲視診
椅子に座らせ、安静時足部はどちらかといえば背屈外がえし位(痙性扁平足)
よりも底屈内がえし位をとっている。
正常では足部の背側は内側縦アーチ(第1中足骨骨頭から踵骨まで)によって
ドーム状になっている。
このアーチは非加重でより著明となる。
異常にアーチが高い凹足(pes cavus),アーチが消失した扁平足(pes planus)
小児では前足部内転(forefoot adductus)
後足部が過度に内反もしくは外反を呈することあり。
荷重時と非荷重時で足の皮膚の色調が変る。正常では荷重位から非荷重位に
移った時、暗赤色から明桃色になるには2〜3秒かかる。
足挙上位で明桃色になり、下垂位で真赤になれば小血管の病変もしくは動脈の
循環不全が疑われる。
 足部の皮膚は荷重部位(踵、外縁部、第1第5中足骨骨頭)で肥厚している。
病的な肥厚つまり胼胝(callosity)はその部位に異常な荷重がかかっている
ことで生じる。中足骨骨頸部に見られる。
足部、足関節の腫脹の有無を見る。
▲骨の触診
<内側面>
 第1中足骨骨頭(head of metatarsal bone)
  第1中足趾節関節(metatarsophalangeal joint,M-Pjoint)
  痛風やバニオン(bunion)が生じやすい
 第1楔状中足関節(metatarsocuneiform joint)
  第1楔状骨は他の楔状骨よりも約1、2pほど遠位に突出し
第1中足骨基部とすべり運動を行ない、一軸関節を形成。
 舟状骨結節(navicular tubercle)
  舟状骨(navicular)は5つの骨と関節を作っている。
  近位では距骨頭と、遠位では3つの 状骨と、外側では立方骨と
  関節をなす。
  時に小児で局所の圧痛と跛行を呈する舟状骨の無腐性壊死
 (aseptic necrosis)
 距骨頭(head of talus)             
  前足部の内がえし外がえしで確認できる。外がえしによって
舟状骨の下から距骨頭が現れる。
  内果と舟状骨結節の間を結んだ線を2等分したところにある。
  足を中間位にした時、わずかの陷凹として触れる。
 内果(medial maleolus)
  距骨内側の1/3と関節を形成する。
 截距突起(sustentaculum tali)
  内果の遠位端から約1横指、足底方向を触診すると截距突起がある。
  距骨を支持し、ばね靱帯(spring ligament)の付着部。
 距骨の内側結節(medial tubercle of talus)
  内果遠位端のすぐ後方にある。
  内側側副靱帯の後方の付着部。
<外側面>
 第5中足骨、第5中足趾節関節
  第1と第5中足骨骨頭が最も隆起している。
  第5中足骨の茎状突起(styloid process);短腓骨筋が付着。
  茎状突起のすぐ後方で立方骨の前には、立方骨自体の溝による
明瞭な陷凹がある。この陷凹には内側足底部へと走っている長腓
骨筋腱によってできている。
 踵骨(calcaneus)
 腓骨筋結節(peroneal tubercle)
  外果の遠位で踵骨にある外側の突起。
  長・短腓骨筋が踵骨外側を通る際に2つの腱を分けているところ。
 外果(lateral malleolus)
  腓骨の遠位端で内果よりも後方でしかも遠位まで突出している。
  外果の形態により足関節が15゜外旋位をとることができる。
又遠位方向に伸びていることで足関節の外がえし位での捻挫を防ぐ。
  あまりよく伸びていない内果はこの機構が十分ではなくよく見られる
  内がえし位での捻挫を防ぎきれない。
  外果の最前部のところに検者の母指をおき患者の足を底屈させると
  果間関節窩(ankle mortise)より距骨のドームの前外側部がでて触知可能。
<足根洞>                    
外果前方の軟部組織の陷凹(足根洞;sinus tarsi);短趾伸筋と軟部組織からなる。
 軟部組織を通して立方骨との関節の付近で踵骨の上背側面を触診可能。
 足を内がえしさせ指で強く足根洞を押すと距骨頸部の外側が触診可能。
距骨のドーム(dome of talus)
  内がえし底屈位にすると小範囲ではあるが距骨のドームが触知可能。
  内側よりも外側のほうが触知する範囲が広い。
遠位脛腓関節(inferior tibiofibular joint)
  距骨のすぐ近位にあり、前脛腓靱帯がこの関節を覆っているので触診しにくい。
  皮膚より直接わずかな陷凹を触知可能。
<後足部>
踵骨のドーム(dome of calcaneus)
  後1/3は足関節の後方から鋭く後方に突出している。
  足底部で外側に隆起している。
 踵骨内側結節(medial tubercle)
  踵骨内側足底面にあり、内側には母趾外転筋が、前方には短趾屈筋や足底腱膜   が付着している。 
  圧痛を伴った骨棘ができない限り、それ程めだったものではない。
  踵骨内側結節は荷重部であるが、外側結節は非荷重部である。
  小児において骨端炎(epiphysitis)による踵骨後面の疼痛は稀なものでは
  なく、踵接地期をさけるようになる。
<足底面>
種子骨(sesamoid bone)
  第1中足骨骨頭下に、短母趾屈筋腱の中に2つ存在する。
  第1中足骨頭は大きな荷重部位であり、種子骨もいくぶん荷重をうける。
     種子骨は趾離地期に母趾の屈筋腱の力学的な効率を高める作用をする。
  種子骨に炎症があれば圧痛がある。
中足骨骨頭(metatarsal head)
  前足部のアーチは中足骨骨頭のすぐ後方にある。
  このアーチによって第1と第5中足骨骨頭がもっとも突出している。
  胼胝は第2中足骨骨頭下にしばしば生じる。
  胼胝は第5中足骨骨頭下に時に生じる。
  第2、第3、第4中足骨骨頭部の疼痛は無腐性壊死(血液の供給不足による)
  によっておき有痛性歩行を呈する。
▲軟部組織の触診              46
 領域1 第1中足骨骨頭
  外反母趾(hallux valgus)、第1中足骨骨頭内側に滑液包炎やブニオンを形成。
  痛風の後発部位;第1中足骨骨頭内側、第1MP関節の痛風結節
 領域2 舟状骨結節と距骨頭
  距骨頭足底面は截距突起と関節を形成し、前面は舟状骨後面と関節を形成
  している。これら2つの関節の間には距骨頭を支持する骨性の組織はない。
  この間隙には後脛骨筋腱(tibialis posterior)と、截距突起から舟状骨
  へ走っているばね靱帯(底足踵舟靱帯)で保持される。
  扁平足では距骨頭は内側足底方向に移動し、ばね靱帯や後脛骨筋腱がのび
  内側縦アーチが消失する。
 領域3 内果
  三角靱帯(deltoid ligament)
   内果すぐ下方に触知
  幅の広くて強い靱帯(内果が比較的短いことの代償)
  触診時の疼痛や圧痛は足関節の外がえし位での捻挫による断裂を示唆。
  内果後方とアキレス腱の間の軟部組織の陷凹を触診すると前から後の順に
  1)後脛骨筋腱(tibialis posterior)
  2)長趾屈筋腱(flexor digitorum longus)
  3)後脛骨動脈(posterior tibial artery)と脛骨神経(tibial nerve)
  4)長母趾屈筋腱(flexor hallucis longus)     
   覚えかた"Tom Dick, anHarry"
後脛骨筋(tibialis posterior)
  内がえし底屈位でもっとも分りやすい。
  内果のすぐ後方を通っている。  
  痙性、脊髄髄膜腫、ポリオなどでは足関節周囲筋が筋力低下をきたすが、
  比較的後脛骨筋筋力が残っているので結果的に足部に内がえし底屈位の
  変形を生じる。
長趾屈筋腱(flexor digitorum longus tendon)
  後脛骨筋腱の後
患者に検者の抵抗に抗して趾を屈曲させると触知可能。
長母趾屈筋腱(flexor hallucis longus tendon)
  足関節後面にある。
  脛骨後面に沿って走り、距骨後面の距骨内・外側結節間の溝を通り、
  側関節を横切っている。触診不可。
後脛骨動脈(posterior tibial artery)      47
  長趾屈筋腱と長母趾屈筋腱の間にある。
脛骨神経(tibial nerve)
  後脛骨動脈のすぐ後外側を通り、動脈と伴走し足部へいく。
  この神経血管束は足根管(tasal tunnel)を形成する靱帯によって脛骨に
  固定される。この靱帯が狭すぎたり硬すぎると足部に神経血管系の問題を
  起こす。(足根管症侯群)
長伏在静脈(long saphenous vein)
  内果のすぐ前面。しばしば静脈瘤を生じる。
領域4 両側果部間の背面
内側より1)前脛骨筋腱 2)長母趾伸筋腱 3)足背動脈 4)長趾伸筋腱
前脛骨筋(tibialis anterior tendon)
  もっとも強い足部の内がえし背屈筋
  この筋が働かないだけで下垂足を呈する。
  内がえし背屈させると触診しやすい。
  遠位では第1中足骨基部の内側と第1楔状骨に付着し、近位では   脛骨骨幹部外側で筋腹となっている。
長母趾伸筋腱(extensor hallucis longus tendon)
  前脛骨筋腱のすぐ外側にあり母趾を伸展させると分りやすい。
     母趾の遠位趾節骨基部に付着している。
長趾伸筋腱(extensor digitorum longus tendon)
  長母趾伸筋腱の外側。遠位で4つに分れU〜X趾の遠位趾節骨基部に付着。   足趾を伸展させると触れやすい。
足背動脈(dorsal pedal artery)
  長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱の間にあるが、12〜15%の人に欠如する。
前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋は脛骨と腓骨の間で下腿前外側の
anterior compartmentに起始をもつ。このanterior compartmentは硬い繊維性 および骨性の領域であり、前面は強い筋膜、後面は脛骨、腓骨、骨間靱帯により 構成されており、ほとんど伸張性のないものである。そのため脛骨骨折、 筋肉内血腫もしくはanterior compartment内に腫脹をきたす他の病変によって 筋、神経、血管の壊死をきたし、下垂足や足部変形をきたす。
(anterior compartment sx;時に行軍の後に生じる)
領域5 外果                  48
外側側副靱帯;前から前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯
前距腓靱帯(anterior talofibular ligament)
  足関節内がえし底屈位の捻挫を受傷した時もっとも損傷しやすい靱帯。
踵腓靱帯(calcaneofibular ligament)
  前距腓靱帯が断裂せずにこの靱帯が断裂することはない。
  重度の足関節捻挫において前距腓靱帯、踵腓靱帯の2つが断裂した場合
  足関節の不安定性を生じる。
後距腓靱帯(posterior talofibular ligament)
  他の2つの靱帯よりも強く、腓骨が前方にずれることを予防している。
  脱臼といった非常に重度の外傷以外は断裂はない。
長短腓骨筋腱(peroneus longus and brevis tendon)
  外果のすぐ後を通る。
  短腓骨筋腱は外果の後の骨の溝を通り、長腓骨筋腱は短腓骨筋腱のすぐ後方   を走っている。
  腓骨筋は主に足関節の外がえし筋であるが、底屈時に補助筋として作用。   触診には外がえし底屈位にもっていく。
  時に外果の部位で腱を固定している支帯(筋膜の帯)が不完全であり、   外果の後方に移動していることがある。(弾発腱症侯群snapping tendon sx)
  腓骨筋腱が踵骨を通過する際に腓骨筋結節によって長腓骨筋腱と短腓骨筋腱
  に分けられる。腓骨筋腱は支帯により結節に固定され滑膜につつまれており 
  腱鞘炎になりやすい。又、狭小化した 腱鞘を通ることで狭窄性腱鞘炎になる。
  短腓骨筋腱の停止部である茎状突起を触診すると足関節捻挫に関係して
  茎状突起端の骨折があれば圧痛があり茎状突起部の滑液包炎でも圧痛がある。
領域6 足根洞
 外果のすぐ前方にある。
 触診による足根洞の奥の圧痛は距骨下に病変があり一般には骨折、
 慢性関節リュウマチ、痙性足でみられる。  短趾伸筋(m.extensor digitorum brebis)
領域7 第5中足骨骨頭
 第5中足骨骨頭外側には炎症を生じやすい滑液包がある。
 仕立屋のバニオン(tailor's bunion)
領域8 踵骨              49
 腓腹筋とひらめ筋は共通腱となり踵骨に停止。
 腱が断裂した場合、欠損部を触知できる。その部位に疼痛と圧痛があり  力強い底屈が不能。
 アキレス腱断裂テスト(Thompson's squeeze test)
   患者を腹臥位にして下腿の筋腹をつかみ、足の底屈が生じないと    アキレス腱の断裂を示唆する。
アキレス腱腱鞘;診察によって圧痛があり、動きにともなう轢音があることあり。
踵骨後部の滑液包(retrocalcaneal bursa);アキレス腱前面と踵の後上角の間。
踵骨の滑液包(calcaneal bursa);アキレス腱停止部と皮膚の間。
  これら2つの滑液包は損傷もしくは過度の圧迫によって炎症をおこす。
     踵骨滑液包は靴の大きさがあわなかったり高い踵の靴で炎症を生じやすい。
足底腱膜(plantar aponeurosis)
  踵骨内側結節より始り足底に広がり前足部の中足骨骨頭近くの靱帯に停止。
  足部の軟部組織をおおい、内側縦アーチを支える弦のように働いている。
  圧痛は腱膜の炎症を示唆する。
  触知できる硬結はデユピユイトラン(Dupuytren)拘縮を示唆する。
  足底疣(plantar warts);魚の目、圧迫するよりつまんだほうが痛い。
  モートン神経腫(Morton's neuroma);有痛性の神経腫で第3、4中足骨骨頭間                     に生じる。
領域10 趾
 かぎ状爪(claw toe)
  MPjointの過伸展、PIP,DIPjointの屈曲。
  一般に全趾におこり、しばしば凹足を合併する。
  胼胝形成が趾背側に生ずる。又過度の荷重の為中足骨骨頭の足底面、趾尖部   (特に第2趾)に胼胝形成を認める。
槌状趾(hammer toe)
  MP,DIPjointの過伸展、PIPjointの屈曲。
  多くの例では1趾のみ(普通は第2趾)におこり、PIPjoint背面に胼胝形成。
疣眼(soft corn)
  軟疣眼(soft corn)は趾間部(特に第4、5趾間部)にできる。
  硬疣眼(hard corn)は屈曲した趾節間関節の背側、特に第5趾のように
  過度の圧迫がかかるところによくできる。直接圧迫すると疼痛がある。
巻き爪(陷入爪)(ingrown toenail)
  母趾の内側外側におきる。
  爪の先に周囲の皮膚にくいこみ、腫脹し隣接の軟部組織に感染をおこす。
▲関節の安定性テスト                     50
 過度の内がえし外力は最も一般的な足関節損傷の原因となる。
1)内果が外果よりも短いので外がえし力よりも内がえし力が加わりやすい。
2)関節外側の厚い靱帯は分れているので、内側の三角靱帯ほどつよくない。
 前距腓靱帯は足関節捻挫により最も損傷しやすい。足関節底屈・内がえし位
にて疼痛が増強するようなら前距腓靱帯の損傷断裂がある。
前距腓靱帯のみが距骨の前方亜脱臼を防止する構造であるため、断裂がおきれば
距骨は脛骨から前方へ脱臼してくる。前方引出し試験(anterior draw test)陽性
 前距腓靱帯と踵腓靱帯の両方の断裂によって足関節の大きな側方への動揺性を
引起こす。果間関節窩(ankle morkise)で距骨に動揺性があれば、前距腓靱帯と
踵腓靱帯が損傷されており、結果として足関節の側方への動揺性が現れる。
 後距腓靱帯は他の外側の靱帯の損傷に合併してのみ断裂する。脱臼のような
足関節の広範な外傷の時、後距腓靱帯は損傷される。
 内側の三角靱帯の安定性のテストは、患者の脛骨と踵骨を固定しておき
外がえしさせる。もし三角靱帯が断裂していれば果間関節窩が大きく開いた感じ
がする。
X線ストレス撮影にて両側を比較する。
▲関節可動域
1)足関節の運動;背屈、底屈
2)距骨下関節の運動;内がえし、外がえし
3)中足骨部の運動;前足部内転、前足部外転
4)趾の運動;屈曲、伸展
▲自動運動可動域
  つま先歩き(底屈)、踵歩き(背屈)、
  足の外側縁歩き(内がえし)、内側縁歩き(外がえし)
   ▲他動運動可動域
  足関節背屈20゜ 足関節底屈50゜(膝関節直角位にて)
  果間部内径の狭小化により背屈制限が生じる。距骨のドーム前方の広がって
  いる部分は果間関節窩におさまらなくなる。腫脹が足関節可動域を制限する。
 足関節可動域は関節固定により制限される。関節包の拘縮で可動域が制限される。
  距骨下関節;内がえし5゜ 外がえし5゜
           前足部;内転20゜ 外転10゜(距舟関節、踵立方関節;ショパール関節)
  第1中足趾節関節;屈曲45゜ 伸展70〜90゜            51
  強直性屈趾症では趾離地が母趾以外の4趾で行なわれる。
  靴のしわが斜めに走るのは強直性屈趾症を示唆する。
▲神経学的検査
<筋力テスト>
背屈筋群
1)前脛骨筋;深腓骨神経L4(L5)
2)長母趾伸筋;深腓骨神経L5
3)長趾伸筋;深腓骨神経L5
足部の主動背屈筋群はanterior tibial compartmentに沿って走行しており、共通 の神経支配(深腓骨神経)をうけている。深腓骨神経の病変により下垂足が生じる。
1)前脛骨筋(tibialis ant)    深腓骨神経L4(L5)
  内がえし位で踵歩行させる。(機能テスト)
  下腿を保持し患者に背屈内がえしをさせる。検者は患者の足部に底屈外がえし   の方向に力を加える。
2)長母趾伸筋(ext hallucis longus)   深腓骨神経L5
  踵歩きにて機能検査。
  患者に母趾を背屈させ検者の母指で底屈させるように抵抗を加える。
  検者の母指が趾節間関節にかかっていれば短母趾伸筋をも検査することになる。
  純粋に長母趾伸筋の検査をするには、趾節間関節よりも遠位部に抵抗をかける。
3)長趾伸筋(ext digitorum longus)   深腓骨神経L5
  踵歩きさせる。(腱がうきあがって見える) 
底屈筋群
1)長短腓骨筋;浅腓骨神経S1
2)腓腹筋、ひらめ筋;脛骨神経S1S2
3)長母趾屈筋;脛骨神経L5
4)長趾屈筋;脛骨神経L5
5)後脛骨筋;脛骨神経L5
1)長・短腓骨筋(peroneus longus and brevis)
  2つの筋の腱は外果後方で2つの腱となる。両筋は足部足関節の外がえし筋
  なので患者に足部内側縁をつけて歩くように指示すると、腓骨筋腱は外果を
  回ったところではっきりしどちらも腓骨筋結節を通り(短腓骨筋が上、
  長腓骨筋が下)それぞれの停止部まで走行する。
  筋力テスト;患者に足を底屈、外がえし位にさせ抵抗を加える。
2)腓腹筋、ひらめ筋(gastrocnemius,soleus)            52
  つま先歩行をさせる。次に片脚でつま先立ちさせ、跳躍させる。
  この場合下腿三頭筋に体重の2倍半の力がかる。患者が扁平足様に着地したり   跳躍できなかったりしたら下腿三頭筋の筋力低下がある。
3)長母趾屈筋(flex hallucis longus)
  アキレス腱内側を走行。患者の歩行を観察。
  趾離地が円滑に行なわれるように働く。
4)長趾屈筋(flex digitorium longus)
  長母趾屈筋腱のすぐ内側を走行。
5)後脛骨筋(tibialis posterior)
  内果のすぐ後方。この腱は舟状骨結節に付着。
  足部の底屈、内がえし位にて腱ははっきりうきあがってくる。
▲知覚テスト
  L4;下腿内側
  L5;下腿外側、足背部
  S1;足部外側
  伏在神経(saphenous nerve);足部内側
  腓骨神経(peroneal nerve);足部背側
  腓腹神経(sural nerve);足部外側
▲反射テスト
  アキレス腱反射(Akires tendon reflex)
   腓腹筋、ひらめ筋を介しての深部腱反射。S1
▲特殊な検査
扁平足のテスト(矯正の可否の鑑別)
  矯正可能な扁平足では立地以外の肢位では明らかな縦アーチが現れる。
  矯正不能な扁平足ではいかなる肢位でも足底は扁平である。
脛骨捻転テスト(tibial torsion test)
  小児のうちわ足(toe in)は脛骨の過度の内捻によることがある。
  脛骨の近位端と遠位端にある骨の定点を定める。
  (膝関節下の脛骨粗面と足関節の両果) 
  正常では両果を結ぶ線は脛骨粗面から足関節に引いた線に直交する垂線に対し   15゜外旋している。もし脛骨の内捻があれば、この垂線に両果を結ぶ線が   近づいて来る。
内転足矯正テスト(forefoot adduction correction test)   53
  前足部内転は小児によく見られる。
  足部が徒手矯正で中間位を越えて外転すれば矯正の必要はない。
  中間位まで矯正されない内転足はギプスによる矯正が必要。
足関節背屈テスト(ankle dorsiflexion test)
  腓腹筋かひらめ筋のどちらによって可動域制限をきたしているかを調べる。
  (膝関節伸展位で足関節背屈不能の場合)
  膝関節屈曲位で足関節背屈可能であれば腓腹筋が原因。
  膝関節屈曲位でも足関節背屈不能であればひらめ筋が原因。
  (腓腹筋は2関節筋、ひらめ筋は単関節筋)
ホーマンズ徴候(Homans sign)
  深部静脈の血栓性静脈炎(thrombophlebitis)の有無を検査。
  下肢を伸展させ強制的に足関節を背屈させる。
  下腿三頭筋に痛みが出ればホーマンズ徴候陽性。
  同部の筋腹深部への触診により圧痛が認められれば深部静脈の血栓性静脈炎   がより明瞭になる。

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腰椎 

▲視診
脂肪腫(lipoma);腰部にあると二分脊椎(棘突起部での椎弓の癒合不全)の
        存在を示唆し、骨欠損部を通って脂肪腫が亜鈴状に馬尾に
        及んでいることもある。
有毛性斑点(hairy patches);脊髄正中離開症のような骨欠損があることあり。
脂肪腫に伴う有毛性斑点(faun's beard);骨疾患の存在を強く示唆。
神経線維腫;皮膚の腫瘤や有茎腫瘤、二次的に皮膚斑(ミルクコーヒー斑)を伴う。
      脂肪腫に似ている。
      ミルクコーヒー班(cafe-au-leit spots);Recklinghausen病
母斑(birth mark)
側彎(sciatic scoliosis)
前彎(lordosis)
亀背変形(gibbus deformity)
▲骨の触診
L4L5椎間は両側腸骨稜の頂点と同じレベルにある。
<後面>
 棘突起(spinous process)、仙椎(spine of sacrum)、尾骨(coccyx)
 腸骨稜(iliac crest)、腸骨結節(iliac tubercle)
 上後腸骨棘(post sup iliac spine)
 大転子(greater trochanter)
 坐骨結節(ischal tuberosity)
 S2棘突起は両側上後腸骨棘を結ぶ線の中点にある。
 仙骨三角(sacral triangle)での小突起間の陷凹や仙椎腰椎の棘突起が欠如して  いることは二分脊椎を示唆する。
 目で見て又は触診でわかる棘突起の階段状変形(step-off)は  脊椎分離症(spondylolysis)による脊椎すべり症(spondylolisthesis)を意味する。
<前面>
患者を仰臥位にして膝を屈曲させる。
臍はL3L4椎間に位置し、この高さで大動脈が分岐して総腸骨動脈になる。
仙骨岬角(sacral promontory)
  脊椎前面で最も突出している部位。
  臍のすぐ下に指をおき患者をリラックスさせ白線(linea alba)上から、
  ゆっくりと次第に力を加えながら腹部をおしてゆくと
 L5S1椎体に触れることができる。
軟部組織の触診                 55
領域1 中央縫線
棘上棘間靱帯(supraspinous ligament,interspinous ligament)
傍脊柱筋(paraspinal muscle);3層(棘筋、最長筋、腸肋筋)
領域2 腸骨稜
  殿筋群は腸骨稜のすぐ下で腸骨の広範な部分に起始を持つ。
  線維脂肪性の結節が無いか調べる。
  殿皮神経の神経腫も触診の時圧痛がある。
領域3 上後腸骨棘
  仙骨三角は左右の上後腸骨棘と殿裂の頂点で形成される。この領域は
  上後腸骨棘からの靱帯の断裂、腰部の捻挫による痛みがよくおこる部位。
  上後腸骨棘は仙結節靱帯の付着部でこの靱帯は仙棘靱帯とともに仙骨と
  坐骨を結合し仙腸関節を支持している。
領域4 坐骨部
坐骨神経(sciatic nerve)は人体で一番長い神経で大腿後面中央部を垂直に通り ハムストリング筋に分枝を出し最終的には2つに分れ脛骨、腓骨領域を支配する。
梨状筋の下の大坐骨孔を通って骨盤を出、大転子と坐骨結節の中間を通る。
坐骨神経の触診には股関節を屈曲させる。
神経根に影響を与えるような椎間板ヘルニアや腔占拠病変(space-occupying lesion) があると、坐骨神経の触診の際、圧痛がある。
領域5 前腹壁および鼠径部
前腹壁の筋
  前腹筋筋力低下により腰椎前彎が増強。
鼠径部(inguinal area)
  腸腰筋に膿瘍がないか、調べる。
  膿瘍があると流出溝(draining sinus)として、腫脹として、あるいは   点状の膿瘍として触れる。
  腸腰筋の起始部はT12〜L5椎体および椎間板の前面にあるので、この膿瘍の   痛みは股関節を自動屈曲すると増強する。
  鼠径部の痛みは一般に股関節の病変を示唆する。
▲運動可動域
屈曲   前縦靱帯は弛緩し、棘上靱帯、棘間靱帯、黄色靱帯、後縦靱帯
     は引伸される。腰椎は屈曲によって後彎を生じることはない。
伸展   前縦靱帯は引伸され、後縦靱帯は弛緩する。
     伸展は脊柱の内在筋により生じる。
     脊椎すべり症があれば伸展によって疼痛が増強する。
側屈   腰椎では側屈は純粋な動きではない。回旋が伴う。
     側屈は周囲の靱帯によって制限されている。
     自動他動側屈可動域に相違がある場合は注意を要する。
回旋   一方の手を腸骨稜にあてもう一方の手を対側の肩におく。
▲神経学的検査
神経学的レベル T12 L1 L2 L3
  固有の反射が無いため、筋の状態と知覚テストによってのみ評価させる。
  <筋力テスト>
   腸腰筋; T12 L1 L2 L3
       股関節の主要屈筋
  <知覚テスト>
神経学的レベル L2 L3 L4
  膝蓋腱反射はL2L3L4支配であるが基本的にはL4の反射として評価される。
  <筋力テスト>
   大腿四頭筋;L2L3L4 大腿神経
   股関節内転筋群;L2L3L4 閉鎖神経
神経学的レベル L4
  <筋力テスト> 前脛骨筋;L4
  <反射テスト> 膝蓋腱反射;L2L3L4 主としてL4
     <知覚テスト>
神経学的レベル L5            
  <筋力テスト>
   長母趾伸筋;L5 深腓骨神経
   中殿筋;L5 上殿神経
   長短趾伸筋;L5 深腓骨神経
  <反射テスト>
   特に無い(後脛骨筋腱反射はL5だが出現しにくい)
  <知覚テスト>
神経学的レベル S1
  <筋力テスト>
   長短腓骨筋;S1 浅腓骨神経
   腓腹筋;S1S2 脛骨神経
   大殿筋;S1  下殿神経
  <反射テスト>
   アキレス腱反射;S1
  <知覚テスト>
神経学的レベル S2S3S4
  膀胱支配の主要神経。又足の内在筋も支配する。
  深部反射はない。
  <知覚テスト>
   肛門周囲の皮膚知覚帯。一番外側の円はS2、中間の円はS3、
   一番内側の円はS4
▲下肢の神経学
 椎間神経根    反射      筋      知覚
L3ーL4 L4  膝蓋腱反射   前脛骨筋   下腿内側、足部内側
L4ーL5 L5          長母趾伸筋  下腿外側、足背
L5ーS1 S1  アキレス腱反射 長短腓骨筋  足部外側
表在反射                          58
  上位運動ニューロン反射で中枢神経系を介して得られる(大脳皮質)
  一方深部腱反射は下位運動ニューロン反射で脊髄前角細胞を介する。
  <腹皮反射 superficial abdominal reflex>
    ハンマーの先端を使って、腹部を四分した円周上をそれぞれ刺激する。
    臍が刺激点の方に動く可動か観察する。
    腹皮反射の欠如は上位ニューロンの病変を示唆する。
    腹筋は上部はT7〜T10、下部はT10〜L1の文節的支配を受ける。
  <挙睾筋反射cremasteric reflex>
    挙睾筋(T12)
    両側で欠如している場合は上位運動ニューロンの病変
    片側だけ欠如している場合はL1L2間レベルでの
    下位運動ニューロンの障害。
  <肛門反射anal reflex>
    外肛門括約筋(S2S3S4)
病的反射
  病的反射出現は上位運動ニューロン障害を示唆する。
  <バビンスキー反射 Babinski reflex>
    陰性;足趾が全く動かないか、一様に屈曲する。
    陽性;他の趾が底屈し開扇するのに母趾だけは伸展する。
  <オッペンハイム反射 Oppenheim reflex>
    脛骨稜に沿って検者の手指の爪を走らせる。
    陽性所見はバビンスキー反射と同様。
▲特殊な検査
脊髄・坐骨神経伸展テスト
<下肢伸展挙上テスト strait leg raising test>
  正常では約80゜まで可能。
  ハムストリング筋の痛みは大腿後面のみだが、坐骨神経の痛みは神経走行   に沿って下腿まで広がる。
  患者は腰痛を訴えることもあるし、時には反対側下肢にも痛みを訴える。   (交叉性下肢伸展挙上テスト陽性)
  足関節を背屈し坐骨神経を進展させると坐骨神経痛が再現される。
  痛みの部位は腰椎か、又は坐骨神経の走行に沿う部位のいずれかを尋ねる。
<健側下肢挙上テスト(対側下肢挙上テスト、交叉性下肢挙上テスト)> 
  患者を仰臥位として健側下肢を挙上させる。もし対側(患側)の背部痛
  坐骨神経痛を訴えるなら、腰椎領域の椎間板ヘルニアなどの腔占拠病変
  を示唆する。
<フーバーテスト Hoover test>
  患者が下肢挙上できないと訴える時、それが詐病であるかの判定に使う。
  患者に挙上するように指示された下肢と反対側の下肢に下方の圧力がなければ   患者は一側の下肢を挙上しようと努力していない。
<ケルニッヒ(Kernig test)>
  脊髄を伸展し疼痛を再現させる。頸椎、時には腰、下肢に疼痛出現。
  髄膜刺激症状、神経根の病変、硬膜刺激症状
脊髄内圧上昇テスト
<ミルグラム Milgram テスト>
  患者仰臥位しさせ、下肢を進展したまま約5p挙上させる。
  この肢位で腸腰筋、前腹壁筋が緊張し髄内圧が上昇する。
  この肢位を30秒間保持し疼痛が無ければ硬膜内病変は除外される。
  この肢位を保持できなければ硬膜内外の病変を示唆する。
<ナフツイガー(Naffziger)テスト>
  髄液圧を上げることにより脊髄腔内圧を上昇させるテスト。
  患者の頸静脈を約10秒間、患者の顔面が紅潮するまで圧迫する。
  次に患者に咳をさせる。その時に疼痛が生じるならば髄膜に圧がかかる   ような病変がある。
<バルサルバ Valsalva手技>
  排便する時のようにきばらせる。背部痛や下肢への放散痛があれば陽性。
▲仙腸関節不安定性テスト
<骨盤不安定性テストpelvic rock test>
  仙腸関節の動揺性をみる。
<ゲンスレンGaenslen徴候>
<パトリックPatrickテスト、ファーベルFabereテスト>
  股関節屈曲、外転、外旋肢位
  この肢位での鼠径部の痛みは股関節の病変を示唆する。
  可動域を広げるように仙腸関節に力を加え、痛みが増強するようなら   仙腸関節に病変がある。
神経学的髄節支配テスト
<ビーバーBeevorテスト>
  腹直筋は髄節的にT5〜T12の胸神経後枝により支配される。
  臍は正常では動かない。この肢位での臍の動きは腹直筋と傍脊柱筋の筋力低下   を示唆する。(ビーバー徴候陽性)
  ポリオや脊髄髄膜腫の患者で陽性となる。
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